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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第九章 『悪の組織と冬の寒さと』

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降臨、満を持して その2

 世界の存亡を賭けた神の遊戯。

 あまりにも一方的なそのゲームに、残念ながらツカサと“最強さん”ことカスティル=シシオウは出禁らしい。

 「今代のシシオウは言うまでもなく出禁ではあるが、現人神の方はそこまででもないがな。せめて最終日までは黙っていて欲しい程度だ。……まぁ、シシオウ共々今ここで始末を付けた方が楽なのは確かだが」

 ツカサはどうやら最強さんのオマケとして消されるらしい。

 「……神様に認知されてるってのは光栄ではあるけど、殺意は向けられたくなかったなぁ」

 それが機械仕掛けの神とはいえ、八百万の神々の一柱である事に変わりはない。

 悪の組織に属してからというもの、あまりにも非日常的な出会いばかりのある人生だったが……。


 「生憎とこの場で死んでやる気はないんでね」

 ツカサは未だにじくじくと痛む腹を押えながら、「変身」と呟いてその姿を黒雷へと変える。

 腹部に空いた穴はそのままだが、カゲトラに返して貰った白亜の盾を帯に変えて巻き付けることで一応対処。

 「カゲトラ、悪いけどみんなを頼めるか。この子達を避難させたら、次は孤立してるヒーロー達の回収を頼む」

 ヤルダバオトの言う、ヒーローの勇気やら何やらを恐怖へと置換する『ディスペア・ピラー』。その効力はツカサやカスティルには当然のように及ばないどころか、カゲトラや通信が可能な範囲の悪の組織面子には効果が及んでいないらしい。

 何か明確な区分けでもあるのか、はたまた自認が『ヒーロー』か否かなのか……その辺は分からないが、今は不幸中の幸いと喜んでおこう。


 「…………分かった。死ぬなよ、相棒」

 随分と呑み込むのに時間が掛かったカゲトラだったが、なんとか納得してくれた。その場で雷瞳ミカヅチへと変身し、カレン達を掴みあげると乱暴にワープ装置へと放り投げていく。

 その間、ずっとヤルダバオトが動かないのが不思議だったが……好都合と思っておくとしよう。

 怯えきった四人を投げ込み、最後にミカヅチがワープした後で装置を破壊。これで少なくとも今すぐ彼らが襲われることはないだろう。

 「……静観、感謝する。まさか情けをかけてもらえるとはな」

 皮肉混じりにそう言えば、ヤルダバオトは鼻で笑うように、

 「我にとって邪魔なのは貴様ら二人よ。他の人類は全て等しく試練の対象。今ここで殺す理由などあるものか」

 なんて宣った。


 「……なるほど、俺達さえ逃げなきゃ他はどうでもよかったってワケだ」

 むしろ彼女達を逃がすことで黒雷達が逆に不利になったまである。どの道身動きできない一般人を庇いながら戦うなんて芸当は無理なので今更だが。

 「……ヤルダバオト様、後始末は我々にお任せを」

 ふわりと、ヤルダバオトの側へと機械天使が舞い降りる。

 その天使は神官のような衣服を身にまとい、人間に近しい外見でありながら、右腕だけは異様にメカメカしい女型の機械であった。


 「ラファエルか。任せてやってもいいが、お前にはまだ役割がある。直接奴らとやり合うのは避けろよ」

 「御意に」

 ラファエル。それは天使の中でも上位の熾天使(セラフィム)階級の一体の名ではないか。

 下調べとして天使の名を一通り頭には入れていたものの、実際に出てくると流石に驚く。

 機械神でありながら己の配下達に天使と同じ名を与えたのか、はたまた本当に彼らが元ネタなのか。その辺りは不明にせよ、まず間違いなくヤルダバオトに次ぐ実力者であることは間違いないのだろう。


 「逃がすかよ馬鹿野郎ッ!」

 カスティルが光線を放ったので黒雷も慌てて追従したが、ヤルダバオトとの間に大量の機械天使が割り込んできたせいで威力は激減。ヤルダバオトへと届く頃にはラファエルが片手で弾ける程度の威力でしかなかった。

 下位の機械天使は消耗品か?

