第11話〘開店へ向けた商品製作――神様への感謝〙
今回も読んでいただきありがとうございます。
今回は、サイジョウが開店へ向けて少しずつ準備を進めていきます。
念願だった自分の店へ向けて歩みを進めるサイジョウを、楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、第11話をお楽しみください。
翌日――。
ボランダから依頼された【黒鉄盾】を完成させたサイジョウは、再び鍛冶工房へ入っていた。
作業台の上には、神様からもらった六個の鉄銀鉱石が並べられている。
「黒鉄盾も完成したし、次は短剣を作るか」
ナルガスへ売ることになった短剣は、自分が最初に製作した一本だった。
そのため、サイジョウは自分用の短剣を新しく作るついでに、開店後に販売する分も製作することにした。
「せっかくだし、六本まとめて作ってみよう」
サイジョウは鉄銀鉱石を炉へ入れ、短剣の製作を開始した。
固有スキルが発動すると、初めて短剣を製作した時と同じように、必要な知識と手順が自然と頭の中へ流れ込んでくる。
鉄銀鉱石を炉で溶かし、短剣用の型へ丁寧に流し込む。
十分に冷えたところで型から取り外し、一本ずつ金槌で叩きながら形を整えていく。
刃に強度を持たせるため丁寧に鍛え上げ、最後に刃こぼれしないよう研ぎ上げていく。
一本、また一本と作業を進め――。
数時間後。
キィィィン――。
最後の一本を仕上げると、作業台の上には六本の短剣が並んでいた。
「よし、完成した」
サイジョウは額の汗を拭いながら、出来上がった短剣を確認する。
どれも最初に製作した短剣と変わらない仕上がりだった。
続いてステータスを開き、現在の魔力量を確認する。
「六本で魔力消費量は600か。一本100だから、前に作った時と同じだな」
サイジョウは六本の短剣を見ながら少し考える。
「一本は自分用で使うから、残り五本は開店用の短剣にしよう」
自分用の一本を分け、残りの五本を販売用としてマジックボックスへ収納した。
これで武器の準備も少し進んだ。
「それじゃ、販売用のアイテムも製作しないとね」
サイジョウは鍛冶工房を出ると、隣にあるアイテム製作用の倉庫へ向かった。
倉庫の中には、神様から与えられたアイテム製作道具が整然と並んでいる。
サイジョウは作業台の前へ立つと、アラドの森で採取した薬草をマジックボックスから取り出した。
「まずはポーションだな。薬草を取り出してと」
サイジョウは必要な道具を準備すると、ポーションの製作を開始する。
すると、短剣や盾を製作した時と同じように、固有スキルによって必要な知識と手順が頭の中へ自然と流れ込んできた。
「なるほど。まずは薬草を細かくするのか」
サイジョウは薬草から傷んでいる部分を丁寧に取り除き、製作用の器へ入れる。
そして薬草を細かくすり潰しながら、少しずつ液状になるまで混ぜ合わせていく。
十分にすり潰したところで、錬金を発動した。
【錬金】
淡い光が器を包み込む。
サイジョウは流れ込んでくる知識に従いながら、薬草に含まれている回復成分だけを抽出していく。
やがて淡い光が消えると、器の中には薄い緑色をした液体が出来上がっていた。
「これを瓶に入れればいいんだな」
完成した液体を六本の小瓶へ均等に注いでいく。
最後の一本へ液体を注ぎ終えると、サイジョウは出来上がった六本のポーションを眺めた。
「初めてにしては、ちゃんと出来たかな」
念のため、サイジョウは完成したポーションへ【鑑定】を発動する。
【ポーション】
レア度:★3
効果:HP50%回復
「50%回復か。これなら販売しても問題なさそうだな」
しかし、サイジョウは知らなかった。
この世界で一般的に販売されているポーションはレア度★2。
その回復量もHP20%程度である。
サイジョウが普通の薬草から製作したポーションは、回復性能だけなら【ポーション・上級】に匹敵する物だった。
そんなことを知らないサイジョウは、六本のポーションを確認しながら満足そうに頷いた。
そして、ステータスを開いて魔力消費量を確認する。
「六本で9000か。一つ製作するのに1500消費するんだな」
それでも、サイジョウの魔力量には十分すぎるほど余裕が残っている。
「一本は自分用にして、残り五本を販売用にしよう」
サイジョウは一本を自分用として残し、五本を開店後に販売する商品としてマジックボックスへ収納した。
「これで短剣とポーションは準備できたな」
まだ開店まで時間はある。
無理に大量の商品を作る必要もない。
少しずつ自分の手で商品を作りながら、念願だった店を作り上げていけばいい。
サイジョウはそう考えながら、倉庫の中を見渡した。
すると、ふと神様のことを思い出す。
(そういえば……神様には本当に色々してもらったな。)
本来なら失うはずではなかった命。
神様の不手際によって命を落としてしまった自分に、もう一度人生を与えてくれた。
それだけではない。
念願だった自分の店。
アイテム製作に必要な道具。
武器や防具を製作するための道具。
そして、この世界で生きていくための力まで与えてくれた。
(何か、神様への感謝を形にできないかな。)
しばらく考えていたサイジョウは、ある物を思い出した。
「そうだ」
サイジョウはマジックボックスを開く。
そこから取り出したのは、アラドの森でナルガスが短剣の試し斬りをした際に倒れた大木の一部だった。
「これなら使えそうだな」
サイジョウは大木の一部を作業台へ置く。
そして頭の中に思い浮かべたのは、転生する前に会った神様の姿だった。
(神様の木像を作って、店に置こう。)
自分に新しい人生を与えてくれた神様。
創造神フィロズ。
サイジョウはその姿を思い出しながら、大木を少しずつ削り始めた。
大まかな形を作り、そこから少しずつ細かな部分を整えていく。
顔。
髪。
衣服。
転生する前に見た神様の姿を思い出しながら、一つひとつ丁寧に形を作っていった。
販売するための商品ではない。
自分が神様へ感謝するために作る物だからこそ、サイジョウは時間を掛けて丁寧に仕上げていく。
やがて――。
サイジョウは道具を置いた。
目の前には、大木の一部から作り上げた創造神フィロズの木像が置かれている。
サイジョウは完成した木像をしばらく見つめた。
(神様、本当にありがとうございます。)
異世界へ転生してから、まだそれほど長い時間が経ったわけではない。
それでも念願だった自分の店を持ち、少しずつ開店へ向けた準備を進めることができている。
(今度こそ、この店を大切にしていこう。)
サイジョウは創造神フィロズの木像を見つめながら、静かにそう決意した。
こうしてサイジョウは、開店に向けた商品の製作を進めながら、自分に新たな人生を与えてくれた神様への感謝を込めて、創造神フィロズの木像を完成させるのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
開店へ向けた商品製作を進め、最後には神様への感謝を込めた木像を完成させたサイジョウ。
少しずつ念願だった店の開店へ近付いてきました。
メイン作品を優先しながら、こちらも少しずつ続きを書いていきます。
引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。




