第17話〘依頼された武器製作――二人の職人と選ぶ新たな素材〙
いつも読んでいただきありがとうございます。
念願だった店の開店まで、あと一週間。
今回は以前依頼されていた武器の製作へ向け、サイジョウがカルロゼとザキヴァルに相談しながら、それぞれに合った素材を考えていきます。
二人のベテラン職人から、どのような提案が出てくるのでしょうか。
今回も最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。
翌朝――。
サイジョウの店は、一週間後にオープンすることが決まり、開店へ向けた準備も順調に進んでいた。
そんな中、サイジョウは朝から店の奥にある鍛冶製作場にいた。
しかし、今日は武器を製作しているわけではない。
「うーん……どうしようかな」
サイジョウは製作場に並べられている素材を見ながら、一人考え込んでいた。
考えているのは、以前ギルド団『楓鳳凰』のレイアとミューラから依頼されていた武器についてだった。
レイアからは杖。
そしてミューラからは弓の製作を頼まれている。
二人から依頼を受けてから時間が経っているが、まだ製作には取り掛かっていなかった。
もちろん、忘れていたわけではない。
どのような素材を使って製作すれば二人に合った武器になるのか、それを考えていたのである。
「せっかく二人から直接頼まれた物だからな……」
オーダーメイドとして製作する以上、ただ杖と弓を作ればいいとは思っていない。
アラドの森では、二人が実際に戦っている姿も見ている。
それなら、それぞれの戦い方に合った物を作りたい。
そう考えていた。
そんなサイジョウの姿に気付いた二人が、製作場へ入ってくる。
昨日、エルフィによって紹介され、サイジョウの店で製作を手伝うことになったカルロゼとザキヴァルだった。
「サイジョウ様、何かお悩みですかな?」
声を掛けられ、サイジョウが振り返る。
「あっ、カルロゼさん、ザキヴァルさん」
「先ほどから随分考え込んでおられるようですが」
「実は、以前知り合いから頼まれた武器について考えていたんです」
「武器ですか?」
「はい。杖と弓を一つずつ頼まれていまして」
カルロゼとザキヴァルはサイジョウの話を聞きながら頷く。
「それで、どんな素材を使って製作しようか悩んでいたんです」
「なるほど」
カルロゼは少し考えると、サイジョウへ声を掛けた。
「それでしたら、我々も一緒に考えましょう」
「いいんですか?」
「もちろんです」
ザキヴァルも頷く。
「そのために我々はここへ来たのですから」
「ありがとうございます」
二人の言葉に、サイジョウは笑みを浮かべた。
武器製作を専門としているカルロゼ。
防具製作を専門としているザキヴァル。
二人とも長年製作に携わってきたベテラン職人である。
自分一人で考えるより、二人の意見を聞いた方がいいかもしれない。
そう考えたサイジョウは、マジックボックスの中に入っている素材を確認する。
すると――。
「そういえば……」
一つの素材が目に留まった。
「これなら使えるかな」
サイジョウはマジックボックスから、その素材を取り出した。
それは【聖霊大樹】と呼ばれる特殊な大樹の木材だった。
木材単体でも製作に使用できるが、最大の特徴は、鉱石などの異なる素材との相性が非常に良いこと。
他の素材と組み合わせながら製作することができる、非常に希少な素材だった。
しかし――。
【聖霊大樹】を見た瞬間、カルロゼとザキヴァルの表情が変わった。
「……これは」
「聖霊大樹……」
二人は懐かしそうに【聖霊大樹】を見つめている。
その反応を見たサイジョウは首を傾げた。
「二人とも、この素材を知っているんですか?」
「もちろんです」
カルロゼが答える。
「これは以前、クラウディル様が大切に保管されていた素材です」
「父上が?」
「はい」
ザキヴァルも懐かしそうに【聖霊大樹】へ視線を向ける。
「他の鉱石などとも組み合わせることができる珍しい素材でしてな。クラウディル様も大切にされておりました」
「そうだったんですね」
サイジョウは改めて【聖霊大樹】を見る。
自分にとっては、異世界へ転生する際に神様から与えられた素材の一つ。
しかし、この世界では父クラウディルが残した物ということになっている。
そしてカルロゼとザキヴァルにとっては、昔から知っている懐かしい素材らしい。
「それなら、杖と弓にも使えそうですね」
「ええ。十分使えると思います」
「組み合わせる素材次第では、面白い物が出来上がるかもしれませんな」
「組み合わせる素材か……」
サイジョウは再びマジックボックスを確認する。
そして【鋼鉄鉱石】を取り出した。
さらに――。
赤色。
青色。
緑色。
茶色。
それぞれ異なる色の輝きを放つ四つの結晶鉱石を取り出す。
火属性。
水属性。
