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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第九章 『悪の組織と冬の寒さと』

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決戦! さらばダークエルダーよ! その8

 両の撥を棍へと変えて、黒雷はホバー移動のような独特な動きをしつつブレイヴ・エレメンツの下へと疾駆した。

 「まずはキミからだ、ブレイヴ・ウンディーネ!」

 一番近くに転がっていたからという理由で、黒雷は棍を振りかぶってウンディーネへと叩きつける。

 膝をついた姿勢ながらもどうにか太刀で受けたウンディーネだが、押し返す程の力は出ないらしい。

 「このまま力比べといこうか?」

 自分が完全に優位だと分かっていながら、黒雷はゆっくりと棍を押し込めていく。

 当然、軽傷で済ませてあるノームとシルフィが妨害に現れるワケだが。


 「来るのは分かっていたよ!」

 黒雷はここで、半神化した際に会得した超能力を試すことにした。

 まずは発火能力(パイロキネシス)。棍から右手を離してシルフィへと向けると、頭の中でどうしたいかのイメージをそのまま念じて発動する。

 ボンッという軽い爆発がシルフィの翼の周囲で連続し、風を掴めなくなったシルフィは敢え無く墜落した。

 すかさず念動力で地面を操り、シルフィの頭部だけを残して地面へと埋め込む。

 「ちょっ……!? 兄さん流石に酷いじゃないですか!!?」

 手心で拘束に留めているのだから許して欲しい。


 「もらった──!」

 その間に、シルフィとは反対側から回ってきたノームが拳を構えて黒雷の懐へと突っ込んできたが、

 「むんっ!」

 黒雷はノームをひと睨みするだけでその行動を制限する。

 いわゆる金縛りというやつだ。

 「……う、そ………」

 踏み込んだ体勢のまま固まってしまい、そのまま倒れそうになっているノームを抱きとめる。

 そのまま地面に顔から倒れてしまっては可哀想だと思ったからだが、これは手心とは別だと思いたい。


 「くっ……! 片手でも、押し返せない……!?」

 その攻防の間も棍を押し返そうとしていたウンディーネだが、どうやら今の状態では黒雷の片腕のチカラにすら負けるらしい。

 もちろん、これも半神化で手に入れた十万馬力(アトミックパワー)と呼ばれる超能力の一部だ。

 ただ単純に怪力を手に入れるだけだが、単純故に強力でもある。

 数秒の抵抗の後、棍は呆気なくウンディーネの肩を叩く。そして……、

 「はい、電撃どーん」

 「きゃああああああっ……!」

 棍を通じての雷撃。全力でないにしろ、それでも200V10Aは人を感電死させるには充分な電力。変身していなければ無事では済まないだろう。


 電撃を受け、気絶しないまでもそのまま倒れそうになったウンディーネを片手で拾い上げて、黒雷はノームと合わせてサラマンダーの側へと運ぶ。

 サラマンダーは先程の音撃を受けて既に満身創痍。今更追い打ちをするまでもない。

 「ふはははは、このままだと全滅だぞブレイヴ・エレメンツ」

 黒雷は高笑いをしながら、二人を下ろしてサラマンダーと並べる。ついでにシルフィも念動力で掘り起こして持ってくれば、これでブレイヴ・エレメンツの敗北シチュが完成だ。


 このまま黒雷がトドメを刺せば終わりとなるが……それではやはり、面白くない。

 もはや『勝負』は黒雷の勝ちだとしても、『試合』としてはブレイヴ・エレメンツに譲らなければならないのだ。

 そうでなければ()()に差し障るというのもあるが、実際のところと言えば。

 「ここから逆転してこそのヒーロー、だろう?」

 黒雷はヒーローとしてのブレイヴ・エレメンツの実力を信じている。

 だからどれだけ追い詰められようとも、彼女達には最後の最後まで抗って欲しい。そして抗った先で巨悪を打ち倒して欲しい。

 それこそが、悪の組織の幹部以前に『ツカサ』としての願いなのだ。


 「足掻いてみせろ、ブレイヴ・エレメンツ。貴様達が揃ってもなお、私如きを倒せぬなどとは言わせんぞ」

 黒雷は背を向け、ゆっくりと歩きながら彼女達から距離を離す。

 背後から襲ってくるような元気があれば良し。なくても立ち上がるだけの気力があってくれればいい。

 二十歩ほど歩いたか。それからゆっくりと振り返ってみたが、立ち上がっているのは比較的元気なノームとシルフィのみで、サラマンダーとウンディーネは未だに座り込んで肩を上下に揺らしている。

 (……痛めつけ過ぎただろうか?)

