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乳がんとともに  作者: 蒼井 つばさ


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4/13

検査、検査、検査。そして告知。

もう、どういう順番でどの検査に行っただろう。


記憶は曖昧だ。

それだけ入院してから退院までの間に、レントゲン、MRI、CT、心エコー…

色々な検査を受けたのは覚えている。


入院してから数日後だっただろうか。

本来大学病院(ここ)に呼ばれた要因である、骨盤部の精密検査をすることになった。


CTだったかなんだかの機械を使いながら、腰に麻酔を打ち、ぶっとい針を腰に刺して骨の組織を採取した。


骨盤付近に何かが当たる


ゴリっ


という感覚…。

正直、これがめちゃくちゃ痛い。


麻酔が打たれているとはいえ、それはあくまで皮膚。

骨に打たれているわけではないのだ。


採取が終わった後の検体がチラッと見えたのだが、赤い液体だった記憶だ。

おそらく髄液か何かだったのだろう。

そりゃそんなもの採取してたのだから、痛くて当然だ。


その検査から、数日だったか1週間だったか経っていただろうか。


検査結果を報告された。


“悪性”とのこと。


また、その形が乳がんと非常に似ており、その可能性が非常に高いとのことだった。


そのすぐ後だっただろうか。

乳腺内分泌外科に呼ばれ、胸の針生検を受けることになったのは。


その、乳腺外科医に検査前に言われた一言がこれだ。


「(乳がんなら)転移がある時点で決して早期ではありません。」


こんな検査まで受けていて、身体もこんなに痛い。

それなのに、まだどこか他人事(ひとごと)

『そりゃあまぁ、そうやんねぇ。』

くらいの感覚だった。


針生検は、医師が

「痛いのは嫌だからねぇ。」

と言って胸に麻酔を打ち、針を刺される。


バチン!!


という大きな音と衝撃があったのを覚えている。


そのように、何ヶ所か組織を採取されたのだった。


そして、ゴールデンウィークが過ぎた頃だっただろうか。

夫を呼ぶように言われた。


この頃には、痛みでもう起き上がることさえ出来なくなっていた。


身体を横たえている間はいいのだが、身体を起こそうとすると激痛が走るのだ。


面会の時は勿論のこと、食事はおろか、排泄もベッドの上。

1週間に2度ほどの洗髪もベッドの上。


この時もベッドのまま個室に連れて行かれた。

病室には何台もの折り畳み椅子が並べられる。


夫を呼ぶように言われたという事実と、その忙しない準備の様子。


『あぁ、これはいい話ではないな。』


そう予感させるには充分だった。


しばらくすると、何人もの医師や看護師が顔を揃え始めた。


個室に呼ばれたこと。


事前に腰部生検の結果が悪性であったこと。


先日乳腺外科で生検を受けていたこと。


夫を呼ぶよう言われたこと。


今し方の忙しない様子。


そして今、一番近くの目の前にいる医師は…


そう、あの時生検をしてくれた乳腺外科医。


結果は想像に難くないだろう。



乳がんStage4



告知の瞬間だった。


『あぁ、やっぱりか…。』


少しぼんやりそう思うのと同時に、ふと頭をよぎったことがあった。


その瞬間、医師から発せられた言葉


「余命に関してですが、」


そう、それ。

そこが気になったのだ。


医師は言葉を続ける。


「早ければ1、2年。長ければ、10年以上元気に過ごしている方もおられます。」


早ければ1、2年。



1、2年…。



その言葉は、私の中に重くのしかかってきた。


頭に浮かぶのは、先日娘だと判った、お腹の中の我が子のこと。


私は、この子の1歳の誕生日、一緒に迎えられるのだろうか…。


ランドセルを背負う姿見ることができるのだろうか…。


中学、高校と進学した制服姿を見られるのだろうか…。


大学生になる姿を見られるのだろうか…。


成人式の晴れ姿は…?


花嫁姿は…?



…そもそも、この子を無事に産んであげられるのだろうか…。



そんなことばかりだった。


そして、更に自分の身体の状態や病状について知らされる。


がんのタイプは、遺伝子由来のものではないこと。

悪性度は極めて高いこと。

腰椎、胸椎の複数箇所で転移により骨が溶け、圧迫骨折を起こしているということ。


『圧迫骨折なんて起こしてたんか!そりゃ痛いわけやわ。』


この痛みと、その原因がやっと一つの線で繋がったのだった。


そして、治療方針の説明があったと思う。

この治療方針のタイミングも、今となってはどのタイミングで言われたのか、はっきりと思い出せない。


本来なら手術をしてから抗がん剤治療と進むはずなのだ。

だが、Stage4ということで手術をする段階を超えている。

そのため、手術なしで抗がん剤治療に入るということだった。


頭は真っ白になりながらも、医師や看護師たちの手前かどこか冷静な自分がいた。


涙は堪えた。


医師たちが退室した後、私よりも先にそばに寄ってきた夫が涙を流していた。


「もういいやんな。」


そう言って、夫は私に口付け、抱きしめた。



そうしてやっと、私の目からも涙がこぼれたのだ。



そういえば、職場の健康診断でも腫瘍マーカーには引っかかっていた。

ただ、それが胃や大腸関係の数値。

大学病院での精密検査も受けたが、その時は特に問題なしということだった。


当時の医師も

「本当に異常数値だと、もっと跳ね上がるから大丈夫。」

というようなことを言っていた。


だから、その翌年以降もその数値に引っかかってはいたが、そのことから精密検査には行かなくなった。


この時、毎年きちんと精密検査を受けていれば何かが変わったのだろうか。


そんなことも頭をよぎったのだった。

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