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毒キノコ転生〜地下ダンジョンに閉じ込められた最弱の魔物は、チートスキルと謀略を駆使して最強最悪の魔族を目指す〜  作者: さかなかさ
三章『マテーラ村防衛編』

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十九話 『深層へ』

「プラム、キング、サファイア、ただ今帰還いたしまたした。」


無事にアーケロンから脱出した3人と合流し、カミラはプラムからそう報告を受けた。



「おーうお疲れ。プラムとキングはマジでよくやった。サファイアは後でちょっと話そうな。」



俺に話しかけられ、サファイアの肩がビクン、と揺れる。…いや、よく見たらちょっと嬉しそうだなこいつ。


サファイアに身体的な懲罰が逆効果なことは重々承知なので、適当に注意して終わりにしよう。こういう輩は放置プレイが一番効く。


まぁ、稀にそれすら快感に変える本物がいるが、そうなったらもう知ったこっちゃない。



「全員聞いてくれ。細かい話は後。俺たちは今日、深層に向けて出発する。」


俺は6人の眷属達に向けて話し始めた。

前々から深層攻略の話はしてあったので、さほど動揺はない。すると、キングが声を上げる。


「カミラ様、何で今日なんだ?」



「ああ…幸か不幸か、だが。街中に"虚穴の亡霊"が出たってことで迷宮都市は大混乱。

俺らの行方を探して、冒険者達はあっちこっちにバラけてる。連中が見張ってる深層への入り口も、今が一番人手が薄いはずだ。」




そう言うと、キングは合点がいったように頷いた。

眷属達への説明も終わり、おれは深層へ赴くための準備に取り掛かるよう命令した。


この1年ほどで買いためた魔道具やら装備を探索用鞄に詰め込み、それぞれが装備品をチェックする。


そうして準備が整うと、俺はプラムの方を見やる。

プラムの幻術スキルは、眷属の中でもかなり便利なものだ。


カレオバナタケに種族進化してから後天的に覚えたものだが、俺はそのスキルを所持していない。どうやら同じ種族でも覚えるスキルには差が生まれるらしい。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【眷属:カレオバナタケ(プラム) Lv.40】

 HP:101/101

 MP:142/78

 力:48 敏捷:91 知能:76

 

 ■スキル

  ・どくのからだ

  ・毒酸雨(ポイズンレイン)