 特にサラマンダー・ウンディーネの両名は上位精霊のチカラを使っているから頑丈だと勝手に思っていたのだが、実際は防御力に変化はないのだろうか。

 まぁ既にやってしまったものは仕方ない。後の祭りである。


 「……これ以上長引かせても可哀想か。ならば手向けとして、この技をキミ達に贈ろう」

 黒雷は宙へと浮かび上がり、己の意思で緑光輪を大きく拡げた。

 この輪によって、戦闘中に消費し切れず無駄に散ってしまったエネルギーを集め、凝縮。ルミナストーンの性質も相まって、ものの数秒程でその工程は完了する。

 「……さぁ、覚悟はいいかね?」

 棍を長杖に見立て、凝縮したエネルギーを先端へと集約。

 緑光を放ちながら渦巻くように蠢くエネルギーの塊は、黒雷の意思によって全てを破壊する閃光となる。

 先人の技に(あやか)って『星光破』と名付けたいところであるが、まんま過ぎるのでそれは却下だ。


 名付けるとすれば、それはかつて熱海の砂浜で見た景色。

 邪神にすら届きうる魔砲の極致。

 あの時のあの曲から名を頂戴しよう。

 「レーヴァテイン!」

 黒雷の叫びと共に打ち出された極太ビームは、まっすぐにブレイヴ・エレメンツの下へと奔る。

 そして、その奔流が彼女達を呑み込もうとした瞬間……。

 「──奥義! 『幻月写鏡虚詠』!」

 待ってましたと言わんばかりにウンディーネが笑う。

 彼女の両の手がラウンドシールドサイズの月のようなモノを映し出した直後、

 「……ガッ!!?」

 突如として、背後から高エネルギーの破壊光線が黒雷を襲った。


 振り返るまでもない、これはレーヴァテイン。

 ウンディーネ達は黒雷がこの大技を出すまで耐え抜き、カウンターを仕掛けるこのタイミングを狙っていたのだ。

 「なるほど……! 諦めたワケじゃあ、ないんだな!」

 棍を分解し撥へ。そのまま背面へ向けて『ドドン』と振れば、それだけでレーヴァテインは霞のように消えていく。

 相手の攻撃を転用するとは見事。だがどれ程強力な攻撃でも消し去るこの撥を前には……!

 と、その時だ。


 「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 咆哮と共に黒雷の前へと飛び込んできた影。

 それが大槍を構えたサラマンダーだと分かった瞬間、彼女の後ろにノームが作ったであろう発射台が見えた。

 おそらく、黒雷がレーヴァテインへと意識を集中した時にサラマンダーを発射台へと番え、シルフィの能力で一切の空気抵抗を無くした状態で射出したのだろう。

 黒雷がレーヴァテインを消すかどうかも判断できない状態で、既にこの攻撃を準備していたことになる。

 「……無茶をするなぁ」

 黒雷が思わず笑みを零した時、大槍はまっすぐ黒雷へと突き立てられ。

 その穂先は間違いなく黒雷の装甲を打ち破り、その刃は黒雷の……ツカサの腹を切り裂いた。





 ──霞と消えたエネルギーがキラキラと公園を照らし、悪の怪人はヒーローに討ち取られて地へと堕ちた。


 それとほぼ同時刻、全国のダークエルダーの怪人達もまたヒーローに敗北し、後を託して消えていく。


 こうして悪の組織『ダークエルダー』の最終決戦は、その規模に比べるととても呆気なくその幕を閉じたのであった。

・奥義『幻月写鏡虚詠』

 幻の月を模したワープホールを作り出し、敵の攻撃を好きな方向へ受け流す技。上位精霊であるルナの権能。


・レーヴァテイン

 周囲に飛び散ったエネルギーを緑光輪の権能によって吸収し、ルミナスエネルギーに変換して放つ大技。

 星光破とはそのままスターライトブレ〇カー。流石にそのまんまを名乗る訳にはいかなかった。

 何故この技名なのかは、熱海での邪神戦線を読み返してもらえれば……。

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