第21話〘街と共に歩む店作り――二人が知る製作機材の工程〙
いつも『異世界で念願の店を開く転生者』をお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、オーダーメイド武器の製作を終えたサイジョウが、開店へ向けて商品の数を確認していきます。
そんな中、ベルティとウルティから商品の数について提案を受けたサイジョウは、自分の店だけではなく、街全体が賑わってほしいという考えを二人へ伝えます。
そして二人は、これまで使い方を知らなかった製作機材を使い、サイジョウがポーションを製作する工程を初めて目にすることになります。
それでは、第21話をお楽しみください。
ミューラの【エアーアルヴァ弓】とレイアの【アースワトロ杖】を完成させたサイジョウは、次に店で販売する商品の種類と個数を確認していた。
「ポーションが五個……解毒ポーションも五個……」
開店までに足りない物がないか、一つずつ確認していく。
すると――。
「サイジョウさん」
声を掛けられ、サイジョウが振り返る。
そこにはベルティとウルティが立っていた。
「ベルティさん、ウルティさん」
「店内の準備なら、私たちがやりますよ」
ベルティの言葉に、ウルティも頷く。
「私たちもこの店でお手伝いすることになったんですから、任せてください」
「ありがとうございます。それじゃ、お願いします」
サイジョウが二人に店内の準備を任せようとすると、ウルティが棚に並んでいるアイテムへ視線を向けた。
「でも、サイジョウさん。一つ気になることがあるんです」
「何ですか?」
「アイテムの数です。一種類につき五個では少なくありませんか?」
「少ないですか?」
「はい。もう少し増やした方がいいと思います」
しかし、サイジョウは首を横へ振った。
「これ以上は増やさないつもりです」
「増やさないんですか?」
「はい。開店に向けて商品を並べながら色々考えていたんですけど、アイテムは一種類につき五個。武器と防具は一種類につき三個くらいにしようと思っています」
開店準備を始めた頃は、武器や防具もそれぞれ五個ずつ用意していた。
しかし実際に店内へ商品を並べ、全体を見ながら準備を進めていくうちに、サイジョウの考えも少しずつ変わっていた。
ベルティとウルティが不思議そうな表情を浮かべる。
「それだと、すぐに売り切れてしまうかもしれませんよ?」
「それでもいいんです」
サイジョウは店内の商品を見ながら続ける。
「俺は、自分の店だけが繁盛すればいいとは思っていませんから」
「自分の店だけが?」
「はい。この街には、他にもアイテム屋や武器屋、防具屋がありますよね」
二人が頷く。
「俺の店に大量の商品を置いたら、他の店へ行く人が減ってしまうかもしれません」
サイジョウは、自分の店だけで売り上げを独占したいとは考えていなかった。
「ここで買えなかった物があれば、他の店にも行ってほしいんです」
「他のお店にも……」
「はい。俺の店だけじゃなくて、この街にある色々な店にお客さんが来て、街全体が賑わってくれた方が嬉しいですから」
「なるほど……」
ベルティとウルティは、サイジョウが商品の数を少なくしている理由を理解した。
するとサイジョウは二人へ声を掛ける。
「そうだ。二人とも、一緒に来てもらえますか?」
「どこへですか?」
「製作場所です」
サイジョウはベルティとウルティを連れ、店の奥にある製作場所へ向かった。
ここへ来るのは、二人にとって初めてではない。
以前エルフィと一緒に訪れた時、二人は自分たちが普段使用している物とは違う製作機材を見て驚いていた。
「今日は二人に、俺がアイテムを製作するところを見てもらおうと思って」
「サイジョウさんの製作をですか?」
「はい。前に説明するのは難しいって言いましたけど、実際に見てもらった方が分かりやすいと思うので」
「分かりました」
「私も見てみたいです」
サイジョウはマジックボックスから薬草を取り出す。
「それじゃ、ポーションを作りますね」
必要な物を準備し、製作を始める。
まずサイジョウは薬草の状態を一つずつ確認した。
そして傷んでいる部分を丁寧に取り除いていく。
しかし、取り除いた部分を捨てることはなかった。
「それは捨てないんですか?」
ベルティが尋ねる。
「はい。傷んでいる部分も、使えるところは粉末にして保存しておくんです」
サイジョウは取り除いた部分を分けて置く。
あとで乾燥させて細かく粉末にし、別の用途に使えるよう保存しておくためだった。
