第31話〘ヴァランへの剣の引き渡し――S級ギルド団からの新たな依頼〙
いつも本作をお読みいただき、ありがとうございます。
ナルバスから新たな依頼を受け、その製作を進めていたサイジョウ。
依頼された品の製作も順調に進み、『ディルサイドウ』での日々も少しずつ変化を見せ始めています。
今回は、そんなサイジョウのもとを訪れる人物とのやり取りを中心に、物語が進んでいきます。
今回も最後までお楽しみいただけましたら幸いです。
翌日――。
サイジョウは朝から『ディルサイドウ』の製作場にいた。
ナルバスから依頼されたポーション二十個と魔力ポーション五個は、すでに完成している。
残っている依頼品は、短剣十本。
サイジョウは必要な素材と製作道具を準備すると、一つ目の短剣の製作に取りかかった。
鍛え、形を整え、刃を仕上げていく。
一本が完成しても手を止めることなく、サイジョウは次の短剣へと取りかかる。
そうして製作を続け――。
数時間後。
作業台の上には、完成した十本の短剣が並んでいた。
「これで十本……依頼された品は全部完成したな」
サイジョウは完成した短剣を一本ずつ確認してから、マジックボックスへ収納した。
これでナルバスから頼まれていた品は、すべて完成したことになる。
しかし――。
サイジョウの中には、一つだけ気になることが残っていた。
それは、依頼主であるナルバスのことだった。
王都から正式な認定を受けている大商団『バルヴェル』の商団長。
ナルバス自身も約束を守ると言っていた。
それでも、サイジョウは完全に信用することができずにいた。
特に今回は、自分が製作した短剣を十本も渡すことになる。
前の世界で仕事をしていた頃の経験もあり、商売をする人間だからという理由だけで、すぐに相手を信用することはできなかった。
そんなことを考えていると――。
製作場の扉が開いた。
「サイジョウ様」
ベルティだった。
「どうしました?」
「ヴァラン様がいらっしゃっています」
「ヴァランさんが?」
その言葉を聞き、サイジョウはすぐに製作場を出て店へ向かった。
店へ入ると、そこにはヴァランの姿があった。
「ヴァランさん。来てくれたんですね」
「ええ。ナルバスさんから、サイジョウさんが私に話があると聞きまして」
ナルバスに頼んでいた伝言が、きちんとヴァランへ届いていたようだった。
サイジョウはヴァランと話をするため、店の奥にある部屋へと案内した。
二人は席につくと、サイジョウはナルバスから受けた依頼について話し始めた。
ポーション二十個。
魔力ポーション五個。
そして短剣十本。
サイジョウは少し表情を引き締めた。
「ヴァランさん。一つ聞きたいことがあります」
「なんでしょう?」
「ナルバスさんのことです」
ヴァランは静かにサイジョウの言葉を待つ。
「ナルバスさんから依頼を受けましたが……私は、まだあの人のことをよく知りません」
サイジョウは正直に自分が感じていることを話した。
「ヴァランさんは、ナルバスさんのことを信用していますか?」
その問いに、ヴァランは迷うことなく答えた。
「ええ。ナルバスさんなら信用して問題ありません」
「そうなんですか?」
「ナルバスさんが率いている『バルヴェル』は、表向きは王都から正式に認められた大商団です」
そこまでは、サイジョウもナルバス本人から聞いている。
しかし――。
続いてヴァランが口にした言葉に、サイジョウは目を見開いた。
「ですが、実際は国王陛下の専属商団なのです」
「……王様の専属商団なんですか?」
サイジョウは思わず聞き返した。
ナルバスが率いる『バルヴェル』が大きな商団だということは分かっていた。
しかし、その商団が国王の専属商団だとは思ってもいなかった。
「ええ。ですから、ナルバスさんについては私が保証します」
ヴァランから『バルヴェル』について聞いたサイジョウは、驚きながらも安心していた。
「そうだったんですね。ヴァランさんから話を聞けて安心しました」
「ええ。ナルバスさんであれば、信用して問題ないでしょう」
「ありがとうございます」
サイジョウはそう答えると、ナルバスに対して抱いていた不安をようやく解くことができた。
そして――。
サイジョウは、もう一つヴァランに伝えることがあった。
「それとヴァランさん。以前依頼されていた剣ですが、完成しています」
「本当ですか?」
「はい。少し待ってください」
サイジョウはマジックボックスから、完成した一本の長剣を取り出した。
ヴァランのために製作した――【雷帝虎徹剣】。
サイジョウは取り出した【雷帝虎徹剣】をヴァランへ差し出した。
「こちらが、ヴァランさんから依頼されていた剣です」
ヴァランは差し出された剣を受け取った。
「ヴァランさん。その剣の名前は【雷帝虎徹剣】です」
「【雷帝虎徹剣】……」
「はい。性能についても説明しますね」
サイジョウは【雷帝虎徹剣】について、一つずつ説明していく。
「レア度は★6。攻撃力は400、耐久値は6000です。そして【雷斬刃】と【雷抜刀】、さらに奥義として【雷帝斬鉄剣】が付いています」
