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毒キノコ転生〜地下ダンジョンに閉じ込められた最弱の魔物は、チートスキルと謀略を駆使して最強最悪の魔族を目指す〜  作者: さかなかさ
一章 『毒を喰らわば命まで』

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四話 『君色に染まれ』


洞窟の床はやけに冷たい。

ことが終わった後、半ば放心状態で、俺は床に寝転がっていた。



「くそが…もうおよめにいけないよぉ…」


自重気味にそう呟く。


「ふっ…」


すると、部屋の奥、キノコたちの群れの中から、確かにそう声が聞こえた。



「ん…おい、誰か今…?」


暗がりに向かって声を放つ。



「あぁ、あぁ…まぁなんだ、気持ちはよくわかる。」



すると、また声が返ってきた。

見れば、部屋の隅で怯えて集まるキノコたちの中に、少し大きい影があった。


「助けようとも思ったが、声を出せば同じような目に遭うと思ってね。あいつのお気に入りになるのはごめんだ。」


他のキノコに比べて傘も胴も大きいそのキノコは、のそりと立ち上がるとこちらに近づいてくる。



「私の名前はルーカス。君は…カミラ、でいいか?あのコボルトが散々名前を呼ぶもんだから、耳に染み付いてしまった。」



「…もう、なんでもいい。こんな体になっちまった時点でプライドなんてあってないようなもんだ。」




ルーカスは私の近くに腰を下ろした。その体には塞がり掛けだが、筒状の穴が無数に空いている。

よく見れば、部屋の隅に固まるキノコたちにも同様のものが見られた。



この部屋で散々体を採取された挙句、慰み者にされているのだろう。




「察するに、どうやら君も、私と似た境遇のようだ。」



「私と同じ、って言うのは…」




「私はーー元人間だ。」



「……!」


思わず息を呑む。自分以外にも同じ境遇の者がいたのか。


「私はこのダンジョンで一度死に、気づけばこの姿だった……もう何年、ここにいるかもわからないが」



「それは、つまり人間がここで死ぬと魔物になるということか?」


「いや、そんな話は聞いたことがない…ダンジョン内で年間どのくらい死者が出てるか知っているか?もし生まれ変わるんなら、今頃ここの魔物のほとんどは元人間のはずだ。」


そういうものか。この洞窟に来てから、人間をまだ見ていない身としてはいまいち実感が湧かない。


そもそもこの世界に人間が実在するかも怪しくなっていたところだった。



「ずっとここであんな仕打ちを受けているのか…あいつを殺して、外に出ようと思ったことは?」



「勿論ある。だが、リーダーのアンヘルはコボルトの中でも相当強い。向こうでは手下のコボルトたちが入り口を見張っている。」



「あぁ、それはそうか…毒キノコじゃ太刀打ちできそうもない。」



「それに…あの子たちもいる。」


言うと、ルーカスは振り向いた。

部屋の隅で怯える毒キノコたちを見やる。その数は5.6体ほどだ。



「知能が低くとも、あの子達も必死に生きようとしている。痛みに怯え、アンヘルにされていることが生命への冒涜だと感じている。」


ルーカスが、再びこちらに向き直る。


「あの子達の傷を少しでも癒してあげること。それが今の私の唯一の望みなんだ。」




暗い洞窟の中に閉じ込められ、日々モノとして使われてきた元人間の、唯一の心の支え。


「……美談だな」



「……何?」


「美談だと言ったんだ。お前はこのクソしょうもない現状を、綺麗で哀しい物語にしようとしている。」


「そんなつもりは…!」


「唯一の望み?お前が冒険者時代に散々切り飛ばしたであろう、雑魚魔物の傷を癒すことが?おいおい、なんの冗談だ。」


無性に腹が立つ。プライドは捨てたなんて言ったが、自分より諦めている奴を見ると吐き気がする。

まるで、このまま、ここで生きながらえた後の、未来の自分を見ているようだった。


「本当は地上に帰って、さっきの妄言をつらつら喋って、仲間に慰めたり、褒めてもらいたくて仕方がないんだろう?」


「…………!君は………!」


思いついた言葉を口から吐き捨てる。アンヘル(クソ野郎)にぶちまけられた汚い汁ごと、全部をこいつにぶちまけたい気持ちだった。


うん、まあ完全に八つ当たりだが。

自分自身に言い聞かせるように、俺はこう吐き捨てた。


「いいか、お前が伝えるんだ。地下で死んでキノコになって、長らく犬のチンチンを慰めるだけのオ○ホになってました、キノコなのに受け側だったんです、ってな。」


ルーカスが黙り込む。ここでの暮らしがどれだけ彼の尊厳を傷つけたか、俺には計り知れない。

だが、それが言葉を止める理由にはならない。


「仲間内で居酒屋の鉄板ネタにして、馬鹿みてえに笑って、また冒険に出るんだ。全部全部、お前がやるんだよ!!」


返事はない。よほどショックだったのだろうか。


「何もしたくないんだったらそこで見ていればいい。…男の、生き様って奴をな。」


俺はそう吐き捨てた。完全に虚勢だった。だが、このまま惨めに終わるのだけは我慢ならなかった。

あるいは、啖呵を切ることでさっきまでの痴態を無かったことにしたかったのかもしれない、と心の底で思った。



・・・




「あぁ、アンヘルさまぁ……そこ、たまらないですぅ……」



「おいおい、もう馴染んできたのかよォ……最ッッ高だなァ!!!カミラぁ!!」





数日後。

そこには、在られもない声を出す俺___いや、カミラと、下卑た声をあげ荒ぶるアンヘルの姿があった。




あれからルーカスとは言葉を交わしていない。

喋っていたのが嘘だったかのように、ルーカスは沈黙を続けている。



キノコになった影響かわからないが、表情や言葉はなくとも、ルーカスの気持ちがなんとなく読み取れる。



彼から感じるのは仄かな恐怖と、混乱が混ざった感情だった。

本日はもう1本投稿予定です!

感想などお待ちしております…!


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