↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
毒キノコ転生〜地下ダンジョンに閉じ込められた最弱の魔物は、チートスキルと謀略を駆使して最強最悪の魔族を目指す〜  作者: さかなかさ
三章『マテーラ村防衛編』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/41

三十一話 『夜を待つ 前編』

オーガ族の砦からリュドガーの集落へと続く道。

その間には、周囲を高い山岳に囲まれた狭路がある。


第三の眷属セズール率いるオーガ軍は、丁度その道に差し掛かろうとしていた。


「…面白くねぇな。」


狭路を進む列の中央、前後を配下のオーガ族で固めながら進むセズールは、ふとそう溢した。


(この地形。地の利を生かすには絶好だ。集落なんかよりよほど有利に戦える。…俺ならここで仕掛ける。)



そう思案すると、セズールは配下のオーガの一人を呼び寄せる。


「斥候のゴブリン共に山上を探らせとけ。敵がいねえか分かるまで進軍は一旦中止だ。」


「はっ!」


命を受けたオーガが伝令に走る。

勇んで歩みを進めていたオーガ達は、その指令に首を傾げた。


「折角勢いづいてんのに、こんなところで足踏みかよ!」


「お頭はたかがエルフ共に何をビビってやがるんだ?」


元々気性の荒いオーガ達は、渋々ながらもその命令に応じて歩みを止める。文句を言いながらも、本気で頭領に刃向かおうというものはいない。知能も武力も、到底敵わないことは感覚で理解していた。


結局、ゴブリン達がエルフを発見することは無かった。

だがその代わりに、数件奇妙な報告が届いた。


ゴブリン達が巨大な魔物を見たと言うのだ。

聞けば、葉の擦れるような音が聞こえ、その場に赴くと、そこには誰もいない。ふと森の奥を見れば、不気味な姿の化け物が聳え立っている。


全身は黒く、形は不定形で、体にはいくつもの目玉が覗いているという。


慌てて仲間の方を振り返り、その姿を伝えようとすると、化け物は忽然と姿を消している。


そうした奇妙な報告が何件もゴブリン達から寄せられていた。その結果ゴブリン達は怯え、周辺の探索は想定以上の時間がかかっていた。



「この辺にそんな魔物はいねえ。十中八九、幻術系のスキルだ。仕掛けてきやがったな。」



だが妙だ、とセズールは独りごちた。

幻覚系のスキルがあるならば、それをわざわざ見破られるような真似は避けるべきだ。

セズールならば、ギリギリまで敵を引きつけてから幻覚で混乱を誘い、その隙に一斉攻撃を仕掛けるだろう。


(ゴブリン共をビビらせて何がしたい?そんなもの精々時間稼ぎ程度にしかならねぇ…)


「まさかリュドガーの野郎、尻尾巻いて逃げようってんじゃねえだろうな…?」


その可能性は低いだろうな、とセズールは思い直した。

深層の環境はあまりに厳しい。

下手なところに逃げても、強大な魔物に出会し全滅するのがオチだ。


セズールの脳裏にリュドガーの顔が映る。

矮小なエルフ族の癖に、その顔つきは何故か堂々としていて、とにかく癪に障る輩だった。



「おい、全軍に伝えろ。恐らく敵はこの山中にいる。だがどうせ大した数じゃねぇ。恐れるものはねぇ、進軍だ。」


ともかく、敵の種は割れた。ここから幻術で多少混乱に陥るだろうが、そうは言ってもその数には限りがある。多勢に無勢と判断し、セズールは無理やり進軍することを決めたのだった。


・・・


「プラムさん!連中動きだしました!」


「了解。うーん、思ったより早かったなあ。」


森の中に潜伏していたプラムたち一向は、オーガ族の進軍の気配を察知していた。


(虚仮威しも大した効果は無し、っと。こっからどんだけ長引かせられるか。)


