第22話〘新たな提案――二人へ完成した弓と杖〙
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、【楓鳳凰】から新たな提案を受けるサイジョウ。そして、完成した弓と杖をミューラとレイアへ引き渡します。
開店まであと二日。少しずつ夢の店へ近づいていくサイジョウたちの物語を、今回も楽しんでいただければ幸いです。
翌日――。
サイジョウは朝から、開店を目前に控えた店内で準備を進めていた。
昨日、ポーションの製作を見せたあと、サイジョウはベルティとウルティに、アイテム製作で使用する機材の使い方を一通り見せていた。
二人が製作工程の途中で分からないところがあれば、その都度サイジョウが機材の使い方や、その先の工程を実際に見せながら教えていった。
二人も一つずつ確認しながら、これまで知らなかった製作方法を学んでいった。
そして今日――。
サイジョウは店内に並べられた商品を一つずつ確認していた。
「開店まであと二日か。アイテムも武器も防具も、これで大丈夫そうだな」
店内を見渡しながら、サイジョウは小さく笑みを浮かべる。
「現世では喫茶店を開くはずだったけど……異世界では違う店になった。それでも、自分の店を開けるのは嬉しいな」
現世では叶えることのできなかった、自分の店を持つという夢。
形こそ思い描いていた喫茶店とは違うものになったが、その夢があと少しで叶おうとしている。
そんなことを考えていると――。
「サイジョウ、おはよう」
店の入口から声が聞こえた。
「エルフィギルド長?」
振り返ったサイジョウは、さらに驚く。
エルフィギルド長だけではない。
その後ろには、ナルガス、ボランダ、レイア、ミューラ。
【楓鳳凰】の四人も一緒にいた。
「エルフィギルド長、【楓鳳凰】のみなさん、どうされたんですか?」
「私はサイジョウの店の開店前の確認に来ただけよ。【楓鳳凰】のみんながサイジョウに用があるというから、一緒に連れてきたの」
「そうだったんですね」
サイジョウはナルガスへ顔を向ける。
「ナルガスさん、私に用というのは何でしょう?」
「実は相談があるんだ、サイジョウ。俺たち四人で決めたことなんだけどな」
「相談ですか?」
すると、レイアが話し始める。
「ボランダに黒鉄盾を渡したあと、私たち、冒険者ギルドの緊急討伐依頼を受けたでしょう?」
「はい。もしかして、製作した盾に何か不具合がありましたか?」
「違う違う。逆よ。あの盾が凄すぎたの」
「凄すぎた?」
サイジョウが首を傾げる。
「緊急討伐依頼の対象が、大型のグラッドキングベアーだったのよ」
レイアの説明では、【楓鳳凰】はグラッドキングベアーを相手に、ボランダが前線で攻撃を防ぎながら戦うつもりだったという。
しかし――。
「あいつの攻撃を俺が黒鉄盾で受けたんだ」
ボランダが続ける。
「そうしたら、攻撃を弾き返したんだよ」
「弾き返したんですか?」
「ああ。俺も驚いた」
大型のグラッドキングベアーが放った攻撃を【黒鉄盾】が受け止め、そのまま弾き返した。
その反動でグラッドキングベアーが体勢を崩したところへ、【楓鳳凰】の四人が一気に攻撃を仕掛けたという。
するとナルガスが腰にある短剣へ手を添えた。
「最後は、サイジョウから買ったこの短剣で俺がトドメを刺したんだ」
「あの短剣で?」
「ああ。大型の魔物が相手だったのに、しっかり刃が通った」
【黒鉄盾】とサイジョウが最初に製作した短剣。
その二つの性能には【楓鳳凰】だけではなく、その場にいた周囲の冒険者たちも驚きを隠せなかったという。
「俺たちも、あそこまでの性能だとは思ってなかった」
ナルガスはそう言うと、本題へ入った。
「それで相談なんだけど、これから俺たちが依頼で手に入れた素材や鉱石をサイジョウに渡す。その代わり、俺たちの武器や防具を製作してもらえないか?」
「武器と防具を?」
「もちろん、製作してもらった分の代金はちゃんと支払う」
サイジョウは少し考える。
「つまり、オーダーメイドということですか?」
