「将来は考えてるかい?」
気づくと俺は寝転がっていた。バッと焦って飛び起きるが、状況が上手く飲み込めない。どこからが夢だったのだろうか。首を噛まれたところからなのか、部屋に人がいたところなのか。出来れば俺に友達がいないところから夢であって欲しい。
「やあ、起きたんだね」
声のする方向にはどうも上機嫌なさっきの女性がいた。
「す、すみません」
よく分からないけれど、とりあえず謝った。女性の目は吸い込まれそうなほど大きく、目も合わせられなかった。誰相手でも合わせられないけど。笑えないな、ほんと。
「ときに少年、将来を考えたことはあるかい?」
そう言ってタバコをふかしながらその女性はソファーに座った。
「とくには、、」
高一で夢がある奴なんてピンキリで、本当に目標のあるやつか、相当なバカかどっちかだろう。ピンでもキリでも、何者でもない俺は無くて当然だ。
「その考えすぎる性格は生まれつきかい?」
思考が読まれているようでドキッとした。
「人と円滑にコミュニケーションを取れるようになりたくないかい?」
な、なりたい、切実に。でも一体何をさせる気なんだろうか。でもここは勇気の出しどころな気がする。
「あ、なりたいてす」
「決定だね。そしたら学校辞めようか。」
急すぎる、そう言いたかったけど、勇気はもう既に振り絞って無くなった。でも学校を辞める勇気もない。
「君は学校をやめて、こっちの世界に来て僕に血を提供する。もちろん報酬もあるよ。」
何が何だかわからないけど、とりあえず逃げよう。何言ってるのかわからない。そう思って女性に背を向けた。
「そっちの世界に、まだ未練があるのかい?」
走馬灯のように、俺の記憶が溢れ出した。
「合意するなら、親指を合わせて。」
勇気の残りカスを振り絞る間もなく、俺は言われた通りにした。
俺には未練がなかったようだ。俺があっさりしているのか、それとも世と関わりがなかったのか、知る由はあれど知りたくはない。




