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毒キノコ転生〜地下ダンジョンに閉じ込められた最弱の魔物は、チートスキルと謀略を駆使して最強最悪の魔族を目指す〜  作者: さかなかさ
二章『虚穴の亡霊』

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十三話 『土蜘蛛戦①』

この世界に来て半年の月日が経とうとしていた。

ダンジョンの探索を続けていた俺たちはとある発見をした。


人間を発見したのだ。正確には、人間の冒険者達が使う、ある程度整備されたルートを発見することに成功した。


つまり、その道を辿っていけばダンジョンの入り口や、逆に現在探索が進んでいる最奥まで辿り着くことができるのである。



コボルト達の寝ぐらはダンジョンの中でも複雑な迷路の中にあった。


アンヘルは冒険者相手にも取引を行い薬を売り付けていたようだった。しかし内心ではまったく彼らのことを信用していなかったのだ。寝ぐらの周囲の地形は複雑怪奇で、把握にかなりの時間を要した。コボルト達は特定の場所にマーキングされた匂いを嗅ぎ分けることでマップを把握していたようだったが、毒キノコ族には嗅覚も味覚も存在しない。


知力の向上が著しかったルーカスのマッピング技術がなければ、その発見には更に時間を要しただろう。



冒険者たちが使うルートでは壁に沿って松明が設置され、地面には轍がある。


整備されたその道に沿って、洞窟の下の方に進んでいったカミラ一向は、道の奥に複数の気配を探知した。


近頃は斥候の役割を担っているサクラとその副長プラムが、前方から急ぎ戻ってくる。


「カミラサマ…ミチノオクニ、ニンゲン。ハシッテクル。」


片言で、プラムがそう報告をくれる。知能の高いルーカスには及ばずとも、サクラもある程度は会話ができるようになってきていた。


「お、まじか、よく見つけた。お前ら、姿は見られたか?」


2匹がフルフルと首を横に振る。どうやら隠密で様子を探ることに成功したようだ。



「よし、それなら、全員物陰に隠れていてくれ。俺はそいつらに接触してみる。もし雲行きが怪しくなったら合図を出すから、それまでは様子見だ。」



そうして、しばらくすると、道の奥から何やら慌てた様子の冒険者達が現れた。


全員息を切らしながら、何かから逃げるようにこちらに向かってくる。どうやら3人組のパーティーのようだ。



すると先頭を走っていた剣士らしき男が、道で立ち尽くす俺の姿に気づいた。



「ん…!?子供…!?おい、そこのお前!」



冒険者達はすごい勢いで駆け寄ってくる。やべ、なんか緊張してきた。眷属以外と喋るの久々だし。


てかこいつらだいぶ焦ってるな、魔物から逃げてきたのか?


まぁいい、人間関係はファーストコンタクトが命。

なるべく気さくな挨拶を心がけよう。



「や、やぁ…俺はカミラだ。結構キュートな見た目だろ?」


「どけ!土蜘蛛に追われてる!」



俺の挨拶をガン無視すると、男は俺の脇をすり抜けて走り去っていく。その他3人も同様に、俺には目もくれずに後方に消え去っていった。



「は、はは…」



挨拶で前に掲げた俺の右手が、虚しく宙に残った。



・・・


「ねぇ、さっきの子供…」


「あぁ!?…俺らの命の危機だ!土蜘蛛が迫ってきてた!仕方ねぇだろ!?」


「ちっ、違うの…見捨てたのは私も一緒、責める気はないけど…」


「だったらなんだってんだ!」


「最後、一瞬振り返った時、いや、見間違えかとも思うんだけど…」


はっきりとしない仲間の口調に苛立ちが募る。大体、こんな時になんだと言うのだ。すんでのところでそれを押し留め、走ることに集中する。


「あの子の周りに、たくさんの魔物が現れていたの…恐らく、毒キノコだと思うんだけど。あの子を守ろうとするみたいに周囲を取り囲んで。まるで、あの子が魔物を従えているみたいだった。」


精霊(フェアリー)の類か?男の脳裏にふとそんな思考がよぎる。だがここは迷宮でも低階層。精霊(フェアリー)など知性の高い魔物が現れるわけはない。そもそも、土蜘蛛だって本来このエリアに出現するような魔物ではないのだ。

もしこの階層で知性を持った人型の魔物など現れたら、それこそ低階層をメインに活動している冒険者達は全員命の危険にさらされるだろう。



「こんな階層に人型の魔物なんているわけねぇだろ!それにあいつが仮に魔物で、それも上位種だってんら、俺らなんてとっくのとうに殺されてるんだよ!」



仲間の妄言を諌め、男は呼吸を整えることに集中する。人型の魔物は基本的に強大な力を有し、より強い魔物が集まるダンジョンの深層に存在するのだ。


「そっ、そうよね…ごめん、私だいぶ動揺しているみたい。」


パーティーメンバーの女は、そういうと気まずそうに顔を逸らした。


恐らく、動揺と罪悪感から幻覚でも見えたのだろう。それより、警戒すべきは土蜘蛛だ。安全なエリアまで辿り着いたら、すぐに周辺の冒険者に注意勧告をしなければならない。


男とその仲間達は焦りを必死に抑えながら、地上までの長い道のりをひた走るのであった。


・・・




冒険者達が走り去ってすぐ。


俺の気持ちを察したかのように、いつの間にか集まってきた眷属達が俺を取り囲み、ルーカスがぽんぽん、と肩を叩いた。


「…うん、大丈夫だよ、カミラ。今のはタイミングの問題だ。」


ルーカスは俺に気持ちばかりのフォローを入れると、体を洞窟の通路奥に向き直す。


「…それに、どうやら落ち込んでる暇もないみたいだよ。」



冒険者達がやってきた道の奥から、強大な魔物の気配がする。今までの魔物達とは格が違う圧を感じる。



「…土蜘蛛、とか言ってたか…どんな魔物か知らねえが…」



洞窟の奥に、怪しげに赤く光る巨大な8つの目が現れる。


そこにはプレハブ小屋くらいの胴を持つ、巨大な蜘蛛がいた。

胴にはウジャウジャと何本もの足が生えている。


「…おめーら、準備しろ。…許さねぇぞ、土蜘蛛ォ!」


「ユルサナイ!ユルサナイ!」


俺の咆哮に呼応して、横にいたサクラが片言に言葉を復唱する。


ふと見れば、副長のプラムの傘の上に乗っかって肩車されていた。いや、どういう作戦?




一瞬新しい陣形かと勘繰ったが、多分サクラが高いところに登りたかっただけだろう。




鋼キノコのアンヘルは全身に力を込めており、いの一番に敵に突貫する構えだ。横に控えるサファイアはその後ろについてサポートの姿勢をとっている。


そうして、俺はやりようのない感情をぶつけるかのように、土蜘蛛と呼ばれる巨大な魔物との戦闘を開始した。



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