ああつまらん。ん?
晴天で日が照りつく夏、まさしく青春だと言えるような、そんな日に俺はスマホ片手にひとりで弁当を食らっていた。ワイワイとやかましい教室で静かな俺は腫れ物そのものだ。結局、家に帰るまで一言も話すことはなかった。
入学からおおよそ3ヶ月、友達も、恋人も、ついには好意を寄せる先すら見つけることが出来なかった。
稀にあったクラスメイトとの会話も、派閥が出来始めると徐々に減った。今ではないに等しい、というより全くない。そうやって浮いた俺を人は避けていく。もはや人のみならず、蚊ですら俺を避ける。世界はどうも俺の居場所を用意するのを忘れたらしい。自分の居場所といえば家とバイト先くらいだろうか。家族はもう居ないし、バイトも派遣清掃だから、ほとんど人と関わることは無いけど。
午後10時頃に俺のバイトは始まる。呼ばれた場所に行って、2時間以内に綺麗にして帰る、ただそれだけだ。
掃除は好きだが、このバイトに不満がふたつだけある。知らない部屋に入ることと
「こんにちは、清掃のセイソーです。」
この挨拶だ。セイソーとかいう舐めた名前は俺のバイト先の名前だ。恥ずかしいし、知らない部屋に入るのは緊張する。万が一周りに聞かれたらどうするんだか。
いつもはすぐ住居人が留守にしているのだが、今回はそうではなかった。中に入ると、人が横になっていた。透き通るように白い肌で細身の女性だった。
その人が急に起き上がるので、俺の心臓はバクバクと大きな音を鳴らし始めたが、そんなことはお構い無しに女性が話し始める。
「君、蚊にかまれないてしょ」
脈略もない突拍子な発言に俺は上手く反応できなかった。当分人と話していないのだから当然と言えば当然だが。いやこれは人としてどうだろうか、なんで考えていた矢先、女性が急接近してくる。
何を言えばいい、そう考えた次の瞬間、俺の首に女性の歯が当たっていることに気がついた。
「蚊に好まれる血は吸血鬼が嫌う
蚊に好まれない人の血は吸血鬼が好む」
こっちの世界じゃ常識だよ。最も、君たちは知る由もないないがね。




