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異世界で念願の店を開く転生者  作者: うさだデジ子
第一章『異世界転生』

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第18話〘異なる二つの提案――レイアの杖に選んだ答え〙

いつも読んでいただきありがとうございます。


ミューラの弓に使用する属性を決めたサイジョウ。


続いてレイアの杖について考えていきますが、今度はカルロゼとザキヴァルの意見が二つに分かれることになります。


二人の職人から異なる提案を受けたサイジョウは、どのような答えを選ぶのでしょうか。


今回も最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。

ミューラから依頼されている弓に【風属性結晶鉱石】を使うことが決まり、サイジョウは次にレイアから依頼されている杖について考える。


製作場には【聖霊大樹】と【鋼鉄鉱石】。


そして、残された火、水、土の属性結晶鉱石が並べられていた。


「次は、レイアさんの杖ですね」


サイジョウはそう言うと、アラドの森で素材採取をした時のことを思い出す。


護衛として一緒に行動してくれたレイア。


魔道士であるレイアが、どのように魔法を使っていたのか。


戦闘中の動き。


そして自分が近くで見ていて気付いた癖。


サイジョウは思い出しながら、カルロゼとザキヴァルへ一つずつ話していった。


二人は何も言わず、サイジョウの説明を聞いている。


そして――。


「レイアさんは火属性魔法をメインに使っています」


サイジョウが最後にそう伝えると、カルロゼとザキヴァルは目の前に並べられている属性結晶鉱石を見る。


ミューラの時は、二人とも風属性という同じ意見だった。


しかし今回は――。


「私は水属性がいいと思います」


先に答えたのはカルロゼだった。


するとザキヴァルは少し考えたあと、別の属性結晶鉱石へ視線を向ける。


「私は土属性を提案します」


「今度は意見が分かれましたね」


サイジョウは水属性と土属性、二つの結晶鉱石を見る。


ミューラの弓では、理由こそ違っていたものの、二人とも風属性を選んだ。


しかしレイアの杖では、カルロゼは水。


ザキヴァルは土。


二人の意見が初めて分かれた。


「二人がその属性を選んだ理由を聞いてもいいですか?」


「もちろんです」


まずカルロゼが説明を始める。


「レイア様は火属性魔法を中心に使われるのでしょう?」


「はい」


「それでしたら、私は水属性がいいと思います」


「水属性ですか」


「はい」


カルロゼは水属性の結晶鉱石へ視線を向けた。


そして、どこか懐かしそうな表情を浮かべる。


「以前、クラウディル様と一緒に杖を製作したことがありましてな」


「父上と?」


「はい」


父クラウディルの名前が出たことで、サイジョウはカルロゼの話を聞く。


「その時に製作した杖には、使用者が攻撃された際、自分の周囲へ水属性の防御を発動する付与が備わっていました」


「水属性の防御……」


「ええ。攻撃を受けた際に水属性の力が使用者の周囲へ展開され、身を守るための付与です」


「そんな杖も作っていたんですね」


「クラウディル様と何度も試しながら製作した物でした」


カルロゼは昔のことを思い出しているようだった。


サイジョウにとっては、直接知ることのできない父クラウディルの過去。


しかしカルロゼとザキヴァルは、かつてクラウディルと一緒に数多くの物を製作している。


その経験から、今回の杖にも水属性がいいと考えたらしい。


「今回も同じ付与が発現するとは限りません」


「そうなんですか?」


「はい。使用する素材も違いますし、製作する者によって完成した物の性能も変わりますからな」


「なるほど……」


「ですが、もし似たような付与が発現すれば、レイア様自身は火属性魔法で攻撃しながら、水属性の力で身を守ることができます」


サイジョウはカルロゼの説明を聞きながら頷く。


火属性による攻撃。


そして水属性による防御。


自分が攻撃を受けた時に、水属性の防御が発動する。


確かに魔道士であるレイアにとって、身を守る手段が増えるのは大きい。


「なるほど。だから水属性なんですね」


「はい。それが私が水属性を提案した理由です」


カルロゼの説明を聞き終えると、サイジョウは今度はザキヴァルを見る。


「ザキヴァルさんは、どうして土属性なんですか?」


「私の考えは、カルロゼとは少し違います」


ザキヴァルは土属性の結晶鉱石へ視線を向ける。


「レイア様が火属性魔法を中心に使われるのであれば、私は土属性の付与がいいと考えました」


「土属性の付与……」


「はい。私も以前、クラウディル様と共に製作した物を思い出しましてな」


「ザキヴァルさんも父上と?」


「ええ」


ザキヴァルも懐かしそうな表情を浮かべる。


「以前製作した物の中に、攻撃が命中した際、土属性の力で相手の動きを封じる付与を持つ物がありました」


「相手の動きを封じるんですか?」


「はい」


ザキヴァルは頷く。


「攻撃が命中した相手を土属性の力でその場に封じ、一定時間身動きを取れなくするものです」


サイジョウは、その効果を頭の中で考える。


もしレイアの魔法が敵へ命中した際に、相手の動きを封じることができれば――。


「相手が動けない間に、次の魔法を使えるってことですか?」


「その通りです」


ザキヴァルは頷いた。


「レイア様が火属性魔法を中心に使うのであれば、相手の動きを封じ、その間に次の火属性魔法を放つことができます」


「なるほど……」


「それだけではありません」


「まだあるんですか?」


「はい。相手が動けないのであれば、その間に周囲の仲間も攻撃しやすくなるでしょう」


