第32話〘S級ギルド団からの相談――四人に合わせた新たな武器〙
いつも本作をお読みいただき、ありがとうございます。
ヴァランへ完成した【雷帝虎徹剣】を無事に引き渡し、新たな依頼を受けることになったサイジョウ。
『ディルサイドウ』での日々も順調に進む中、この日もサイジョウはいつものように店で客を迎えていました。
そんな『ディルサイドウ』へ、新たな来客が訪れます。
今回、その来客とのやり取りからどのような展開を迎えるのか。
今回も最後までお楽しみいただけましたら幸いです。
翌日――。
『ディルサイドウ』は、この日も朝から多くの客で賑わっていた。
店の売り上げは順調で、カルロゼ達四人が店に並べる商品の製作を進める一方、サイジョウは店に立ち、訪れる客への対応をしていた。
そんな中、店の扉が開き、五人の冒険者が店へ入ってきた。
店へやって来たのは、S級ギルド団【翠黎翼】のヴァラン達だった。
「ヴァランさん。それに皆さんも。今日はどうしたんですか?」
サイジョウが尋ねると、ヴァランが答えた。
「昨日、私から頼んだ武器製作の件でな。四人を連れてきた」
昨日、ヴァランから新たに依頼された【翠黎翼】のメンバー達が使う武器の製作。
その話をするため、ギーゼ、ガルザ、ゼノロド、アヤナギの四人も揃って店を訪れたのであった。
サイジョウは四人の姿を見ながら、以前、ヴァランの長剣に使う鉱石を採掘するために共に行動した時のことを思い返す。
あの時、サイジョウは四人が実際に戦う姿を目にしていた。
だからこそ、どのような武器を作ればいいのか。
まずは本人達から、今使っている武器や戦い方について聞いてみることにした。
サイジョウは最初にギーゼへ視線を向けた。
「まずギーゼさんから、どういう武器にしたいかお聞きしたいです」
サイジョウがそう尋ねると、ギーゼは少し考えてから答えた。
「そうだな……敵の気配には気づけるんだが、攻撃されると判断が遅くなって、防ぐことが多い感じかな」
「気配には気づけているんですね?」
「ああ。ただ、そこから攻撃を判断するまでが遅くてな。結局、双剣で防ぐことがほとんどだ」
ギーゼの話を聞きながら、サイジョウは以前見た彼の戦い方を思い返していた。
双剣を使った素早い動きと連撃。
さらにギーゼは、斥候や罠の解除も担当している。
気配を察知することはできている。
それなら、その長所を活かしながら、敵の攻撃を受け止めるのではなく、回避へ繋げやすい双剣にできないだろうか。
サイジョウの中に、一つの武器のイメージが浮かんだ。
「ギーゼさん。それなら、敵の攻撃を防ぐための双剣ではなく、攻撃を見切って避けやすくする双剣はどうでしょう?」
「避けやすくする双剣?」
「はい。今より軽くて取り回しやすくして、気づいた攻撃に対してすぐ動けるようにするんです。攻撃を受け止めるのではなく回避して、その直後にできた隙へ双剣の連撃を入れる」
敵の攻撃を受け止めるのではなく、見切って回避する。
そして回避によって生まれた隙を、そのまま攻撃へ繋げる。
ギーゼが持つ気配察知と素早さ、そして双剣による連撃。
それらを活かしながら、防ぐことの多かった戦い方を、回避から攻撃へ繋げる戦い方へ変える。
それが、サイジョウが考えたギーゼの新しい双剣だった。
続いて、サイジョウはガルザへ視線を向けた。
「次はガルザさんですね。今使っている大剣で、何か気になっていることはありますか?」
ガルザは少し考えてから、自分が使っている大剣へ視線を向けた。
「俺はやはり、大剣が重いことだな。一撃に集中すると、どうしても隙ができてしまう」
「攻撃したあとの隙ですか?」
「ああ。だが、大剣を使う以上、こればかりはどうしようもないと思っている。だから新しい大剣には、今より鋭さと威力が欲しい」
ガルザの話を聞いたサイジョウは、以前見た彼の戦い方を思い返していた。
大剣による強烈な一撃。
その威力は高く、実際に【スラッシュブラスト】でサイレントバーグルの右翼を切断している。
しかし、その一撃の威力をさらに高めるだけで、本当にいいのだろうか。
(大剣だから重い。一撃が強い代わりに、そのあとに隙ができる……)
ガルザ自身は、それを大剣を使う以上は仕方のないことだと考えている。
だが、サイジョウは別の方向から考えていた。
(だったら、大剣でも素早く動かせるようにすれば、攻撃したあとの隙も減らせるんじゃないか?)
