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キャンパスでは「ご安全に!」  作者: リオン/片桐リシン
019-実験室の扉 全2話 +1話
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019-実験室の扉 1 <内開きと外開き>

誤字のご指摘、いつもありがとうございます。

定年間際でばたばたしていると、仕事が雑になるようですね。


感謝と反省と。


 施設担当の柿澤主任と安野はけんか腰で新しい実験室のレイアウトについて打ち合わせをしていた。

 「柿澤さん、実験室の扉は廊下への外開きにしてください。」

 「ダメです。研究室の部屋の扉は内開きが大鉄則です。」

最初の議論の中心は扉の開く方向であった。同席している橋本君は興味深そうに、ノートとボールペンを持って、その議論の要点をメモっている。陪席者、いや、完全に傍観者を決め込んでいる。


 安野が外開きにする理由を述べる。

 「実験室の扉を内開きにすると、地震で建物が歪んだ時に部屋から廊下に脱出できません。」

 「外開きなら脱出できるのですか?」

 「ノブをパニックレバーにすれば、体当たりで突破できます。地震時に脱出路を確保するのは、防災の基本中の基本です。」

 「でも、扉を外開きにすると。急にドアを開けた時に通行人にぶつけるおそれがあります。やっぱりダメです。」

 「今回の改修は耐震対策ではないのですか? 地震に備えた設計にするのは当然でしょう? 建屋が少しでも歪めばドアは開けにくくなります。ドアノブを引っ張って開けるなんてことは出来なくなります。だから実験室のドアの一つは外開きにしなくちゃならんのです。 そうだ。ドアに窓を付けましょう。ドアを開ける時に廊下を確認できるようにしましょう。それに、この外開きの扉は『非常口』扱いで、普段は使わない出入り口にしましょう。」

 「う〜ん。窓ガラスは防犯的にどうかなあ。泥棒さんが室内の下見をしやすくなりますよ。それに外開きの扉は蝶番ちょうつがいの連結部が廊下側になるから外から蝶番を切断して扉を外せるようになります。」

 「泥棒さんは、そんな蝶番を切断するような大きな音をたてようとはしませんよ。」

 話しは平行線だ。柿澤さん、なんでこんなに粘るんだろう?


 「ドアノブも回転式ではなく、絶対にパニックレバー・タイプにしてください。それなら体当たりしながら開けることが出来ます。レバータイプや古いタイプの握り玉は絶対にダメです。」

 「今時、握り玉のドアノブはむしろ手に入りませんよ。」

柿澤主任は苦笑した。


 実験室のレイアウトは廊下に添って縦長の実験室とアクリル板で実験室と隔てられた実験準備室という名の学生居室の2室を一組としたものであった。そして、実験室の準備室に近い方の扉を非常口に、準備室の反対側の壁には片面ドラフト(局所排気設備)を2台設置し、その近くにもう一つの内開きの扉を設置したいと考えていた。危ない実験、火が出るかもしれない実験はドラフトで行わせる。もし火災が発生したら、近くのドアからもすぐに退避できるようにしたい。


 実験準備室の扉やドラフト側の扉は柿澤主任の主張通り内開きにすることもやぶさかではない。またドアノブもレバーハンドルでかまわない。しかし、実験室の2つのドアのうち、脱出経路の実験準備室側のドアは、パニックハンドルの廊下側へ外開きにしなければならないと安野は強固に主張した。

 なお、実験室と準備室の間の扉は『引き戸』にしておいて、常時開けておくつもりだ。


 「廊下への外開きにしたら、廊下の什器が転倒した時に、扉が空かなくなりますよ?」

 「うちの学科の廊下に学生用のロッカーなどは置いていません。見て来てください。」

 2004年の大学法人化に伴う教員の意識改革により、脱出経路である廊下に荷物はおかれなくなった。…もっとも徹底しているのは工学部だけだが、他の学部ではまだ徹底できていない。

 「う〜ん。でもね、工学部の誰かさんが また廊下にロッカー等を置き始めるんじゃないですか?」

 事務官の柿澤主任は渋い顔でそう言った。どうやら大学教員の良識を信じていないようだ。うん。僕も信じられない。信じていない。


 「実験室の廊下への2つの扉のうち、せめて準備室側の扉、ひとつは外開きにしてください。奥側のもう一つのドアは内開きでもかまいませんから。」

 安野もしつこい。絶対に一つの扉は外開きにすることを譲らない。

 「う〜ん。懸念はわかるけどねえ。 では、『特殊実験室』ということで、先生の部屋だけその仕様で設計します。」


 ここまで傍観者だった橋本君が、ここで口を挟んだ。

 「あの〜、柿澤さん。この件は他の先生方には教えなくても良いんですか?」

柿澤さんは橋本君を睨んだ。

 「黙っていてね?」

 「でも、安全に関する情報は共有した方が…」

 柿澤さんは繰り返した。

 「黙っていてね?」

柿澤さんは橋本君を睨み続けている。《でも、いまの「黙っていてね」は橋本君へ言ったんだよね? 僕は口止めされていないよね?》と安野は思わず顔がニマニマするのを抑えた。


3月6日の採集講義を聞きに来ていた卒業生が、私のペンネームを見て

「なんですか、あのひねりもないペンネームは!」

とぼやいていました。

澄みませんねえ。でも、自分の本名を漢字変換する時に「かたぎりりしん」と打つと、一発で正しく変換されるんです。正しい読み方では変換されません。orz


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