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毒キノコ転生〜地下ダンジョンに閉じ込められた最弱の魔物は、チートスキルと謀略を駆使して最強最悪の魔族を目指す〜  作者: さかなかさ
三章『マテーラ村防衛編』

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三十五話 『鬼弓隊』

「喋ってる暇はねーですよぉ。ここまでは敵も様子見。そろそろ、主力が動き出してもおかしくねーですぅ。」



サクラがそう忠告する。

プラムを襲った弓使いや、親玉である第三の眷属の姿は、未だ戦場には現れなかった。


(報告によれば、敵将はかなり疑り深い性格ですぅ。このオーガ達は捨て駒で、こちらの戦力の把握が目的と見るべきですぅ。)


敵将はこちらの戦力を調べ切った上で、満を辞して登場し、制圧を行うだろう。逆に言えば、戦力が把握できていないうちは不用意に動きを起こさないとも予測できる。


(私もアンヘルも、魔力を隠す術は持たない…だがそれも、逆に都合がいい…!敵の注意を惹きつけ、警戒させる。斥候役がそれを上に伝えれば、より慎重に動こうとするはず…)



(こちらの被害を最小限に抑えつつ、手の内を明かさない!当然、ここからは敵も私たちに揺さぶりをかけてくるはずですぅ。)


サクラの読みは概ね当たっていた。

セズールは先方のオーガの何人かに敵勢力の調査を任命していた。その調べ役が、セズール達が陣を取るオーガ軍の最後尾に辿り着くところであった。


「敵の主力は3名ほどと見ます。リュドガーに加え、人間の姿をしたものが2名。いずれも強いオーラをを感じました。」


「エルフの一部は魔力を隠しているだろう。まだ何人か余力が控えているかもしれん。…よし、お前ら、出番だ。」


セズールが控えている部隊に命令を下した。

オーガ達の弩弓部隊である。

その中にはプラムを追い詰めたバウマンの姿もあった。



「バウマン、お前がリーダーだ。連中の実力を確認してこいや。」


「了解です、お頭。」



そういうと、バウマンは前線の部隊の方へと移動していく。

オーガ族に弓兵は少ない。元々細かい動作がさほど得意ではないため、適性が低いのである。

だがその膂力は間違いなく、弓を極めたオーガは戦場で強力な兵器となる。

その弓部隊は僅か百名ほどでありながら、戦場の流れを破壊する"鬼弓隊"として、獣人族との戦争でも名を轟かせていた。


弓部隊が配置につく。前線ではオーガ族とエルフの歩兵が鍔迫り合いをしている。


弓部隊の狙いはその奥、防壁の上に陣を構えるエルフ達である。


「構え…撃てッ!」


オーガ達は弓を構えると、バウマンの合図で一斉に矢を放つ。

防壁の上のエルフ達に、矢の雨が襲いかかる。凄まじい勢いでエルフたちを射抜かんとする矢の群れ。


狙いこそ正確ではないものの、そのうちの一つが一人のエルフを正面から捉える。

その凄まじい速度に、もはや避けることする叶わない。と、突如そのエルフの前に一つの影が現れる。

その影は襲ってきた矢を空中で豪快に蹴り落とした。

その速度はあまりに速く、動きを見極められたものは戦場でも数名しかいない。


そのうちの一人であるバウマンは、その影に目を凝らしながら感嘆の声を漏らした。


「へぇ、なかなかやるじゃん。…こないだとは、別のニンゲンか?」


その視界の先には、ピンクの髪をたなびかせ、オーガ族の弓兵たちを睨みつける少女の姿があった。


・・・



命の危機をギリギリで救われたエルフは、青ざめた顔で少女___サクラに感謝を告げる。


「あっ…ありがとうございます…!」


「別に、持ちつ持たれつですぅ。それより、あの弓部隊の中に、強い魔力を持ってる奴、いますかぁ?」


エルフからの感謝を受け取ると、サクラはそうその弓兵に質問した。エルフの魔力感知は、サクラ達毒キノコ族のものより遥かに優れた精度を誇る。


問われた兵士は動揺をおさめながら、自分の命を狙ってきたオーガ族の弓兵たちをその視界に捉えた。


「えーっと…あ、はい!一人います!強い魔力を持つオーガ…後ろで指揮を執っています!」


「ふうん、なるほど、アレがプラムを倒した…わかったですぅ。来た矢は撃ち落としてやるですぅ。引き続き、弓に集中してくれですぅ。」


そう言い残すと、サクラは再びその場から姿を消した。頭抜けた素早さのステータスから繰り出されるサクラの動きは、常人のステータスでは目で追うことも難しい。


飛んでくる矢を次々と撃ち落とすと、合間を縫ってリュドガーの元に駆けつける。


「リュドガー、敵弓部隊の後ろ、連中を率いている輩が親玉ですぅ。ここから狙えますかぁ?」


「うむ、承知した。狙えるが、私のステータスでは致命傷を与えるのは難しい。今は飛んでくる矢を撃ち落とすことに専念していたところだ。」


サラリと途轍もない曲技を言い放ったリュドガーに内心呆れながら、サクラは思案した。


(こちらの勢力を全て見せるわけにはいかない…とはいえ、そろそろ仕掛けないと、このままでは推される一方だ。)


前線でオーガたちと衝突しているエルフの歩兵達も、弓兵の出現でやや押され気味の様子だ。今は設置された罠を駆使してなんとか対抗しているが、そろそろ手を打たないといけない。


「サクラの姉御。そろそろキングを前に出す頃合いじゃねえですかぁ?」


ふと、横からそう声をかけられる。声の元を追えば、茶色の髪の少年__アンヘルの姿があった。


「昨日第一中継地点から帰ってきたばっかりだが、元気が有り余ってるようでさぁ。早く前に出してくれって。」


アンヘルがヘラヘラとそう話しかけてくる。

だが、サクラはその話を聞き流すことはなかった。

アンヘルは特別頭が回るわけではないが、役割柄誰よりも戦闘の場に立つことが多く、実践経験が豊富だ。

こと戦に対する嗅覚においては誰よりも鋭いと言っていいだろう。


「…そうですねぇ。想定よりかなり早いですが…キングに、前線に出る様命令を。リュドガー、エルフの歩兵を数人借りても?」


「もちろんです。ダグラスのやつ、何やらキング殿と親睦を深めたらしく。共に戦えるのを楽しみにしておりました。」


その命は、すぐに本人の元へと伝わった。

防壁の後ろにある兵舎でじっと、ひたすらに気配を隠していた男は、命を受けると即座に魔力を解放させる。


「あぁ、やっとかよォ!オメーらに教わった魔力の隠蔽、ずっと腹に力入れてるみてェでよォ!息苦しいったらありゃしなかったぜェ!」


そう言い放つキングの視線の先には、数名のエルフがいた。キングと共に第一中継地点で連絡を行っていたエルフ達である。プラムが稼いだ一日の間に、キング達は第一中継地点を放棄し、集落に戻る決断を下したのだ。


エルフの一人、金髪の偉丈夫がキングの言葉に愉快そうに笑う。


「そう言うな。短気のお前にしてはよく隠していた。準備しろ、すぐに出るぞ。」


「うっせーぞダグラス!あとお前が指揮すんな!」


キングとエルフ達は戦闘の支度を整えると、防壁に備えられた門を潜り、前線へと向かうのだった。


ブックマーク・評価ptなど大変励みになっております…!いつも応援ありがとうございます!

また大変申し訳ないのですが、ストックの関係で本日より隔日での更新となります…

次回更新は7月14日(火)となります!

よろしくお願いいたします。

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