第16話〘新たな職人との出会い――懐かしきかつての製作場〙
第16話です。
念願だった店の内装が完成し、開店に向けて商品の陳列を始めるサイジョウ。
そんな中、エルフィが新たに四人の職人を連れて店を訪れます。
その中には、かつてクラウディル家で製作を担当していた懐かしい職人たちの姿もありました。
新たな職人たちとの出会いが、サイジョウの店にどのような変化をもたらすのか。
今回もよろしくお願いします。
翌朝――。
昨日、店の内装が完成したばかりのサイジョウは、朝から店内で開店へ向けた準備を進めていた。
マジックボックスから販売用に製作した商品を一つずつ取り出し、店内に設置された棚へ並べていく。
短剣、大剣、双剣、斧といった武器。
盾、鎧、マントといった防具。
そして、ポーションや解毒ポーション、麻痺ポーションなどのアイテム。
昨日、商業ギルド長エルフィに販売価格を確認してもらった商品を、種類ごとに分けながら並べていく。
「武器はこっちで、防具はこの辺りかな」
サイジョウは店内を歩きながら、商品の配置を確認する。
まだ開店前とはいえ、昨日まで何も置かれていなかった棚に商品が並び始めると、一気に店らしくなってきた。
「こうして商品を並べると、本当に店らしくなってきたな」
前世では叶えることのできなかった自分の店。
その店に、自分で製作した商品を並べている。
昨日とはまた違った実感を感じながら、サイジョウは商品の陳列を続けていた。
そんな時だった。
「おはよう、サイジョウ」
店の入口から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
サイジョウが振り返ると、そこにはエルフィが立っていた。
しかし、今日は一人ではなかった。
エルフィの後ろには、見覚えのない四人の男女が立っている。
「エルフィさん、おはようございます」
「おはよう。朝から頑張っているみたいね」
「はい。昨日商品の価格も決まったので、今日は店に並べようと思いまして」
エルフィは店内へ並び始めた商品を見る。
「随分店らしくなってきたわね」
「ありがとうございます」
そう答えたサイジョウは、エルフィの後ろに立っている四人へ視線を向けた。
「それでエルフィさん、今日はどうされたんですか?」
「今日はあなたに紹介したい人たちを連れてきたのよ」
「紹介したい人たちですか?」
「ええ。あなたの店で製作を手伝ってもらう職人たちよ」
「職人さん……」
サイジョウが四人を見る。
するとエルフィは、まず二人のベテラン職人を紹介した。
「こちらがカルロゼ。武器製作を専門にしている職人よ」
「カルロゼです。よろしくお願いします」
「サイジョウです。よろしくお願いします」
「そしてこちらがザキヴァル。防具製作を専門にしているわ」
「ザキヴァルです。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
サイジョウが二人へ挨拶をする。
しかし――。
カルロゼとザキヴァルはサイジョウの顔を見たまま、どこか懐かしそうな表情を浮かべていた。
「……本当にお久しぶりです、サイジョウ様」
「え?」
突然そう言われ、サイジョウは首を傾げる。
カルロゼも懐かしそうに笑みを浮かべる。
「こうして再びお会いできるとは思いませんでした」
「あの……以前、どこかでお会いしましたか?」
サイジョウが尋ねると、二人は顔を見合わせた。
そこでエルフィが説明する。
「サイジョウ。この二人は、昔クラウディル家に雇われていた職人なのよ」
「父上の……?」
「ええ。カルロゼは武器を、ザキヴァルは防具を製作していたわ」
サイジョウは驚きながら二人を見る。
自分には当然、二人と会った記憶はない。
するとザキヴァルが答えた。
「我々は主に製作場で仕事をしていましたからな。サイジョウ様と直接お話しする機会は、ほとんどありませんでした」
「そうだったんですね」
サイジョウは内心で少し安心する。