 実際、現代の“最強”と現人神に当てるとした時点で消耗は覚悟しているのだろうが、それにしたって情も何もないような扱いだ。神様に仕えるとはそういうことか。

 いや、まず下位の天使に己の意思があるかどうかも不明だが。


 「そう急くなシシオウ。貴様の仇はきっと人類がとってくれるとも。流石にこの首を差し出すワケにはいかんがな」

 ヤルダバオトは苦笑気味に笑いながら、空気に溶けるようにして消えた。

 その場に残ったのは黒雷とカスティル=シシオウ、そして熾天使ラファエルを筆頭とした周囲を覆い尽くす程の機械天使達。

 しかも天使は天空の門から今なお降り続いている。

 正しく絶望。この世の終わりの風景そのものだ。

 きっと他の場所でも同様の地獄絵図が展開されているのだろう。


 「あーあ、やーな貧乏くじ引いちゃったなぁ……」


 「そう言うなツカサ。アイツが出てきた時点で俺達はもう戦う運命から逃げられやしねぇ。ベッコに潰しに来られるよか楽だと思え」


 「せめて腹に穴を空けられる前に出てきて欲しかったんですがね。それならまだ全力とは言わずとも、本気は出せたんでしょうが……」


 「……やっぱ腹ァ刺されるのキツイか? 俺は今まで刃物で傷付いた事がねぇからよ」


 「何とも羨ましい。半神とはいえ、失血と痛みのダブルパンチは堪えるんですわ」


 そんな雑談で気を紛らわせるも、現実が忖度してくれる筈もなし。

 もはや熱殺蜂球にでも囚われたんじゃないかと思えるほど周囲に溢れた機械天使を前に、黒雷はただ半笑いになるしかない。

 「まぁともかく、お前さんは暴れるだけ暴れて、俺が合図したら一目散に逃げろ。怪我人に耐久戦は無理だろうからな。俺は数を減らしてからラファエルを叩く。ヤルダバオトがいなけりゃ俺を止められるヤツァいねぇよ」

 ものすごく頼もしいお言葉をくれるカスティル。

 この場でヤルダバオトを倒す気でいただろうに、きっと怪我を見て残ってくれたのだろう。

 有難い話だ。


 「そんじゃあ……やったるか!」

 「お任せあれ!」

 黒雷達が臨戦態勢になった瞬間、囲むばかりであった機械天使達が殺到した。



 ◇



 差出人:スズ

 宛先 :ドクターカシワギ

 件名 :現場の経過報告


 【本文】

 ヤルダバオトの演説のせいで世界中の回線が完全にパンクしてしまった為、精霊ラミィのチカラを借りて緊急でこのメールを送ります。

 博士の予感通り、機械神ヤルダバオトがツカサ先輩へと接触。演説前にカスティル=シシオウが現れましたが、その攻撃を難なく受け止めていました。

 演説後にヒーロー達の活動は停止。先輩が戦っていたブレイヴ・エレメンツはカゲトラ先輩が回収し、撤退。

 残されたツカサ先輩とシシオウでヤルダバオトと決戦かと思いきや、ヤルダバオトは撤退し代わりにラファエルを名乗る機械天使が登場しました。


 空中に浮かんだ門から何千もの機械天使が現れ、ツカサ先輩達へと攻撃開始。

 おふたりは果敢に迎撃するも、目算で約2,400体の機械天使を破壊した段階でシシオウがラファエル以下数十体の機械天使によって拘束され、『時飛ばし』と呼ばれる何かで消息不明となりました。

 前後の会話から察するに、シシオウを世界が変わる10秒前……つまり12/24の23:59:50へと送ったものかと予想されます。

 同様の手段があれは座標次第で先回りも可能でしょうが、救出できる可能性は限りなくゼロに近いかと。


 その後、ツカサ先輩は不利を悟ったか天使に囲まれながらも急上昇。

 天空の門まで向かい、境界線ギリギリのところでルミナスエネルギーを全力解放した自爆を敢行し、緊急脱出装置による撤退を行いました。

 この自爆によりその場の機械天使の半数が消失。ラファエルはなんとか逃れた様子でしたが、門は機能を失ったのか消滅しました。


 病院に搬送されたツカサ先輩は連戦による怪我と失血、自爆による消耗によって意識不明の重体。現在手術中。

 半神の回復能力次第ですが、今晩が峠とも言われていました。

 持ち直したとしても、目覚めるまで数日から数週間は掛かるかもしれない、との事です。


 報告は以上。これより搬入作業に戻ります。



 P.S. 機械天使の目を盗みながら避難誘導と物資搬入って難易度高くないっスか?

 ダークエルダーが完全に解散する前に、私とツカサ先輩には相応のボーナスを約束して欲しいっス。

 唯一無二とはいえ、ツカサ先輩を扱き使い過ぎっスよ。

 上手くいかなけりゃお陀仏でしょうが、皆して生き残れたら焼肉でも奢ってくださいっス。

 比較的短いですがこれにて第九章、完。

 次回は簡単なキャラクター紹介を挟んで、それから最終章へと入ります。


 やりたいこと全部出し切る気でいるので、最後までお付き合いくださいませ。

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