ヴァランは途中で口を挟むことなく、サイジョウの説明を静かに聞いていた。
説明を終えると、ヴァランは改めて【雷帝虎徹剣】へ視線を向けた。
そして柄を握り、その感触を確かめる。
「……不思議ですね」
「どうしました?」
「初めて手にした剣のはずなのですが、以前から使っていたような感覚があります」
ヴァランはそう言いながら、もう一度【雷帝虎徹剣】を握り直した。
「手に馴染むというのでしょうか。剣と自分が一体になったような感覚があります」
「そう感じてもらえたなら良かったです」
サイジョウは安心したように答えた。
実際に使うヴァラン本人が、新しく製作した剣を気に入ってくれた。
それは製作者であるサイジョウにとっても嬉しいことだった。
「それでサイジョウさん。この剣はいくらになりますか?」
「今回のオーダーメイドの金額は、45000Gです」
サイジョウが金額を伝えると、ヴァランは迷う様子を見せなかった。
「分かりました。45000Gですね」
ヴァランはその場で45000Gを支払った。
「ありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとうございます。これほど自分に馴染む剣を作っていただけるとは思っていませんでした」
ヴァランはそう答えると、手にした【雷帝虎徹剣】をもう一度見つめた。
その表情からも、完成した新しい剣を気に入っていることがサイジョウにも伝わっていた。
すると、【雷帝虎徹剣】を手にしていたヴァランがサイジョウへ声をかけた。
「サイジョウさん。一つお願いしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「はい。なんでしょう?」
「実は、私だけではなく【翠黎翼】のメンバー達の武器も、オーダーメイドで製作していただけないでしょうか?」
「皆さんの武器もですか?」
「ええ。今回、この剣を実際に手にして、ぜひサイジョウさんにお願いしたいと思いまして」
ヴァランから新たな依頼を受け、サイジョウは少し驚いていた。
以前、鉱石の採掘へ向かった際に同行した【翠黎翼】のメンバー達。
ギーゼ、ガルザ、ゼノロド、アヤナギ。
今度は、その四人が使う武器を製作してほしいという依頼だった。
「必要になる素材については、こちらで手配します。サイジョウさんに必要な素材を教えていただければ、私達で用意しましょう」
「素材まで用意していただけるんですか?」
「ええ。製作をお願いする以上、必要な素材まで全てサイジョウさんに任せるつもりはありません」
サイジョウはヴァランの言葉を聞きながら考える。
【楓鳳凰】のミューラとレイアから始まったオーダーメイド製作。
そして今回は、S級ギルド団【翠黎翼】のヴァランに続き、その仲間達の武器まで任されることになった。
「分かりました。皆さんの武器も製作します」
「ありがとうございます、サイジョウさん」
こうしてサイジョウは、【楓鳳凰】に続いて【翠黎翼】からも、本格的にオーダーメイドの製作依頼を受けることになった。
二つのギルド団から、それぞれの仲間が使う武器の製作を任される。
サイジョウの店『ディルサイドウ』に、新たなオーダーメイド依頼が加わった。
話がまとまったところで、サイジョウはヴァランにもう一つお願いがあることを思い出した。
「ヴァランさん。もう一つお願いしてもよろしいでしょうか?」
「ええ、なんでしょう?」
「ナルバスさんに、依頼された品の受け取りは四日後に来てくださいと伝えてもらえますか?」
「分かりました。ナルバスさんに伝えておきましょう」
「ありがとうございます」
ヴァランからナルバスについて話を聞き、サイジョウが抱いていた不安もなくなった。
さらに、完成した【雷帝虎徹剣】をヴァランへ無事に渡すことができ、新たに【翠黎翼】のメンバー達が使う武器の製作も任されることになった。
【楓鳳凰】に続き、S級ギルド団【翠黎翼】からもオーダーメイドの依頼を受けることになったサイジョウ。
少しずつ増えていく依頼と、自分が製作した武器を必要としてくれる冒険者達。
こうして『ディルサイドウ』は、アイテムや武器、防具を販売する店としてだけではなく、冒険者一人一人に合わせた武器を製作する店としても、少しずつその歩みを進めていくのであった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、ヴァランからナルバスと大商団『バルヴェル』について話を聞き、サイジョウが抱いていた不安が解消されるお話となりました。
そして、完成した【雷帝虎徹剣】も無事にヴァランの手へ渡り、新たに【翠黎翼】のメンバー達が使う武器のオーダーメイドも任されることになりました。
本作も少しずつ進めていきたいと思っております。
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これからも『異世界で念願の店を開く転生者』をよろしくお願いいたします。