「傷んでいるからって、全部捨てるわけじゃないんですね」
「使える物なら、無駄にしたくないですから」
薬草の状態を確認し終えると、使用する部分を製作用の器へ入れる。
そして薬草を細かくすり潰しながら、少しずつ液状になるまで混ぜ合わせていく。
ベルティとウルティは、その工程を真剣に見ていた。
十分にすり潰したところで――。
「次は錬金です」
【錬金】
淡い光が器を包み込む。
サイジョウは薬草に含まれている回復成分だけを抽出していく。
やがて光が消えると、器の中には薄い緑色をした液体が出来上がっていた。
「これを小瓶に入れます」
完成した液体を六本の小瓶へ均等に注いでいく。
最後の一本へ注ぎ終えると――。
「完成です」
ベルティとウルティは、出来上がったポーションを見つめる。
「あの機材って、こんなふうに使うんですね……」
「私たちの製作方法とは違う……」
ベルティとウルティは驚きを隠せない様子で、完成したポーションを見つめていた。
サイジョウが製作機材を実際に使い、ポーションを完成させるところを見るのは、二人にとってこれが初めてだった。
「一応、鑑定しておきますね」
サイジョウは完成したポーションへ【鑑定】を発動する。
【ポーション】
レア度:★3
効果:HP50%回復
「HPを五十パーセント回復するポーションですね」
「……五十パーセント?」
ベルティとウルティの表情が変わった。
「私たちが製作しているポーションより回復量が高い……」
二人はアイテム製作を専門としているからこそ、その違いが分かる。
しかし、二人が見ていたのは、完成したポーションだけではなかった。
薬草の状態を確認する。
傷んでいる部分を丁寧に取り除き、使える部分は粉末にするため残しておく。
細かくすり潰す。
液状になるまで混ぜ合わせる。
そして【錬金】によって回復成分を抽出し、最後に小瓶へ注ぐ。
サイジョウは一つひとつの工程を急ぐことなく、丁寧に進めていた。
ウルティは、その製作工程を思い返しながら口を開く。
「……私、さっきもっと数を増やした方がいいって言いましたけど」
「はい」
「実際に製作するところを見て、少し分かった気がします」
ウルティは完成したポーションを見る。
「これだけ一つひとつの工程を丁寧に進めるから、これだけのポーションが出来るんですね」
ベルティも頷く。
二人はこれまで、より多くの商品を製作し、販売することを考えてきた。
しかしサイジョウは、数や利益だけを考えているわけではない。
必要以上に商品を増やさず、製作する時も一つひとつの工程を丁寧に進めている。
するとベルティが、小さく呟いた。
「……やっと分かった」
「何がですか?」
「エルフィギルド長が、私たちをサイジョウさんのところへ行かせた理由です」
以前、エルフィは二人へ、この場所での仕事はいい経験になると言っていた。
その意味を、ベルティとウルティはようやく理解した。
自分たちが知らない製作機材。
これまでとは違う製作方法。
そして、商品をただ多く作るのではなく、一つひとつ丁寧に製作するサイジョウの考え方。
「私たちも、ここで色々勉強させてください」
「もちろんです。俺も二人から教えてもらいたいことがありますから」
「はい」
「よろしくお願いします」
サイジョウは二人へ笑みを浮かべた。
ベルティとウルティにとって、この店での仕事は、ただ商品の製作を手伝うだけではない。
自分たちが知らなかった製作方法や、これまでとは違う考え方を学ぶ場所でもあった。
こうしてベルティとウルティは、サイジョウのポーション製作を初めて目の前で見たことで、自分たちとは違う製作方法と、一つひとつの商品を丁寧に製作することの大切さを知るのであった。
いつも『異世界で念願の店を開く転生者』をお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、開店へ向けた商品の数を確認する中で、サイジョウが自分の店だけではなく、街全体が賑わってほしいという思いをベルティとウルティへ伝えました。
そして、サイジョウのポーション製作を初めて目の前で見た二人は、自分たちとは違う製作方法と、一つひとつの工程を丁寧に進めることの大切さを知ることになりました。
次回は、いよいよ開店へ向けた準備がさらに進んでいきます。
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次回もよろしくお願いいたします。