クラウディル家の息子という立場になっているとはいえ、自分にはその頃の記憶など存在しない。
もし昔のことを詳しく聞かれていたら、どう答えればいいのか分からなかった。
カルロゼはサイジョウを見ながら、静かに笑みを浮かべた。
「しかし、こうして見ると懐かしいですな」
「ああ。クラウディル様のことを思い出す」
二人にとって、サイジョウの姿はかつて仕えていたクラウディルを思い出させるものだった。
続いてエルフィは、残る二人を紹介する。
「そしてこちらがベルティとウルティよ」
「ベルティです。アイテム製作をしています。よろしくお願いします」
「ウルティです。私もアイテム製作をしています。よろしくお願いします」
「サイジョウです。よろしくお願いします」
二人はカルロゼとザキヴァルより若く、これまでエルフィのもとでアイテム製作を行っていた職人だった。
「ベルティとウルティは私の専属職人よ。二人ともアイテム製作について詳しいから、あなたの店でも力になってくれると思うわ」
「そうだったんですね」
サイジョウは改めて四人を見る。
武器製作のカルロゼ。
防具製作のザキヴァル。
そしてアイテム製作のベルティとウルティ。
これまで商品の製作は、すべて自分一人で行ってきた。
しかし店を開店すれば、商品の販売だけでなく、新しい商品の製作も続けていかなければならない。
四人が製作を手伝ってくれるのなら、サイジョウにとっても非常にありがたいことだった。
そんな中、カルロゼが口を開いた。
「サイジョウ様。一つ、我々からお願いがあります」
「お願いですか?」
「はい。私とザキヴァルの給金についてですが、しばらくは必要ありません」
「え?」
思いもしなかった言葉に、サイジョウは驚く。
「いや、それは駄目ですよ。働いてもらうのに給金を支払わないなんて」
しかしカルロゼは首を横へ振った。
「我々が望んでいることなのです」
ザキヴァルも頷く。
「もう一度クラウディル家のもとで製作ができる。それだけでも我々にとっては嬉しいことなのです」
「でも……」
サイジョウは困ったように二人を見る。
働いてもらう以上、給金を支払うのは当然だと思っている。
しかし二人からすれば、かつて仕えていたクラウディル家の息子が再び店を始め、その製作を手伝えること自体が嬉しいらしい。
「本当に最初はお気になさらなくて大丈夫です」
「店が落ち着いてから考えていただければ十分です」
二人からそう言われ、サイジョウは少し考える。
「……わかりました。でも、店が落ち着いたら必ず給金について話しましょう」
「もちろんです」
「ありがとうございます、サイジョウ様」
二人の答えを聞き、サイジョウは頷いた。
すると今度はベルティが口を開く。
「私たちのことは気にしなくて大丈夫ですよ」
「え?」
「私とウルティは、エルフィギルド長から給金をいただいていますから」
ウルティも頷く。
「はい。ですから、今まで通りで問題ありません」
「そうなんですね」
サイジョウはエルフィを見る。
「二人については私に任せておきなさい」
「ありがとうございます」
これで四人の職人が製作を手伝ってくれることになった。
そこでカルロゼが、店内に並べられている武器へ視線を向ける。
「ところでサイジョウ様、こちらに並んでいる武器は……」
「ああ、これですか? 開店用に自分で製作した物です」
「サイジョウ様が?」
「はい」
その言葉を聞き、カルロゼは並べられている武器を興味深そうに見つめた。
ザキヴァルも同じように防具へ視線を向けている。
ベルティとウルティも、棚に並べられたアイテムが気になっている様子だった。
「せっかくですから、全部見てもらいますか?」
「よろしいのですか?」
「もちろんです」
サイジョウは四人へ、自分が開店用に製作した商品を一つずつ見せていった。
武器。
防具。
そしてアイテム。
四人はそれぞれ自分の専門分野の商品を手に取り、興味深そうに確認していく。
カルロゼは短剣や大剣などの武器を確認し、ザキヴァルは盾や鎧へ目を向ける。
