第14話〘初めてのオーダーメイド販売――完成した黒鉄盾〙
第14話です。
商業ギルドで製作品の価格について学んだサイジョウ。
今回は久しぶりにナルガスたちと再会し、完成した【黒鉄盾】をボランダへ渡すことになります。
初めてとなるオーダーメイド品の販売です。
今回もよろしくお願いします。
店の開店に向け、サイジョウは販売用の商品を順調に製作していた。
そして、製作した商品の価格が分からない時には商業ギルド長エルフィへ相談し、この世界での商品や武器の価値についても少しずつ学び始めている。
開店への準備は、少しずつではあるが順調に進んでいた。
そんな中――。
エルフィへの相談を終え、商業ギルドを出たサイジョウは、見覚えのある四人の姿を見つけた。
「あれ? ナルガスさん?」
そこにいたのは、アラドの森で素材採取の護衛をしてくれたギルド団『楓鳳凰』のナルガスたちだった。
サイジョウの声に気付いたナルガスが振り返る。
「おっ、サイジョウじゃないか」
「お久しぶりです」
「久しぶりだな。元気そうで何よりだ」
ナルガスの隣にいたボランダ、レイア、ミューラもサイジョウへ気付いた。
「サイジョウ、久しぶりだな」
「お久しぶりです、サイジョウさん」
「久しぶり、サイジョウ!」
「皆さんもお元気そうですね」
久しぶりに再会した五人は、その場で少し雑談を交わす。
アラドの森で初めて出会った時とは違い、一緒に素材採取へ行き、メタルホーンラビットとの戦闘まで経験したこともあって、サイジョウも以前より自然に話すことができていた。
アラドの森から戻り、冒険者ギルド長へ報告を終えたあと、サイジョウは約束通りナルガスへ短剣を900Gで引き渡していた。
自分が初めて製作した短剣を手放すことには少し寂しさもあったが、それ以上に、自分の作った武器を欲しいと言ってもらえたことが嬉しかった。
そんな中、サイジョウはあることを思い出す。
「そうだ。ボランダさん、依頼されていた盾が完成しましたよ」
「本当か?」
「はい。ちょうど先ほど、エルフィギルド長にも見てもらったところです」
「そうだったのか」
サイジョウは頷く。
商業ギルドを出る少し前、サイジョウはエルフィにもう一つの製作品を見てもらっていた。
◇◇◇
――十分ほど前。
短剣の価格について教えてもらったサイジョウは、もう一つ確認してもらいたい物を思い出していた。
「エルフィさん、実はもう一つ見てもらいたい物があるんですが」
「まだあるの?」
「はい。知り合いから依頼されて製作した物なんです」
サイジョウはマジックボックスから、一枚の黒い盾を取り出した。
それは、鉄銀鉱石と鋼鉄鉱石を組み合わせて製作した【黒鉄盾】だった。
「盾ね」
「はい。アラドの森で護衛をしてくれたボランダさんから、鉄銀鉱石を使った盾を作ってほしいと頼まれたんです」
エルフィはサイジョウから【黒鉄盾】を受け取る。
黒みを帯びた金属の輝きを放つ盾を確認したあと、そのまま鑑定を発動した。
そして――。
「……え?」
表示された内容を見た瞬間、エルフィの表情が固まった。
【黒鉄盾】
レア度:★3
耐久:5000
【特殊効果】
敵からの攻撃を防御した際、受けた攻撃の20%を相手へ跳ね返す。
「…………」
エルフィは表示された性能を確認したあと、もう一度【黒鉄盾】へ視線を向ける。
そして再び性能を確認する。
「サイジョウ……」
「はい?」
「この盾、何を使って作ったの?」
「鉄銀鉱石と鋼鉄鉱石です」
「鉄銀鉱石と鋼鉄鉱石……」
エルフィは驚きを隠せない表情で【黒鉄盾】を見つめる。
どちらも特別珍しい鉱石ではない。
しかし、その二種類の鉱石から製作された盾には、高い耐久だけでなく、受けた攻撃の20%を相手へ跳ね返す特殊効果まで付いている。
「それで、この盾はボランダさんから直接依頼されて製作した物なんですが、いくらくらいがいいでしょうか?」
「直接依頼された物なのね?」
「はい」
エルフィは少し考える。
「それなら、さっき話したオーダーメイドの一点物になるわね」
「やっぱりそうなるんですね」
「ええ。使用している素材だけではなく、完成した性能や製作する手間も含めて価格を決めることになるわ」
エルフィは再び【黒鉄盾】へ視線を向けた。
「この性能なら……3000Gくらいでいいと思うわ」
「3000Gですか」
「ええ。オーダーメイドの一点物として考えるなら、それくらいで問題ないわ」
サイジョウは少し考えたあと、頷いた。