「全員準備して!目標は、夜の帳が下りるまで、連中をここに足止めすること!」


そうして、プラム率いるエルフ達の奇襲部隊は、作戦を決行することになった。その数、僅か五十余名。


オーガ族一万の軍勢に対して、セズールの想定を越す少人数の部隊は、しかし確固たる意志を持って作戦に臨んだ。


作戦参加に手を挙げたのは、家族を失い、オーガ達への復讐に燃えるエルフ達だった。


「ウチの魔力でギリギリまで透明を維持するから。合図したら、一斉掃射でよろしく。」


そう指示すると、プラムはスキルによってエルフ達に透明化を施す。


エルフ達はオーガ軍を囲むように、それぞれの配置についた。

周囲を警戒しながらも歩みを止めないオーガ達。その隊列を見下せる位置まで音もなく忍び寄ると、プラムはエルフ達全員の透明化を一斉に解除した。


「撃てッ!!」


それと同時、山中には大勢のエルフ達が姿を現す。

そこには数百人のエルフの姿があった。

数倍ほどまで、プラムはエルフ達の分身を作成したのだ。

プラムのスキルによって突如として現れたエルフの軍勢に、オーガ達はたちまち混乱に陥った。


「て、て、敵襲だ!!!!何百人もいやがる!」


「お、落ち着け!!こりゃ敵の幻覚だ!!」


(種は割れてるか…でも、意味はある!)



プラムの「幻惑胞子」には2つの能力がある。


一つは、胞子を元に実態の無い分身を生み出す能力。


もう一つは、自身が漂わせた胞子を取り込んだ者に催眠をかけ、幻覚を見せるスキルだ。


透明化は後者の能力を使用したモノで、実際にエルフ達が透明になっているわけでは無い。


プラムは狭路にはいたるところに胞子を撒き散らしていた。結果、その催眠はオーガ族のほとんど全員に及んでいる。


慌てるオーガ達に降り注ぐ矢の雨。生活に狩りが根付いているエルフ族の弓は、戦場でも重宝される実力を持つ。


彼らの弓は正確にオーガ達を射抜き、またオーガ達の反撃は幻術によって阻まれる。そして、プラムの仕掛けはそれだけではなかった。


「お、おい‥なんだよこの音!」


「太鼓だ…戦太鼓だ!くそ、敵は一体何人いやがる!」


開戦と同時に、山中には激しい太鼓の音が鳴り響いていた。

エルフ族の数名が、戦太鼓を渾身の力で打ち鳴らしているのだ。

谷なりになった地形にその音が響き渡り、実音以上に反響してオーガ達の元へと届く。


視覚と聴覚で圧を感じたオーガ達は最早、目の前の数十のエルフ達を何万もの軍勢に錯覚していた。



「敵は数万の大軍だ!龍人族や獣人族の姿もあるぞ!」


「敵の大将は獣人族の親玉、"黒豹"ドラフだぞー!」


すると混乱の最中、どこからともなくそんな声が上がる。



「おっおい聞いたかよ!ドラフが来たらしいぞ!」


「騙されんなバカ!敵の嘘に決まってる!」


流言の元は、当然エルフ達である。オーガに扮して発した、冷静になればあり得ないような戯言。

だがそんな言葉であっても、混乱を起こした軍勢の中では大いに効果を発揮していた。


こうして、山中の狭路にてオーガ族の軍勢は、僅か五十名の部隊の手によって、一時その足を止めることとなるのであった。



・・・


「おっ、お頭!前方に敵襲が…!」



「あぁ、待て待て。想定通りだっつーの。やっと尻尾を出しやがったな。」


報告を受けたセズールが動揺することは無かった。

後ろに控える配下の一人に目を向けると、冷静に指示を下した。


「バウマン、俺と一緒に来い。…幻術使いを仕留めに行くぞ。」


「承知。」


バウマンと呼ばれたオーガは、セズールの後を追う。


___その背には、人の背丈にも匹敵する巨大な弓が携えられていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。