ベルティとウルティも、サイジョウが製作したポーションなどを確認していた。
自分たちがこれから製作を手伝う店に、どのような商品が並ぶのか。
四人は一つずつ確かめるように見ていった。
一通り商品を見せ終えたところで、サイジョウは四人へ声を掛ける。
「それじゃ、次は製作する場所も見てもらいますね」
サイジョウは四人とエルフィを連れ、店の奥にある製作場所へ向かった。
そして扉を開ける。
「こちらです」
最初に中へ入ったカルロゼとザキヴァルが、足を止めた。
「…………」
「これは……」
二人は部屋の中に並べられた製作機材を見渡す。
その表情が、次第に懐かしそうなものへ変わっていった。
「懐かしいな……」
カルロゼが静かに呟く。
ザキヴァルも一つひとつの機材を見ながら頷いた。
「ああ……昔と変わっていない」
「昔と同じなんですか?」
サイジョウが尋ねる。
「はい。クラウディル家で働いていた頃、我々が使っていた物と変わりません」
「この機材で、何本もの武器を製作しましたな」
二人は昔を思い出すように、製作場を見渡していた。
サイジョウにとっては、この世界へ転生した際に用意されていた製作道具。
しかしカルロゼとザキヴァルにとっては、かつてクラウディル家で使っていた懐かしい機材だった。
一方――。
ベルティとウルティは、別の意味で言葉を失っていた。
二人はアイテム製作に使う機材を見ながら、驚きを隠せない表情を浮かべている。
「……ベルティ、これ知ってる?」
「ううん……見たことない」
二人は周囲に並んでいる機材を一つずつ確認する。
しかし、普段自分たちが使っている物とは違う物ばかりだった。
「これもアイテム製作に使うんですか?」
「はい。そうみたいです」
「そうみたいって……サイジョウさんも分からないんですか?」
「使い方は分かるんですけど、説明するとなると難しくて……」
サイジョウがそう答えると、ベルティとウルティは再び機材へ視線を向けた。
知らない製作機材。
見たことのない道具。
アイテム製作を専門としている二人にとって、この場所は未知の物ばかりだった。
その様子を見ていたエルフィが、二人へ声を掛ける。
「ベルティ、ウルティ」
「はい」
「はい、ギルド長」
「あなたたち二人にとっても、ここでの仕事はいい経験になると思うわ」
エルフィはサイジョウへ視線を向けたあと、再び二人を見る。
「二人とも、これからサイジョウのサポートをお願いね」
ベルティとウルティは顔を見合わせる。
そして二人揃って頷いた。
「わかりました」
「私たちにできることなら、頑張ります」
「よろしくお願いします」
サイジョウが頭を下げると、二人も笑顔で頭を下げた。
カルロゼとザキヴァルにとっては、かつてクラウディル家で製作していた懐かしい場所。
ベルティとウルティにとっては、見たことのない機材が並ぶ新しい製作場所。
そしてサイジョウにとっては、これまで一人で行ってきた製作を支えてくれる、新たな仲間たちとの出会いだった。
念願だった店の開店へ向けた準備が進む中、サイジョウの店には新たに四人の職人が加わることになった。
こうしてサイジョウは、新たな職人たちと共に、自分の店を開店するための次なる準備へ進んでいくのであった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
新たにサイジョウの店を支えることになった四人の職人たち。
その中でもカルロゼとザキヴァルは、かつてクラウディル家で武器や防具を製作していた職人でした。
そして、懐かしい製作場との再会を喜ぶ二人とは対照的に、ベルティとウルティは見たことのないアイテム製作機材に驚くことになります。
新たな職人たちも加わり、念願の店の開店準備はさらに進んでいきます。
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今後とも『異世界で念願の店を開く転生者』をよろしくお願いいたします。




