検査結果の異常
時折、風邪などで体調を崩すことは確かにあった。
だが、以外は体調も安定していた。
採血の結果も、毎回特に問題ないと言われていた。
3ヶ月毎のCTも、毎回“特に変わりない”と言われていた。
ホームケアクリニックの往診医師からも、
「次回の介護保険の更新はないかも。」
と言われていた。
今年に入ってからは、それまで3ヶ月毎だったホルモン剤の注射も、半年に一度に変わっていた。
だから全てが順調だと思っていたのだ。
そんな4月。
定期検査のCT撮影の月である。
初めての抗がん剤から約3年が経とうとしていた。
この日は、いつもより待ち時間が短かった。
普段なら予約時間から2時間以上待つなんてことも珍しくはない。
それが思っていたよりも随分早く
…ほぼ予約時間通りに呼び出しがかかったのだ。
『あれ?ラッキー⭐︎
今日、めっちゃ早くに呼ばれたやんw
患者さん少なかったんかな?』
その時はくらいにしか思っていなかった。
この時も、“採血結果に別段問題はない”と言われた。
だが、CTのデータを開く時の主治医の放つ雰囲気がなんだか違う気がした。
初めて診察を受けてから約3年
退院してからも毎月顔を合わせているその主治医は、比較的雰囲気の柔らかい人なのだ。
そんな彼の放つオーラが、なんだか澱んでいるような…
そんな気がしたのだ。
そして、少し言いにくそうに主治医は口を開く。
「これが今回のCT画像なんですけど…。
3ヶ月前と比べると大きな変化は見られないです。」
『なんだ、気のせいだったのか。』
そう思ったが、主治医はまだCT画像をマウスでクリクリしている。
心拍数が上がる気がする。
呼吸は浅くなりそうだ。
主治医が話し出す。
「これが今回のCTで、これが3ヶ月前。
ここが乳腺のところの腫瘍なんだけど…。
こっちはあんまり変化はないんだけどね。」
「こっちが1年前。
ほんの少しなんだけど…。」
「少し大きくなってます。」
『…え?』
「今、閉経前のホルモン剤を飲んでもらってるんだけど、閉経後のお薬に変えようと思います。」
「わかりました。」
そう反射的に答えるが、思考は停止している。
主治医が今後の治療計画について話している。
だが思考が停止しているため、彼の話は聞こえているが詳細の記憶は曖昧なのだ。
主治医の話を、断片的な記憶と解釈でまとめるとこういうことだった。
・次回のCTの結果を見てから評価をして、今後の治療方針を定めていく。
・さほどの変化が見られないようなら、手術も選択肢。
・その場合、これ以上の肥大を防止する為であって延命に効果があるわけではない。
・思わしくない場合は抗がん剤の選択肢の一つ。
約3年で飲んでいた薬の効果が弱まった?
本来5年ほどは飲む予定だったはずの薬だ。
次の薬はどれくらい効果が保つのだろうか。
また、3年ほどで効果がなくなるのだろうか。
あと何種類ほどの薬が残されているのだろうか。
その薬はそれぞれどのくらい効果が保てるのだろうか…
…やっぱり私には娘が大人になった姿を見ることは叶わないのだろうか。
孫の顔まで見る気でいたが、それもやはり厳しいのだろうか。
“選択肢”だと言っているが、ほぼ間違いなく抗がん剤か手術になるのだろう。
そんな思考が、呆然としながらも駆け巡っていた。
今までの結果が順調だと聞いていたが故に、今回の結果のショックは大きかったのだ。
しばらく心は落ち着かなさそうだと確信した。
短く見積もって、次回7月の検査結果を聞くまでは。




