むかんしん
B定食を頼んだ私は、席について早速そのおいしい定食とやらを頬張りたい気分でいっぱいだった。
そんな中目の前の席に座っている明がA定食とB定食を頼んでるのにひどく驚いたわけだが、どうしたらその細い体に入るんでしょうかね!うらやましすぎるわ!!
「さ、さ!ね、食べて!」
君が作ったわけじゃないでしょーが、そんな思いも虚しく明はキラキラとした目で此方を見つめ早く食べて感想いってオーラを漂わせている。
はいはい、私もお腹がすいているので食べますよ。
B定食と向き合う、……流石、お嬢様とお坊ちゃんの通う学園なだけあり、学食も豪華だなと思った。
和風テイストな大根おろしをかけたハンバーグ、あっさりしてそうだ。綺麗にもりつけられたトマトやパプリカなどの鮮やかな野菜のはいっているサラダに、美味しそうな白米にスープ。
箸をもちいただきます、と小さな声で一言いってから、ハンバーグをで一口サイズに切り込み口に含む。
口を動かしもぐもぐと噛み締める。ハンバーグが喉を通る。
「美味しい」
思わずその声が漏れると明は得意げにでしょう?と自慢の笑みでそういった。
「にしても、字色は美味しそうな顔して食べるね!」
「明のほうが、幸せそうな顔して食べてるよ」
「そう?」
「そう」
少しばかり雑談を交わしながらも、食べる。サラダはドレッシングとマッチしてて美味しかった。B定食ばんざい。
私の一番好きな食べ物はトマトなのだ、トマト。そのトマトがはいっていたという時点でもうばんざい。
中学生の頃は朝食も昼食も夕食も夜食も全部トマトだったぐらいだ。え?それは危ないって?自覚してる。
私がB定食を食べきるころには既に明はB定食もA定食も食べ終わっていた。
凄まじいスピードに若干感心しながらも明は食べ終わったあとに私が食べているところをずっと見ていたのかと思うと若干恥ずかしかったりもした。
「ごちそうさまでしたっと」
そう言うと、明がお粗末様でした!と返してくれた、少し嬉しい。
「そろそろ戻る?」
食べ終わったことだし、と続けていうと明はうーんと首を傾げながら唸っている。
「もう少し話してからにしようよ」
明がそういうのだし、それでいいか。ということでもう少し話してから帰ることになりましたとさ。
とはいっても話すことなんてあるかな、私話題提供するのとかすごく苦手なんだよな、二人とも無言になったら気まずいなーなどと考えていると、その考えは杞憂に終わった。
後ろからギャイギャイと騒がしい連中が、やってきたのだ。
ギャイギャイと煩わしい連中、別名、生徒会。
生徒会の菊池洸率いる、美形軍団がやってきたというわけでありましてね、私たち以外の生徒は黄色い声援をおくっている。まあ、その美形共にはファンクラブというものがつきものでありまして、主にファンクラブの女性がキャーキ「洸様ァアアァアア!!」……キャーと、騒い「東くんこっち向いてェエエエ!!!」……騒いでいて煩わしいことこの上ない。
「凄まじいね、明」
「だねえ、生徒会って中等部のころからこんなんだよ」
「ハハ……明は興味ないの?」
うーん……とまた唸りだす明、そしてすぐに閃いたかのように口を再び開き、
「私の恋人は食べ物だからね!」
と、そういった。うん、明らしいね!いいと思うよ、その考え方嫌いじゃないよ、なんかネチョネチョしてなくて。そこで明が洸様かなとか言い始めたら私が毎晩枕をぬらすだけだ、問題ない。いや、ある。
「そういう、字色は興味ないの?」
「ないよ」
即答だった、だってどうでもいいんだもの。
「即答だねえ……」
「まあねえ……そういうものじゃないかな」
なんて生徒会のお方に関するくだらないお話をしていると、不意に声をかけられた。
「あっれ、図書室にいた子だよね!」
百 合 乃 命 ォ オ !
話しかけてくれるなよ!女性がわんさかいる手前でなんてことしてくれるんだ!!!ホラ、凄まじいぐらいのお姉さまたちからの視線が!女性のジェラシーに私が巻き込まれたらどうしてくれるんだ!
「そういえば名前聞いてなかったよね、なんていうの?僕は知ってると思うけど百合乃命」
「ええと、山田花子です」
え?名前が違うって?偽名だよ偽名、明もそこのところは空気呼んで何もつっこまないだろうし、自己紹介の時本名紹介したけど私のこと覚えてるやつなんざいないだろうし。
そう安心しきっていると、聞き覚えのある声がする。
「違うだろ、倉田字色」
空気読もうよ、副会長……ていうか何で名前知ってるの?副会長1年A組じゃないのに何でしってるの?
「何で知ってるか、って顔してるな」
エスパーなの?ねえエスパーなの?エスパーなんだね?勝手に思考回路よまないでくれる??
「ほら、生徒手帳、1年A組 倉田字色」
そういって副会長が私に渡してきたのは間違いなく私の生徒手帳であった。
「ぶつかったときに落としたんだろう、あの時はあわてていたから気づかなかったんだろうが。まあいい、一年生の教室までいく手間が省けた」
「そうでしたか、ありがとうございます」
この人に社交辞令のお礼を告げるのは二度目だな、なんて考えながらありがとうとだけ伝えておく。にしてもぶつかったとか余計なこと言わなくていいから、お姉さま方の視線がもっと恐ろしいことになっているのですよ副会長、気づいてよ、だからいつまでたってもきみは副会長なんだよウワアアン。
「なんだ、お前等、知り合いか?」
嗚呼、もう本当、嫌になっちゃうな。
会長様まで乱入ですか、さらに視線が痛いですよ。
お気に入り登録が!お気に入り登録が!ともう地面にゴロゴロしながら悶えております。
呼んでくださってる方、本当にありがとうございます。