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毒キノコ転生〜地下ダンジョンに閉じ込められた最弱の魔物は、チートスキルと謀略を駆使して最強最悪の魔族を目指す〜  作者: さかなかさ
三章『マテーラ村防衛編』

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二十話 『第一村人』

「ミリアさまぁ、なんか上の方が暗くなってるですぅ…」


「驚いた…"夜"まであるのか。」


俺は()()()()()を眺めながらそう呟いた。


「うおっ、なあプラム!あれ、ホシってヤツじゃねーか!?」


キングが、暗くなっていく上空に煌く何かを見つけたようだ。

興奮した様子でその光を指さすと、隣にいたプラムに声をかける。


話しかけられたプラムも、返事こそしないもののその光景に感じるものがあるようで、じっと空を眺めていた。


「深層がこんな世界だとはな。とりあえずアンヘルに調査に行ってもらってるが…」


アンヘルは副長のサファイアと共に周辺の探索に出ていた。問題児もとい変態のサファイアは、気が良くいい意味で適当なアンヘルと相性がいい。


というか、アンヘルの基につけたからあそこまで自由に育ったのだろうか、とカミラはふと思いついた。


そんな益体のないことをぼんやり考えながら、空を見つめる。夜になり、気温が下がったのかひんやりとした風が心地いい。

草原の奥には鬱蒼と茂る森が広がっている。

また右手には大きな崖があり、そこから更にひらけた世界が広がっている。


地平は広く、全体をぐるりと囲うように迷宮の岩壁が広がっているが、その奥は霧がかっており、一体どれほど広い空間になっているか見当もつかない。


まるで本当の地上のようだ。

ずっと薄暗い洞窟の地下に居たからか、何となく体の力が抜けているのを感じる。


(噂に聞いていた深層とはえらい違いだ)


そのままくつろいでアンヘルの帰りを待っていると、茂みの向こうからガサガサと音が聞こえる。


「カミラさまぁ。調査完了いたしましたぁ。」



「おーう、ご苦労。何か変わったことは?」



「向こうの森の奥はどこまでも続いている様子で、えぇ、何匹か魔獣の気配もしました。ナワバリがあるみたいだったんでそんなに近づいてはいませんが…」


そこまで言うと、アンヘルは言葉を一区切りする。



「それと、右の崖を下った向こうで面白えもんが見えました。」



「面白いもの?」


「へぇ、おそらくですが…あれは集落ですなあ。何の種族かまでは分かりませんが、あたりが暗くなって、火をおこしているのが見えました。」


・・・



崖の先には、確かにアンヘルの言う通り焚き火の火が上がっていた。ステータス上昇により強化された視力で目を凝らす。

焚き火の周辺はある程度ひらけており、木製の民家がそれを囲むように並んでいた。



カミラは遠目に映るそれらの風景を眺めながら、今後の動きを考えていた。


「ルーカス、あれは人間の集落だと思うか?」


「深層の魔物は知性が高く会話も成立するものが多いと聞くし…一概に人間のものと決めつけはできないかな。」


「だよなぁ。」


すると、話を聞いていたサクラが口を開いた。


「どうせお互い魔物なら、殺しあうようにできてるはずですぅ。であれば、先手必勝、的な?」


カミラはそう聞くとふむ、と考える。


一見して血の気の多い作戦に聞こえる。だが油断をすれば命を奪われるこの環境では、そうした考えが有効な場面もあるだろう。


カミラは熟考のうえ、判断を下す。


「うん。その考えも一理ある。でもそれは、知性が低い魔物の場合だ。上層の魔物と違って、あいつらは話せばわかるヤツかもしれない。それに…」



「深層の勢力図がわからない今、迂闊に手を出すのは危険。で、合ってるかな?」


横でルーカスが合いの手を入れる。

俺はそれに頷くと、最終決断を下すことにした。


「ここで暮らしていけるってことはそれなりにステータスも高い奴らだろう。

こそこそやって怪しまれるより、正面から堂々と、お喋りしに行こうや。」



俺はそう言うと、いったん元の野営地に戻るよう指示した。今日アクションを起こさなかったのは、夜なのもあるが、本音を言えば単純に疲れているからだ。わざわざ顔には出さないだろうが、眷属達もそれは同じだろう。


キノコに筋肉疲労はないが、MPの消耗や精神的な疲労は存在する。


「出発は明日の朝。それでいいか?」


眷属達の知性が高まって以降、俺は定期的に彼らに賛否を問うことにしていた。


彼らは既に俺の分身としてではなく、一個体としての自我が芽生えている。


仲間として彼らを尊重するためにも、意見があるときは忌憚なく述べるように、と俺は眷属達に指示していた。


俺の問いかけに、特に不満はなく、眷属達は肯定の反応を示す。


野営地に戻った俺たちは交代制で見張り番を決めると、各々地面に寝転がり休息を取ることにした。


俺は仰向けに寝転がると、いつぶりかの星空を眺めながら、ゆっくりと瞼を閉じるのだった。



・・・


「…さま。カミラさまぁ。」


朧げな視界の中心に、ぼやぼやと何かが映る。

灰色の塊に見えたそれは、よく見れば幼い少年の頭部だ。


だんだんと思考が鮮明になってくる。

俺の体を、アンヘルがユサユサと揺らしていた。


どうやら相当ぐっすりと寝ていたようだ。ぼうっとする頭の中を振り払うようにして、何とか体を起こす。



「おお…おはようアンヘル。もう朝か…?」



「へえ、ちっとばかし早いですが…カミラさま、向こうに客人でさぁ。」


「客…?」


こんな深層に、知り合いがいただろうか。寝起きでまだ頭がうまく回っていない。


「昨日の、集落の連中でさぁ。何でも、エルフ族だとか名乗ってまして。」


「エルフ…エルフって、あのエルフか?」


耳と手足が長くて、弓とか使う、あの?


俺は慌てて起きると、周囲を見渡した。周りの眷属達は既に起きていて、何やらざわざわと一方に視線を向けている。


その視線を辿れば、そこにはアンヘルの言っている客人の姿があった。


「あなたが、首長であるか。」


整然とした声がそう告げる。

声を発した主は、声色に負けぬ精悍な顔つきをしていた。凛々しい眉と目元を持つ、美しい金髪の青年が、そこに立っていた。その耳元は横に長い特徴的な形をしており、背には弓を背負っている。


「私は崖下の集落に住んでいる、エルフ族の者だ。…相当な魔力量とお見受けする。貴殿達は、オーガ族の遣いであるか?」


突然の問いに困惑する。オーガ族?俺はたしかに、言うなればこいつらの首長ではあるが。いや、そんなことより…



「耳と手足が長くて、弓とか使う、あのエルフだ…」


寝起き一発目で、ファンタジーの代表格を目にした俺は、問いかけに答えるでもなく、ただ間抜けな感想を溢したのであった。


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