「ガルザさん。鋭さと威力を上げるだけじゃなく、大剣そのものを今より素早く扱えるようにするのはどうでしょう?」
「大剣を素早く?」
「はい。それに、耐久性と強度も高くします」
サイジョウの中で、新しい大剣のイメージが形になっていく。
「素早く扱えるようになれば、攻撃したあともすぐに次の動きへ移れます。それに敵から攻撃された時は、ただ受け止めるんじゃなく、大剣を合わせて弾くんです」
「弾くのか?」
「はい。相手の攻撃を弾いて体勢を崩せば、今度はこちらから攻撃する隙を作れます」
自分が攻撃したあとに生まれる隙は、大剣の取り回しを良くすることで減らす。
そして敵から攻撃された時には、その攻撃を大剣で弾き、相手の体勢を崩すことで新たな攻撃の機会を作る。
そのためには高い威力と鋭さだけでなく、敵の攻撃を弾けるだけの耐久性と強度、そして大剣でありながら素早く扱える取り回しの良さが必要になる。
「大剣だから重くて隙ができるのが当然なら、その隙そのものを減らせる大剣にすればいいと思うんです」
高い威力と鋭さを持ちながら、敵の攻撃を弾ける強度と耐久性を備え、さらに素早く取り回すことができる。
それが、ガルザの話を聞いたサイジョウが考えた新しい大剣だった。
続いて、サイジョウはゼノロドへ視線を向けた。
「ゼノロドさんは、今使っている槍で気になっていることはありますか?」
ゼノロドは少し考えてから答えた。
「私は攻撃したあと、次の動作へ移るまで僅かに遅れることがある。それに、時々だが無駄な動きや隙ができることもあるんだ」
「次の攻撃へ移るまでの動きですか?」
「ああ。私は槍の間合いを保ちながら戦っているんだが、攻撃したあとに槍を引いたり、構え直したりする。その僅かな動きが、時々隙になってしまうんだ」
ゼノロドの話を聞きながら、サイジョウは以前見た彼の戦い方を思い返していた。
槍の長い間合いを活かした攻撃。
そして【虚空一閃】による鋭い一撃。
(攻撃したあとに槍を引いて、また構え直してから次の攻撃へ移る……)
そこでサイジョウは考えた。
本当に、一度攻撃するたびに構え直す必要があるのだろうか。
槍を突いたあとに引く。
その動きさえ、次の攻撃へ利用できるのではないか。
「ゼノロドさん。それなら、一つ一つの攻撃を別々に考えない槍にしてみるのはどうでしょう?」
「別々に考えない?」
「はい。突いたあとに槍を引く動きも、そのまま次の攻撃へ繋げるんです」
突く。
引く。
払う。
再び突く。
連撃から、そのまま次の技へ繋げる。
一つの技を使うたびに動きを止めて構え直すのではなく、すべての動作を次の攻撃へ繋げていく。
「技を出したあとに連撃を入れて、その動きからさらに次の技へ繋げる。できるだけ無駄な動きと隙をなくして、攻撃そのものを途切れさせないんです」
サイジョウの頭の中には、槍を振るうゼノロドの姿が浮かんでいた。
槍の間合いと貫通力を活かしながら、突き、払い、連撃、そして次の技へと流れるように繋いでいく。
まるで槍と共に舞うように――。
「槍の間合いを活かしながら、止まらずに攻撃を繋げられる武器にしたいと思っています」
攻撃するための動きと、次の攻撃を準備するための動きを分けない。
すべての動作を次の攻撃へ繋げることで、無駄と隙を極力なくしていく。
それが、ゼノロドの悩みを聞いたサイジョウが考えた新しい槍だった。
最後に、サイジョウはアヤナギへ視線を向けた。
「アヤナギさんは、魔法を使っていて何か困っていることはありますか?」
