六重奏 ー セクステット ー
牙王とゼブラを残し、その場から立ち去ったドロシー達。
『神よ、そろそろ政宗を起こしても、良いのではなかろうか?』
ジャンヌは言った。
『それが……何度も起こしてみたんだけど起きないの』
脈も有り、呼吸も異常無い。それなのに、政宗は目を開ける様子が無かった。
『なら、思いっきり殴ってみよう』
『ダメーーーッ!!』
レイが拳を振り上げると、必死になってドロシーは叫んだ。
『冗談です』
殺気が滲み出ていたレイの言葉には、信憑性の欠片も無い。
『それにしても、意識の無い者が二人も居ると、敵が現れたら厄介ね』
ドロシーがそんな事を言っていると、ジークは久し振りに喋りだした。
『この先に、生体反応有り!』
すると、ドロシー達は足を止めた。
『接触まで、およそゼ……ロ!?』
凄いスピードで、遠距離から何か大きな物が飛んできた。誰もソレに反応出来ずにいた。たった一人、ジークを除いて。ジークはソレを受け止めていた。
『オイラの攻撃を止めるなんて、オメースゲぇなぁ』
飛んできた大きな物は、物ではなく者だった。
『オイラは堕天使【六重奏】の一人、【バーチュ】って言うんだ。ヨロシクな!』
爽やかな挨拶をする堕天使だが、見た目はまん丸と太っていて、首すら見えない顎の肉、チャームポイントはとても小さな円な瞳。
ドロシー達はザワ付いた。
『ねぇねぇ、六重奏って何?』
『突然現れて……イキナリ初めて聞く単語を言われても……』
『アレだね』
『アレですね』
敵を前にして尚、ペースを崩さない。流石は神様御一行、といったところだろうか。
ドロシーは言った。
『病院へ行った方が良いわ』
それを聞いたジークは言った。
『未来の医者でも、中二病は治せません』
顎に手を当てジャンヌがボヤいた。
『精神科なら、あるいは……』
ソレだ!! と、皆がジャンヌの方を向いた。
『誰が中二病だ!! いくらオイラがデブだからって、心まで大きい訳じゃないんだゾ!! ……って誰がデブだゴルァ!!』
バーチュは突然怒り出した。いや、普通か。
『デブなんて一言も言って無いし〜!!』
ハチャメチャな性格の上に、ハチャメチャな戦い方をするバーチュ。
ボールの様にアチコチ跳ねながら、突撃してくるのだった。
『オイラを馬鹿にする奴は全て粉砕してやるー!! 見たか、素早いデブは最強だ!! って、誰がデブだぁーーっ!!』
また、自分で自分を怒らせた……。短気な上にこの身ため、きっと彼はモテないだろう。
『どうしたぁ? オイラを捕える事も出来ないか?』
調子に乗り出すバーチュ。それを止めたのは、やはりジークだった。
『角度とスピードの計算上……ここデス!!』
跳ねるバーチュの足を掴み取った。
『何っ!?』
ジークは地面に叩きつけた。
『ワタシが相手をします。主、先へ』
『また、ぶっ壊れたら容赦しないんだから!』
そう言って、ドロシー達はその場から離脱した。
『ヤッパリ、相手はオメーか。 オイラ、ワクワクしてきたぞ!』
ジークはヤレヤレと、首を横に振った。
『もう、二度とワタシは負けない!! 見ていて下さい……マスター!!』