「わかりました。それじゃ3000Gでボランダさんに話してみます」
「それがいいと思うわ」
サイジョウは【黒鉄盾】を受け取り、マジックボックスへ収納した。
◇◇◇
そして現在――。
「それで、エルフィギルド長に価格を確認してもらったところ、3000Gと言われました」
「3000Gか」
ボランダは少し考えると、すぐに頷いた。
「わかった。それで頼む」
「ありがとうございます」
ボランダはサイジョウへ3000Gを支払った。
代金を受け取ったサイジョウは、マジックボックスから【黒鉄盾】を取り出す。
「こちらが依頼されていた盾です」
ボランダは差し出された【黒鉄盾】を両手で受け取った。
黒みを帯びた盾を持ち上げ、表面や縁をじっくりと確認していく。
「これが俺の盾か……」
「鉄銀鉱石だけではなく、頑丈にするために鋼鉄鉱石も組み合わせて製作しました」
「そうだったのか」
ボランダは改めて【黒鉄盾】を見つめる。
そしてサイジョウへ顔を向けた。
「ありがとう、サイジョウ。大切に使わせてもらう」
「こちらこそ、依頼していただきありがとうございます」
自分が依頼を受けて製作した物を、実際に相手へ渡す。
サイジョウにとって、初めてとなるオーダーメイド品の販売だった。
完成した盾を嬉しそうに見ているボランダの姿に、サイジョウも自然と笑みを浮かべる。
すると、サイジョウはレイアとミューラから頼まれていた物を思い出した。
「レイアさん、ミューラさん」
「はい?」
「なに?」
「お二人から頼まれている杖と弓なんですが、まだ製作できていなくて……」
サイジョウが申し訳なさそうに伝えると、レイアは優しく微笑んだ。
「大丈夫ですよ。急いでいませんから」
「私も大丈夫だよ! ゆっくりでいいからね」
「ありがとうございます」
二人の言葉に、サイジョウは安心した。
するとレイアが続ける。
「もし製作するために必要な素材があったら言ってくださいね」
「素材ですか?」
「はい。冒険者ギルド長や受付嬢にも伝えておきますから」
「ありがとうございます。その時はお願いします」
まだ杖と弓に何の素材を使うかは決めていない。
必要になった時には相談すればいい。
そう考えながら、サイジョウは二人へ頭を下げた。
そして最後に、ナルガスへ視線を向ける。
「そういえばナルガスさん、短剣の方はどうですか?」
「ああ、あれか」
ナルガスは腰に身に付けている短剣へ手を添える。
それは、サイジョウが初めて製作した短剣だった。
「凄くいいぞ。相変わらず斬れ味はいいし、何度か使っているが刃こぼれもしていない」
「本当ですか?」
「ああ。この前も、魔物に襲われていた冒険者を助けた時に使ったんだ」
「そうだったんですね」
「その時も一撃だったよ」
「一撃ですか……」
サイジョウはナルガスの腰にある短剣へ視線を向けた。
メタルホーンラビットを斬り倒した時も、大木を試し斬りした時も、その異常な斬れ味には驚かされた。
そして今度は、別の冒険者を助けるためにも使われたらしい。
「あれだけの短剣だからな。大切に使わせてもらっている」
「ありがとうございます」
自分が製作した武器を大切に使ってもらえている。
それだけでなく、その武器が誰かを助けるために役立った。
その話を聞けたことが、サイジョウには何より嬉しかった。
前世では、念願だった自分の店を開くことはできなかった。
しかし、この世界では少しずつ商品を製作し、自分が作った物を欲しいと言ってくれる人がいる。
そして、その製作品を大切に使ってくれる人もいる。
まだ店は開店していない。
それでもサイジョウは、自分が夢見ていた店を持つという生活へ、一歩ずつ近付いていることを実感していた。
こうしてサイジョウは、初めてとなるオーダーメイドの【黒鉄盾】をボランダへ渡し、自ら製作した物を使ってもらえる喜びを改めて感じるのであった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
初めてのオーダーメイド品となる【黒鉄盾】を、無事にボランダへ渡すことができたサイジョウ。
そして、自ら製作した短剣が実戦でも役立ち、大切に使われていることを知ることができました。
少しずつ製作者としての喜びを感じながら、念願の店の開店へ向けて準備を進めていきます。
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今後とも『異世界で念願の店を開く転生者』をよろしくお願いいたします。




