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毒キノコ転生〜地下ダンジョンに閉じ込められた最弱の魔物は、チートスキルと謀略を駆使して最強最悪の魔族を目指す〜  作者: さかなかさ
二章『虚穴の亡霊』

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十五話 『迷宮の亡霊 前編』

王都から北西に広がる黒葉樹海を超えた先に存在する大陸有数の超大規模迷宮(ダンジョン)、「魔神の揺籃」。



その浅層のルートの一つを、中堅冒険者リディ・バージェスは、慣れた様子で進んでいた。


ここ魔神の揺籃は、大きく二つの階層で構成されている。

1つはリディが今進んでいる浅層。もう一つが、より危険な魔物が潜む"深層"だ。


浅層は冒険者による開拓が進んでいる。魔物の危険度も比較的低く、初級冒険者でも探索可能な階層と言える。


対照的に、深層に潜む魔物たちはどれも強大で、知性が高いものも多い。彼らは"眷属"と呼ばれる配下を作って集団で行動するか、または1匹で圧倒的な武を示すことで、それぞれのテリトリーを支配している。


浅層と深層の間には明確な境目がある。

「魔神の胃袋」と呼ばれる巨大な大穴だ。

冒険者たちは長い年月をかけて、その大穴の付近に大規模な拠点を構築した。



迷宮都市アケローン。



そこは数多くの冒険者が住み着き、歓楽街まで兼ね備える一大都市と化していた。


帰郷のため一度魔神の揺籃から遠のいていたリディは、アケローンを目指して探索をしている最中だった。



遭遇した浅層の魔物たちを、何なく処理しながら進んでいく。



すると、リディはそこで奇妙な光景を目にした。


通路の奥に、幼い子供がいるのだ。



「こんなところに、子供…?いや、それより!」




その子供は、通路奥から忍び寄るリザードマンの魔物に襲われようとしていた。


子供が魔物に気付いている様子はない。

リディの体は弾くように動いた。


「坊主!しゃがんどけ!」


短い短髪の少年にそう叫びながら、リディは腰から愛刀を抜き構える。



唐突に現れた冒険者に、リザードマンは一瞬驚いたが、構わず子供を襲おうとした。


「させ、るか!!」


しゃがんだ子供の上から、剣撃をリザードマンに浴びせる。リザードマンはそれを咄嗟に避けると、実力の差を察したのか、体を翻して逃げ去っていった。



「ふぅ…おい坊主、危ねえじゃねえか!」



危機が去り、咄嗟に子供を叱りつける。遊びで迷い込んだとして、ダンジョンは一瞬で命を奪い取られても文句は言えない場所だ。こんなところに子供が来るなんて自殺行為に等しい。


「あ、あぁ…すみません…へへ、助かりましたよ兄貴」


すると、血色の悪い肌をしたその少年が感謝の言葉を述べる。子供にしては変に落ち着いているというか、さきほどまで命を奪い取られそうになっていたとは思えない様子だった。


「兄貴って…お前なぁ。」


こてんぱんに叱りつけてやろうと思ったが、その様子に毒気を抜かれる。


「まぁいい。俺はリディだ。お前、こんなところで何をしていた?」



「へぇ、あっしは薬売りをやってまして。薬といっても、傷薬とかとは別のヤツなんですが…へへ。」


そう聞いて、リディは察するところがあった。


地下都市アケローンには様々な娯楽が溢れている。酒屋はもちろん、歓楽街には賭場や娼館まで揃っている。


元々荒くれ者が多い上、常に命の危険に晒されている冒険者たちにとって、そういった娯楽は一層魅力的に映るのだろう。


それだけならいいのだが、地上では取り締まられるような怪しい取引や、薬物の売買なんかも地下では横行しているのだ。


そしてそういった取引の使い走りとして、地下で生まれた身寄りのない子供たちが利用されている、と聞いたことがある。


「…お前、親はいるのか?」


「…オヤ?オヤって何でしょうかあ?分かんないけど、ボスならいらっしゃいますねえ。」



「…そうか」


リディは思わず歯噛みした。何とも胸糞悪い気分だった。娼館で産み落とされ捨てられたのか、その身元ははっきりしないが、とにかくこんな年齢の子供が、怪しい金稼ぎのために命の危険に晒されている。


「なぁ、良かったら、俺と一緒にアーケロンに行かないか。そのボスってやつのところまで案内して欲しいんだ。」


「へぇ、兄貴と一緒に、ですかあ。」



少年は少し目を見開いた。驚いたような顔をしている。


「いいんですかあ?こんな強え兄貴がいれば、そりゃ心強えや!」


少年はそういうと、にかっと笑って、機嫌良さそうに道を歩き出した。


「…はは、何だか愉快なやつだ。おい坊主、名前はないのか?」



「へぇ、名前ですかぁ。あっしの名前は____」


前を歩いていた少年が、くるり、とこちらを振り向く。その顔はヘラヘラとしていて、まるで酒にでも酔っているかのようだ。


「ア______」


少年が口を開く、その刹那。

前方の岩陰から、唐突に魔物が飛び出してきた。狼型の魔物だ。


強烈なデジャヴ。だが、先ほどより距離が遠い。

助けが、間に合わない。


「おい!!!前!!!」


咄嗟に駆け出す。ダメだ。あと一歩____


少年はまだ気付いていない。こちらをぽかんと見つめている。その頭部に狼の鋭い爪が迫る。





そして____ガギン、と言う鋭い衝撃音が洞窟内に響き渡った。







本日2話投稿です!2本目は9時投稿予定です!

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