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角を狩るモノ  作者: Samail
二章 刀の名

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十五話 雨の音

斬る。


速く。

迷わない。


一角の首が落ちる。

音が、遅れて来る。

静かになる。


天穿を納める。


「……終わりだな。」


足元で、声がした。


「そうだね。」


少しだけ、息を吐く。


「相変わらず見事なもんだな。」


「そうでもないよ。」


それだけ返す。

足元に目をやる。

小さな影。


狸。


あの時より、少し大きい。

こちらを見ている。


「……もう一角は敵じゃないな。」


「どうだろうね。」


しばらく見ている。


あの時の子狸が話しかけてきた時は驚いた。

思わず天穿を構えるくらいには。


「……なあ。」


少し、間。


「なんか、嫌な匂いがするな。」


狸が言う。


「そうか。」


辺りを見る。

風は、いつもと変わらない。


「夕立も来そうだ。気をつけて帰れよ。」


「うん。」


それだけ言うと、山の奥へ消える。


一人になる。

山を下りる。


帰り道の途中。


知った顔。


「……蒼司。」


良太。

足を止める。


「お帰り。」


「ああ。」


「山か。」


「うん、一角。」


「涼しい顔しやがって。」


小さく笑う。


「良太は?」


「俺はまあ、相変わらずだ。」


肩をすくめる。


「そう。子供は?」


「うるさくてかなわねえや。」


満更でもなさそうに返す良太。


家庭を持つ。


自分には縁のない行為。

友人の偉業は微笑ましい。


「お前もいい人見つけろよ。蒼司サマ?」


「うるさいよ。」


カラスの鳴き声が聞こえる。


「……そろそろ帰る。チビがうるせえからな。」


「ああ。またね。」


背を向ける。


それぞれ、別の道へ。




雨が落ちてきた。


家が見えてくる。


いつもの景色。

いつも感じない何か。

足を止める。

戸が、少し開いている。

風が入っている。


雨の音だけが残る。


一歩、近づく。


匂い。


……なんか、嫌な匂いがするな。


さっきの声が、重なる。


戸を押す。

開く。


中は暗い。

奥。

人影。

動かない。


近づく。


父上だった。

倒れている。

呼吸が浅い。

血は、多くない。

それでも。

間に合わない。

そう感じた。


「……父上。」


声が出る。

反応はない。

一歩、近づく。

目が、わずかに開く。


「……蒼司、か。」


小さな声。

それだけだった。


雨が強くなっていく。

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