その言葉に、サイジョウは少し考える。


確かにレイアは一人で戦っているわけではない。


ナルガス。


ボランダ。


ミューラ。


ギルド団『楓鳳凰』の仲間たちと共に戦っている。


敵の動きを封じることができれば、レイア自身が次の魔法を放つための時間を作れるだけではない。


その間に、ナルガスやボランダ、ミューラも攻撃することができる。


「だから土属性なんですね」


「はい。これが私が土属性を提案した理由です」


サイジョウは二人の説明を聞き終えると、水属性と土属性の結晶鉱石へ視線を向けた。


「水と土か……」


カルロゼが提案した水属性。


攻撃を受けた際、自分の周囲へ水属性の防御を発動する可能性がある。


ザキヴァルが提案した土属性。


攻撃が命中した際、相手の動きを封じる付与が発現する可能性がある。


二人の考え方は違っている。


しかし、サイジョウは二人の話を聞きながら、ある共通点に気付いていた。


どちらも、ただレイアの攻撃を強くするためだけの提案ではない。


レイア自身を守ること。


そして、周囲で一緒に戦う仲間を援護すること。


方法は違っていても、二人ともレイアの戦い方を考えたうえで属性を選んでいた。


サイジョウはしばらく二つの結晶鉱石を見つめる。


カルロゼの水属性もいい。


攻撃を受けた時、自分を守ることができれば、魔道士であるレイアにとって大きな助けになる。


しかし――。


サイジョウはアラドの森で見た『楓鳳凰』の戦いを思い出す。


四人は、それぞれが自分の役割を果たしながら戦っていた。


それなら――。


「……決めました」


サイジョウが顔を上げる。


カルロゼとザキヴァルがサイジョウを見る。


「土にします」


「土属性ですか」


「はい」


サイジョウは土属性の結晶鉱石を手に取った。


「相手の動きを封じることができれば、レイアさんだけじゃなく、ナルガスさんたちも攻撃しやすくなると思うので」


ザキヴァルが頷く。


「私もよろしいと思います」


サイジョウはカルロゼを見る。


「カルロゼさんの水属性の提案も良かったんですが……すみません」


するとカルロゼは、気にする様子もなく笑みを浮かべた。


「謝る必要はありませんよ、サイジョウ様」


「でも……」


「我々はあくまで、自分たちの経験から意見を出しただけです」


カルロゼはそう言うと、サイジョウが持っている土属性の結晶鉱石を見る。


「サイジョウ様ご自身で考えた末に決められたことですから、私に異論はありません」


「ありがとうございます」


サイジョウは改めて二人へ頭を下げた。


これで――。


ミューラの弓には【風属性結晶鉱石】。


レイアの杖には【土属性結晶鉱石】。


二人から依頼されていた武器に使用する属性が決まった。


サイジョウは製作場に並んでいる素材を見る。


【聖霊大樹】。


【鋼鉄鉱石】。


【風属性結晶鉱石】。


そして【土属性結晶鉱石】。


必要な素材が決まった以上、次にすることも決まっている。


実際に二人の武器を製作することだった。


サイジョウは目の前の素材を見たあと、カルロゼとザキヴァルへ顔を向ける。


「カルロゼさん、ザキヴァルさん」


「はい」


「何でしょうか?」


「三人で一緒に製作しましょう」


その言葉に、二人は一瞬サイジョウを見つめた。


カルロゼとザキヴァルは、かつて父クラウディルと共に武器や防具を製作していた職人たち。


昨日からサイジョウの店で製作を手伝うことになったとはいえ、まだ三人で一緒に何かを製作したことはない。


そして今回――。


今度はクラウディルの息子であるサイジョウから、一緒に製作しようと言われた。


カルロゼが嬉しそうに頷く。


「わかりました。サイジョウ様、一緒に製作しましょう」


ザキヴァルも続いて頷いた。


「私もお手伝いいたします」


「ありがとうございます」


サイジョウは二人を見ながら笑みを浮かべる。


「それじゃ、よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いいたします」


「久しぶりの共同製作ですな」


二人の言葉を聞きながら、サイジョウは再び素材へ視線を向ける。


これまで武器や防具を製作する時は、すべて一人だった。


しかし今回は違う。


かつて父クラウディルと共に製作を行っていたカルロゼとザキヴァル。


その二人と共に、今度は自分が武器を製作する。


ミューラのための弓。


そしてレイアのための杖。


二人の戦い方を考え、三人で選んだ素材を使って、どのような武器が完成するのか。


それは、まだ誰にも分からない。


こうしてサイジョウは、カルロゼとザキヴァルと共に、初めてとなる三人での武器製作へ取り掛かるのであった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


今回は、レイアから依頼されていた杖に使用する属性について、カルロゼとザキヴァルからそれぞれ異なる提案が出されました。


水属性による防御を提案したカルロゼと、土属性によって相手の動きを封じることを提案したザキヴァル。


かつてクラウディルと共に製作を行っていた二人の経験を聞いたサイジョウは、自分なりに考えた末、レイアの杖に土属性を選びました。


そして次はいよいよ、サイジョウ、カルロゼ、ザキヴァルの三人による初めての共同製作が始まります。


二人から依頼された弓と杖がどのような武器に完成するのか、次回も楽しみにしていただけたら嬉しいです。


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今後とも『異世界で念願の店を開く転生者』をよろしくお願いいたします。

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