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毒キノコ転生〜地下ダンジョンに閉じ込められた最弱の魔物は、チートスキルと謀略を駆使して最強最悪の魔族を目指す〜  作者: さかなかさ
三章『マテーラ村防衛編』

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二十六話 『火蓋』



「おい!誰もいねぇのかぁ!?」


閑静な集落に、野太い声が響き渡る。


集落の通りには、背が異様に高く、筋骨隆々な、さながら鬼のような魔物達が押し寄せていた。



「俺たちオーガ族にビビっちまったかぁ!?おい、出てこいよリュドガーさんよぉ!」


特徴的な額のツノを振りかざすように、エルフ族の集落を我が物顔で歩く彼らはオーガ族の末端構成員だ。


さりとてその実力はその辺の魔物なら相手にならないほどである。彼らの目的は、行ったきり帰ってこない仲間達の安否確認だ。


人口三百のエルフ族に対し、オーガ族の数は僅か三十名ほど。しかしステータスの差から考えれば、そこには十分過ぎるほどの戦力差があった。

エルフ族に比べ、オーガ族のステータスは近接戦闘において優位を誇るのだ。



通りを歩くオーガ達に対し、真正面から近づく1人の男の影があった。


「…我が村で、そう声を荒げないでくれるか。貴殿らには話すことはない。」



金髪の精悍なエルフがオーガ達にそう語りかける。



「お一人かあ、リュドガーさんよ…?この間、ここに来た俺らの仲間をどこにやった?」



そのエルフ_リュドガーのただならぬ気迫に押され、オーガ達の威勢が削がれる。するとオーガ族のリーダーがリュドガーにそう問いかけた。


リュドガーは、その問いに特に答えるでもなく、ただ手に持った布袋をぶん、とオーガ達に放り投げた。


それはオーガ達の僅か手前の地面に落ちる。

布の帯は緩み、中からパラパラと硬いものがこぼれ出た。オーガ族の、切り落とされた角である。それを視認した一人が悲鳴を上げた。


「こっ…これ…!あいつらの…!?」


「リュドガー!!!テメェ、覚悟はできてんだろうなぁ…!!」



一瞬にして、オーガ達のボルテージが跳ね上がる。彼らの怒号が村中響き渡り、各々が武器を構えた。



「こっちはとうにそのつもりだ__総員、構え。」



そういうや否や、通りに立ち並ぶ家屋の屋根上から、突(・)如(・)何(・)人(・)も(・)の(・)エ(・)ル(・)フ(・)が(・)現(・)れ(・)た(・)。まるで瞬間移動でもしたかのように姿を現した彼らは、皆一様にオーガ族に対して弓を構えている。



「なっ…!こいつら一体どこから…!」


「さっきまで誰も…!?」


オーガ達の間に動揺が広がる。

リュドガーはその様子を冷静に眺めながら合図を下した。


「撃て!!」


その声を合図に、矢を番えていたエルフ達が一斉に掃射を開始する。


「う、うおおっ!弓を撃ち落とせぇ!」


「ダメだ、数が多過ぎる!!」


オーガ達は突然の急襲に、未だ混乱がおさまらない状態である。すると、その中でもリーダー格の一人が、周りを落ち着かせるように声をあげた。


「お前ら落ち着け!どうせ相手は格下のエルフだ!矢なんて大したダメージになりやしねえ!」


「お、おお、そうか!確かに!」


オーガ達に安堵の声が広がる。しかしそれも束の間、弓が直撃したオーガの1匹から悲鳴の声が上がった。


「あああっ…!痛ぇ…!んだこれ、毒…!?ガッ、アアアア!?」



見れば、矢の当たった箇所の皮膚がじゅうじゅうと溶け、大量に出血をしている。


「くそッ!!こいつら矢に毒を塗ってやがるッ!!」


「お、おい、このままじゃあ全滅だぞ!!」


「ひとまず逃げろッ!!全員散開だ!!」



統制を失ったオーガ達は、散り散りに逃げ出した。

民家の脇や、来た道を慌てて逃げ帰ってゆく。すると、そのうちの1匹のオーガが、半狂乱で駆け出した。その先には、仁王立ちでその光景を睥睨していたエルフ族首長、リュドガーがいた。