「そういうことだ」
ナルガスの言葉に、ボランダ、レイア、ミューラも頷いた。
サイジョウはエルフィギルド長へ視線を向ける。
「エルフィギルド長、こういう依頼を受けても問題ないんですか?」
「ええ。双方が納得しているなら問題ないわ」
「分かりました」
サイジョウは改めて四人を見る。
「それなら、引き受けます」
「本当か?」
「はい。素材や鉱石を持ってきてもらえれば、それを確認してから一緒に考えましょう」
「助かるよ、サイジョウ」
こうしてサイジョウは、【楓鳳凰】から新たなオーダーメイドの依頼を受けることになった。
するとサイジョウは、あることを思い出す。
「そうだ。ミューラさん、レイアさん」
「何?」
「二人から頼まれていた武器、完成していますよ」
「本当に?」
「はい。ちょっと待ってください」
サイジョウはマジックボックスを開く。
そこから取り出したのは、ミューラのために製作した【エアーアルヴァ弓】。
そしてレイアのために製作した【アースワトロ杖】だった。
「こちらがミューラさんの弓です」
「これが……私の弓」
ミューラは【エアーアルヴァ弓】を受け取る。
「そして、こちらがレイアさんの杖です」
「ありがとう、サイジョウ」
レイアも【アースワトロ杖】を受け取った。
その様子を見ていたエルフィギルド長が、二つの武器へ視線を向ける。
そして少し驚いたような表情を浮かべた。
「サイジョウ。この二つ……カルロゼとザキヴァルも製作に加わったの?」
「え?」
サイジョウは驚いてエルフィギルド長を見る。
「分かるんですか?」
「これでも商業ギルド長だからね。色々な職人の製作物を見てきているもの」
「流石ですね」
サイジョウは、普通の素材と鉱石、それに属性結晶鉱石を使用し、カルロゼとザキヴァルの三人で製作したことを説明した。
エルフィギルド長は改めて弓と杖を確認する。
「ミューラ、レイア。この弓と杖は、希少な武器と言っていいわ」
「そんなに凄い武器なんですか?」
ミューラが驚いたように尋ねる。
「ええ。二人に合わせて製作された、本当の意味でのオーダーメイド武器ね。それに、どちらにも付与がある」
エルフィギルド長の言葉に、二人は自分たちの武器を見る。
「付与まで……」
「二人の戦い方次第では、実戦でも上手く連携できると思うわ」
「ミューラさんの弓には、【エアーアロー】という付与が付いています」
「エアーアロー?」
「はい。矢に風属性の力を付与して、貫通力を高めるみたいです」
サイジョウは続けて、レイアの杖についても説明する。
「レイアさんの杖には【アースロックウォール】という付与があります」
「どんな付与なの?」
「土属性以外の魔法を敵に当てたあと、任意で発動すると、その敵を土属性の力で一定時間拘束できるみたいです」
「なるほどね」
レイアは杖を見ながら頷く。
ミューラも弓を手に取り、嬉しそうに眺めていた。
「サイジョウ、ありがとうね。この杖でもっと強くなって、みんなを支えられるようにするわ」
「私も、この弓でみんなを守りながら戦うわ」
「二人とも、使ってもらえたら嬉しいです」
ミューラとレイアは、それぞれ受け取った弓と杖を嬉しそうに見つめていた。
その様子を見たサイジョウも、二人のために製作して良かったと満足そうに笑みを浮かべる。
こうして二人へ完成した武器を無事に引き渡したサイジョウ。
念願だった自分の店の開店の日も、すぐそこまで迫っていた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は【楓鳳凰】から新たな提案を受け、ミューラとレイアへ完成した弓と杖を渡すことができました。
次回は、いよいよ開店まであとわずか。
サイジョウは念願だった自分の店の開店へ向けて準備を進めていきます。
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今後とも『異世界で念願の店を開く転生者』をよろしくお願いいたします。