アヤナギは少し考えてから答えた。
「そうね……やっぱり詠唱に時間がかかることかしら」
「詠唱ですか?」
「ええ。戦闘中に詠唱していると、その間に狙われることもあるから、私は戦闘が始まったら早めに詠唱を始めるようにしているの」
アヤナギは続ける。
「でも、一つの魔法を発動したら、次の魔法を使うためにまた詠唱しないといけないでしょう? 回復が必要になったり、仲間を守る必要が出てきたりしても、すぐに次の魔法を使えないことがあるのよ」
アヤナギの話を聞きながら、サイジョウは以前の戦闘を思い返していた。
あの時もアヤナギは【パラライズプロテクガード】を使い、状態異常への対策をしながらサイジョウを守っていた。
(詠唱している時間そのものが隙になる。それなら……)
サイジョウは一つの考えに辿り着いた。
「アヤナギさん。それなら、詠唱をしなくても魔法を使える杖にするのはどうでしょう?」
「詠唱をしないで?」
「はい。無詠唱で魔法を発動できれば、一つの魔法を使ったあと、次の魔法へ移るまでの時間も減らせると思います」
だが、サイジョウが考えているのは、それだけではなかった。
「それと、一つずつ魔法を使うだけじゃなくて、複数の魔法を同時に扱えるようにしたいです」
「複数の魔法を同時に?」
「はい。魔法だけじゃなく、回復や仲間への強化もです。それに、防御系の魔法なら複数の障壁を展開できるようにする」
一人の仲間を回復しながら、同時に別の仲間を強化する。
さらに敵の攻撃に対して複数の障壁を展開し、複数の状態異常が発生した場合にも、一つずつ対処するのではなく、同時に対応できるようにする。
「状態異常についても、一つずつ対処するんじゃなくて、複数の状態異常に対応できるような形にしたいと思っています」
詠唱という時間に縛られず、戦況に応じて必要な魔法をすぐに使う。
そして回復、強化、防御、状態異常への対応を、状況に合わせて同時に行う。
それが、アヤナギの悩みを聞いたサイジョウが考えた新しい杖だった。
四人との話を終えたことで、それぞれが使う新しい武器の方向性も決まった。
すると、ヴァランがサイジョウへ声をかけた。
「必要な素材については、こちらで手配しよう。決まったら私に教えてほしい」
「分かりました。必要な素材が決まったらお伝えします」
サイジョウへそう伝えたヴァラン達は、そのまま『ディルサイドウ』をあとにした。
こうしてサイジョウは、ギーゼ、ガルザ、ゼノロド、アヤナギの四人から武器製作についての意見を聞き終え、それぞれの戦い方に合わせた新たなオーダーメイド武器の製作依頼を受けたのであった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、【翠黎翼】のギーゼ、ガルザ、ゼノロド、アヤナギから、それぞれが現在の武器や戦い方について話を聞き、サイジョウが四人に合わせた新たな武器を考えるお話となりました。
四人との話を終え、それぞれが使う新しい武器の方向性も決まり、新たなオーダーメイド武器の製作依頼を受けたサイジョウ。
次回の更新は未定となっております。
しばらくはメイン作品の執筆に集中する予定ですが、本作も少しずつ進めていきたいと思っております。
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これからも『異世界で念願の店を開く転生者』をよろしくお願いいたします。