「あ、ああああ!リュドガー、死にやがれぇ!!!」



ほとんど錯乱した状態で、リュドガーに襲いかかるオーガ。するとリュドガーの横から、またしても突如として人影が現れた。


「…!?ガキ…!?まずはテメェからだ!!」


突如現れた桃色の髪の少女に、オーガは錯乱しながらも狙いを定める。


その手に握られた刃物が振り下ろされる直前。

少女は恐ろしいほどの速さで、オーガの喉元目掛け右足を振り上げた。ゴッ、と鈍い音が鳴る。


「ガッ…!?」


とてつもない衝撃で顎を蹴り飛ばされたオーガは、声も出せないまま後方に吹き飛ぶ。その後少しの間ピクピクと痙攣していたが、やがてぴたりと動きを止め、そのまま絶命した。

一連の流れを、微糖だにせず見つめていたリュドガーが、少女に声をかける。


「…かたじけない、サクラ殿。」


「別に、どうってことないですぅ。それより、後は残党処理ですぅ。」


サクラは特に何の感慨もなさそうにそう答える。

その脳内では、オーガ族の人数と逃げた方角から、集落への被害のリスクを予測していた。


村民の多くは、オーガ達が襲来したという報を受け、既に集落の中心に避難が完了している。だが、一部のエルフは逃げ遅れ、油断はできない状況だ。


「あっちの方角はアンヘルが構えてるですぅ。リュドガー殿は反対のフォローをお願いしたいですぅ。」



「承知した。それとサクラ殿。」


その指示に頷くと、リュドガーは行きしなにサクラの方を振り向いた。


「私はカミラ殿の眷属としては後輩だ。どうか、気にせず呼び捨てで呼んでくれ。…それでは。」


爽やかな笑顔でそれだけいうと、リュドガーは走り去っていった。

残されたサクラは一瞬呆気に取られたが、すぐに不機嫌そうな顔を作るとリュドガーの背中を睨みつける。


「…わたしはまだ、お前がカミラ様の眷属だって認めてねぇんですけど…!」


頬を膨らましながら文句を吐くサクラの様子を知りもせず、リュドガーは走り去って行ったのであった。


・・・


「はぁ、はぁ…くそ、ここまで逃げれば…!」


集落の脇道を抜け、争乱から逃れた1匹のオーガ。

通路の物影で息を整える彼は、ふとその奥に気配を感じ取った。


「…こんなところまで、いやがるのか。」


通路の奥から、影は少しずつその姿を表す。そこには、茶色の髪を持つ少年がいた。だがそのオーガは直感で理解していた。こんな場所で、オーガに対して少しの恐怖心もなく近づいてくる人間が、まともであるはずがないと。


「へぇ、あっしはこの辺を見張ってまして。…ま、運が悪かったってことになりますかねぇ。」


へらへらと緊迫感のない表情で、その少年(アンヘル)はオーガの元へと歩み寄る。しかして、その右腕はまるで金属のように

硬質化しており、指先の爪は獣のように鋭く変形していた。


「動かなければ、楽に逝かせてあげられますんで。」


「…くそっ、ガキが、舐めやがって…」


オーガは、もはや抵抗する気力すらなかった。悪態をつきながらも、少年の姿を見やる。と、そこである違和感に気づいた。


「…てめーら、その耳ーーエルフじゃねえな?…一体何モンだ…!」


思えば、先ほどの毒矢にも違和感があった、とオーガは回想する。そもステータスの低いエルフの作った毒であればオーガ達に効くはずもないのだ。


「へぇ、そいつは秘密でさぁ…失礼しやす。」



オーガの疑問の声に特に応えることなく、アンヘルはオーガの胸に右手を添える。

そしてそのまま、鋭く尖った爪先で一気に心臓を貫いた。


絶叫が通路に響き渡る。同時に溢れ出た鮮血に衣服を汚しながら、アンヘルは慣れた様子で右手を抜き取り、次の獲物を探して彷徨うのだった。



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