風属性。
土属性。
四種類の属性の力を宿した結晶鉱石だった。
どれも異世界へ転生した際に神様から五個ずつ与えられていた物で、今回はその中から一個ずつ取り出している。
「この辺りの素材と組み合わせるのはどうでしょう?」
カルロゼとザキヴァルは、サイジョウが並べた素材を一つずつ確認する。
【聖霊大樹】。
【鋼鉄鉱石】。
そして火、水、風、土の四種類の属性結晶鉱石。
「これだけあれば、いくつか考えられそうですな」
「はい。ただ、どれを使うのが一番いいのか分からなくて」
サイジョウがそう答えると、カルロゼが尋ねる。
「サイジョウ様。その弓を使われる方は、どのような戦い方をされるのですか?」
「ミューラさんですか?」
「はい。オーダーメイドとして製作するのであれば、その方の戦い方も知っておいた方がいいでしょう」
「なるほど」
サイジョウはアラドの森で素材採取をした時のことを思い出す。
護衛として一緒に行動してくれたミューラ。
素材採取だけでなく、ホーンラビットやメタルホーンラビットとの戦闘もあった。
その時、サイジョウはミューラの戦い方を近くで見ていた。
「ミューラさんは弓だけじゃなくて、召喚士でもあるんです」
「弓と召喚ですか」
「はい」
サイジョウは、自分が見ていたミューラの弓の使い方。
戦闘中の動き。
そして戦っている時に気付いていた癖などを、カルロゼとザキヴァルへ一つずつ話していった。
二人は口を挟むことなく、サイジョウの話を聞いている。
そして話を聞き終えると、少し考えた。
先に口を開いたのはカルロゼだった。
「それでしたら、私は風属性がいいと思います」
するとザキヴァルも頷く。
「私も風属性がよろしいかと」
「二人とも風なんですね」
「はい」
同じ答えだったことが気になり、サイジョウは二人へ尋ねる。
「どうして風属性なんですか?」
まずカルロゼが答えた。
「私が風属性を選んだ理由は、ミューラ様の戦い方です」
カルロゼは風属性の結晶鉱石へ視線を向ける。
「回避しながら弓で攻撃し、必要であれば仲間を援護する。そして召喚士でもあるのでしたら、召喚を行うことも考えなければなりません」
「はい」
「風属性であれば、その動きを邪魔することなく、弓との相性もいいと私は考えました」
「なるほど……」
サイジョウは頷く。
すると今度はザキヴァルが口を開いた。
「私はカルロゼとは少し違う理由です」
「違う理由なんですか?」
「はい。私は防御の面から風属性を選びました」
防具製作を専門としているザキヴァルらしい考えだった。
「風の力を上手く付与することができれば、敵から攻撃を受けた際、その威力を少しでも抑えられる可能性があります」
「攻撃の威力を……」
「弓を使いながら召喚も行うのであれば、攻撃だけではなく身を守ることも必要でしょう」
「なるほど」
サイジョウは二人の説明を聞きながら、風属性の結晶鉱石を見る。
カルロゼはミューラの動きや攻撃から。
ザキヴァルはミューラを守る防御の面から。
理由は違う。
しかし二人が選んだ属性は、どちらも風だった。
「それなら、ミューラさんの弓には風属性を使ってみます」
「それがよろしいかと」
「私も賛成です」
これでミューラの弓に使用する属性が決まった。
【聖霊大樹】と【鋼鉄鉱石】。
そして【風属性結晶鉱石】。
初めて自分一人ではなく、カルロゼとザキヴァルの意見を聞きながら、依頼主の戦い方に合った素材を選ぶことができた。
しかし――。
もう一つ、まだ決めなければならない武器が残っている。
サイジョウは残された属性結晶鉱石へ視線を向けた。
「次は、レイアさんの杖だな」
ミューラとは違い、火属性魔法を中心に戦う魔道士のレイア。
果たして、どの属性を組み合わせるのがいいのか。
サイジョウは再びカルロゼとザキヴァルへ顔を向けた。
こうしてミューラの弓に使用する属性を決めたサイジョウは、次にレイアから依頼された杖の素材について考えるのであった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、ミューラから依頼されていた弓の素材について、カルロゼとザキヴァルの二人と一緒に考えることになりました。
同じ風属性を選びながらも、武器職人と防具職人、それぞれ違った視点から理由を語った二人。
そしてサイジョウは二人の意見を聞き、ミューラの弓に風属性を選びました。
しかし、まだレイアから依頼された杖が残っています。
果たして二人は、レイアの戦い方からどのような属性を提案するのでしょうか。
次回も楽しみにしていただけたら嬉しいです。
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今後とも『異世界で念願の店を開く転生者』をよろしくお願いいたします。




