「多いね、質問」
「君は僕に血を与えてくれ。要するに君は僕の餌になった訳だ。」
どうやら全部夢ではなかったらしい。血を吸われたことも、俺がひとりぼっちだったことも。
「血を美味しくするためにいいことしよっか。」
俺は焦った。つまりそういう事なのか?どうすればいいのか分からず、もじもじしている俺の手を取って彼女は笑いかけてきた。
「夜の空気はおいしいね」
いいことってのは散歩だった。焦ったのが恥ずかしくてしょうがなかった。どうにかして忘れたい。
「まだ君の口からはすみませんしか聞いていないけど、何が聞きたいことはあるかい?」
俺は口篭りながらではあったが、どうしても聞きたかったことを聞いた。
「きゅ、吸血鬼なんですか。蚊がなんとかっていうのも...」
「そうさ、君は吸血鬼に血を与える役目を全うしてくれよ。蚊の話は僕らの生まれ方から説明した方が早いね。」
「僕ら吸血鬼は蚊の突然変異種みたいなものでね、ごくごく稀に生まれるのさ。ずっと死ねなかった蚊が吸血鬼になるんだ。」
「好みって言うのは?」
「蚊が吸う血は子を産むため。君らで言うと離乳食みたいなものだよ。逆に蚊に好まれないのは普通食。君みたいな血を言うの。」
「散歩の理由は?」
「動かずに育った養殖の魚より、いっぱい泳いだ天然の魚の方が美味しいでしょ?そういうこと。」
「コミュニケーション能力が上がるというのは?」
「多いね、質問。」
ミスった、そう思った。質問攻めになっていた。こういうのが良くないのだろうか、いや良くないんだな。
「健康的な人間の血が美味しいんだよ。だから君には夜の世界で健全で健康的な人間になってもらうよ。」
矛盾してる、そう思ったが、さっきのミスがチラついて言えはしなかった。




