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キャンパスでは「ご安全に!」  作者: リオン/片桐リシン
022−電源コード 全5話
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022−電源コード 5 <コード・トラップ>


 さて、臨時『お茶会』の時間だ。

 安野研ではトラブル発生時にはその『反省会』をまったりとお茶を飲みながら、談笑の中で行うことになっている。厳しい糾弾や叱責ではなく、ゆるく軽く「アホやなあ」と失敗を笑い飛ばす会だ。

 失敗の責任追及をしても仕方がない。事故防止の役には立たない。発災者を萎縮させるだけである。それよりも情報を包み隠さず語らせて、その情報をみんなで共有する方が有意義である。


 院生君がお茶会の開会宣言をする。

 「本日のお菓子の提供は松本君です。 拍手ぅ〜」

 部屋の中の学生からパラパラとの拍手がおこる。安野もニヤつきながら拍手する。

 松本君は微妙な顔をしている。菓子代は無理強いしていないだろうな。自発的なものだろうな。

 院生君が松本君に

 「3時からお茶会をするから菓子を買って来て?」

とお願いしたらしい。そうしたら、

 「皆さんにご迷惑を掛けましたから、お菓子代は僕が出します。」

と自発的に申し出たそうだ。 …本当かな? でも以前には

 「先生、お茶会を開きますから、菓子と飲み物(ソフトドリンク)の代金のカンパをお願いします。」

とポケットマネーをむしり取られたこともある。促されても、気がつかない(ふりが出来る)猛者の起こしたトラブルの反省会のでは、安野の財布が狙われる。今回も

 「先生! 菓子代は松本が出したいそうですが、飲み物代が足りないので、カンパしてください。」

と2千円ほど強奪された。


 ♫ ♫ ♫ ♫ ♫ 


 院生君が司会をしてくれる。

 「さて、今回の被害ですが、オイルバスは無事でした。動作確認しました。」

皆が拍手する。

 「でも、オイルバスに差していたアルコール温度計が折れました。」

安野はシクシクと泣きまねをする。これはお約束だ。学生たちがそれを見てアハハと笑う。

 「あとは麻生君のズボンが油まみれです。」

 「今日、どうやって帰ろう。」

院生君に借りたツルツルテンのジャージのズボンを履いている麻生君がぼやく。

 「そのジャージのズボンを貸してやるよ。」 

 「でもな、足の丈が短くて、脛が出ちゃうよ。」

 「じゃあ、貸してやんない。返せ。」

 「ウソウソ、ごめん。貸して。」


 ここで安野が尋ねる

 「火傷の方は大丈夫だった?」

 「はい、保健センターのお医者様が、「この程度で来るんじゃない」って。看護婦さんが○ロナインを塗ってくれて、おしまいでした。」

 「それは、良かった。」

 「○ロナインって万能薬なんだなあ。」

誰かが呟く。皆がホッとした顔で歓談が続く。


 「ところで、松本君。トラブルの原因は何だったの?」

 「はい。麻生先輩が僕のセットしたオイルバスの電気コードを引っ張って、ひっくり返しました。」

 「!!!ちょっとまったぁ〜!!!」

と麻生君が松本君の発言意かぶせる。

 「松本ぉ。それはナイんじゃないの。あんなコード・トラップ仕掛けといて。オレが引っ張ったじゃなくて、おまえがオレを罠に掛けたんだろう?」

 

 状況は、簡単だった。ドラフトの電源差し込み口が全部使用されていたので、松本君は中央実験台の電源差し込み口から通路を渡したエクステンション・コードを設置していたそうだ。その腰の高さで通路に渡されていたエクステンション・コードに麻生君は気がつかずに引っかかったらしい。


 「それは松本が悪いな。」

 「えーでも、ドラフトの電源が足りないのが悪いんですよ。みんなどうやってしのいでいるんですか!」

 「いや?スターラーの背面に、それ用の電源の差し込み口があるだろう?」

 「うっそ〜!?」

うちの研究室で使っているスターラーはオイルバス用の電源差し込み口がついている。それを松本は知らなかったらしい。

 「「松本、ギルティ!」」

何人かの学生がニコニコしながら、サムズダウンして宣告する。

 松本は『ガックシ』とうなだれた。


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