幻惑胞子(ミラージュスポア)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


俺がレベル40付近だった頃と比較して、プラムのステータスはHPと力がやや低く、敏捷とMPが高めに設定されている。


同じ種族、同じレベルでも、かなりの個体差が生じているのは驚きだった。戦いの経験などがレベルアップのステータス上昇にも影響を及ぼしているのだろう。


「プラム、魔力がだいぶ減ってるな。アーケロンに向けて全員の変装をお願いしたいんだが、まだ行けそうか?」



「はい、問題ないです。ただ、残量的にあまり凝った変装はできませんが…」


言うと、プラムは手のひらに魔力を集中させる。

指先から輝く胞子が溢れ出し、それが俺らを包み込んだ。


ぱっと胞子が弾けると、俺らの姿は一変した。

全員の肌の色が、血の通っていない不気味な白色から自然で血色の良い肌色に変わり、各々好き勝手だった髪色は、茶髪や黒髪に変更されている。


「おぉ、こんだけ変われば十分だ。ようし、それじゃ出発!」


俺が号令をかけると、一行はアーケロンの中心、「悪魔の胃袋」と名付けられた深層の入り口を目指すのだった。



・・・



「うん、カミラの作戦通りだったね。門兵数人しか見張りがいなかった。」


そう俺に話しかけたのはルーカスだ。

結局、深層への入り口はあまりにあっけなく通過することができた。


ルーカスがスキルで調合した「眠り毒」を門兵隊に吹きかけると、彼らは一様に意識を失った。


「そんなに警戒する必要もなかったな。」


俺たちは今、大穴の壁沿いに堀られた階段を降っている最中だった。


通路の幅は数メートルほどと広く、6人はゾロゾロと居並んで歩みを進めていく。ふと通路の横を見れば、際限なく大きい大穴が広がっている。


その穴の奥には未だ暗闇が広がり、底はまだまだ見えそうもない。


大穴の反対側の壁は遥か遠く、薄らと霧がかっている。


その大きさは想像もつかない。地下にこれほど巨大な空間があるとは。


仮にこれが魔神の卵なのだとしたら、元の魔神はどれほどのサイズだったのだろうか。


「ダンジョンは、歳を重ねるごとにどんどん大きく成長していっていると言う説もあるみたいだよ。」


俺の思考を察したのか、そう言葉を発したのはルーカスだった。目元の眼鏡をくい、とあげると、興味深そうに周囲を観察している。


「一体後どんくらいあるんすかねー、この階段。」


キングが退屈そうにそう呟く。

横にはサファイアがいるが、珍しく物静かにしている。というか、多分上手く喋れないのだ。その顔面は見るも無惨にボコボコにされていた。


その処罰を実行した少女(サクラ)は、その後ろでプラムに肩車されながら、無邪気に大穴の景色を眺めていた。


「わぁ…アンヘル、見てあそこ。知らない植物が生えてるよぉ。」


「えぇ、姉御。ありゃ採集のしがいがありますなあ。」


サクラの問いかけにアンヘルが相槌を打つ。

思えば、近頃は6人バラバラに役割をこなすことが多く、こうして一堂に会するのは久々だった。


何となく穏やかな雰囲気で歩みを進めるカミラ達。気づけば階段は壁面から逸れ、地中の中に先を伸ばしている。


大穴の深度もわからなくなり、そのまま体感にして丸1日ほど歩いただろうか。


キングがあまりの退屈さに愚図り始めたあたりで、ようやく階段の終わりが見えた。



薄暗い通路の奥に、一筋の灯りが見える。


「おっ、やっと出口に到着だ。気をつけろ、冒険者達の野営地があるかもしれない。」


俺は眷属達にそう注意を促すと、息を潜めながら入口に近づいた。段々と入口の光が近づいてくる。


しかして、俺はその光に見覚えがあった。ダンジョン内の薄暗い照明ではなく、それはむしろ日の光や自然光のそれに近しい。


不思議に思いながら、遂に入口に辿り着く。長い洞穴から這い出た俺たちを待ち構えていたのは、何とも予想外の光景だった。




 

あたり一面に、真っ青な草原が広がっていたのだ。遠くには背の高い山々も見える。

空を見やれば、遥か上空白い霧のようなものが立ち込め、その間から日光のような光が地上に降り注ぐ。


ダンジョンのはるか地下には、地上と見紛うような絶景が広がっていた。


「これは…噂には聞いていたが、ちょっと想定外だな。」



深層の情報は、アーケロンと言えど出回っているものは少ない。選ばれた一握りの冒険者しか探索を許されず、且つ無謀な挑戦者が出現しないようその情報には緘口令が敷かれるのだ。


溶岩沸き立つ地獄であるとか、魔獣が跋扈する冥界であるとか、さまざまな噂が流れていたものの、この景色には流石のカミラも面食らった。


眷属達を見やれば、目の前の景色に呆気にとられている。


「初めて見るのに…なんか、懐かしいですぅ?」



俺の中の記憶が一部受け継がれているのだろうか、そう言葉をこぼしたのはサクラだ。プラムの方の上で、景色にうっとりと見惚れている。

まずは丸一日肩車を敢行して階段を降り切ったプラムを褒めてやりたい。


プラムは気分良さそうなサクラを見て満足げであったが、よく見れば足先がプルプルと震えていた。


「サクラ、そろそろプラムから降りてやってくれ。お前らも、1日お疲れ様。」


俺は振り返ると、そう眷属達に話しかけた。

見たところ冒険者達の気配もない。

1日歩き続けて全員少々疲れた様子が見える。

俺たちはその辺のひらけた場所を探し、ひとまず休息を取ることにしたのだった。



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