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角を狩るモノ  作者: Samail
二章 刀の名

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十七話 傷の男

墓地。


風が抜ける。

石が並んでいる。


「遅ぇな、角狩り。」


弥助坊。

軽口でソウ話しかける。


「まだ刻限じゃないけど。」


「分かってるよ。」


笑っている。


顎で促す弥助坊。


「探してたやつだ。」


少しだけ、間。


「東だ。」


ソウが視線を向ける。


「東の山の中腹。今はもう空の武家の屋敷がある。」


ソウは黙って聞いている。


「そこにならず者どもが住み着いてる。」


それだけ言って、口の端を上げる。


「頭だ。」


弥助坊は自分の指で左頬をなぞる。


「左頬に、でけぇ傷がある。」


静かになる。

温度が下がった。

弥助坊はそう感じた。


「……ありがとう。」


ソウが踵を返す。


「行くのか?」


「どのみちロクでもない連中だろ?」


弥助坊が肩をすくめる。


「かなりの大所帯だ。あんた一人なら、危ないぜ。」


「そいつらは双角より強いのか?」


圧。

それだけ言って、ソウは歩き出した。


「余計なお節介だったか。」


弥助坊は剃っている頭に手を置いた。

少し冷や汗をかいていた。


道の途中。


「……おい、ソウ。おい!ソウって!」


ムジナの声。


「仇が近いからって入り過ぎだ。弥助坊のヤツ完全にビビってたぜ?」


「……ごめん、周りが見えなくなってた。」


「……頼むぜ、まったく。」


そこに人影。


「……ソウ。」


兵介だった。

ソウは足を止める。


「聞いたぞ。武家屋敷にいくんだろ?」


少し目を細めるソウ。


「うん。」


それだけ言う。


「……俺も連れていってはくれないか。」


「……何故?」


少しだけ、間。


「あいつら人さらいまでしやがる。知り合いのガキまでさらいやがった。」


兵介が歯を鳴らす。


「……、遅かったら置いてくよ?」


小さく笑う。


「望む、ところだ。」


それで決まる。


夜の山を歩く。

道は細い。

足場も悪い。

息を切らす兵介。

変わらぬ顔のソウ。


人の通った跡がある。

新しい。


「……多いな。」


兵介が言う。


「そうだね。」


さらに進む。

やがて、見える。


屋敷。


大きい。

崩れている。

だが。

整っている。


「……妙だな。」


兵介が呟く。


「手入れが行き届きすぎてる。」


門は半分落ちている。

中は見えない。


「……行くか。」


「そうだね。」


それだけ言う。


足を踏み入れる。


中は据えた匂いがした。

嗅ぎ慣れた匂い。


気配がある。

多い。


「……。」


一歩、進む。


「……ソウ。」


兵介が小さく呼ぶ。


「血の臭いがする。」


「……あぁ。」


それだけ。

奥を見る。

暗い。

深い。


「……行くよ。」


そう言って、進む。

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