魔法剣
ー 残り時間 7分 ー
ゼブラの【写し身】に翻弄される牙王。その少し離れた場所では、ジャンヌはユーフォニアと大縄で遊んでいた。
片方の縄は木に縛られ、もう片方はジャンヌが持っていた。
(何故、私は敵地で縄を回しているのだ……)
しかし、ユーフォニアは喜んで縄を跳んでいる。その姿は微笑ましかった。
だが、ユーフォニアは突然跳ぶのを止めてしまった。
『どうしたの? もう飽きちゃったかな?』
意外と面倒見の良いジャンヌ。
『何でゼブラは戦ってるの?』
ユーフォニアの視線は牙王達へ向けられていた。
『ねぇ、お姉ちゃん達は悪い人?』
ジッとあちらの戦いを見たまま質問をしてきた。
『私達は悪い人じゃないよ』
その答えに納得いかない様子のユーフォニア。仲間が戦っている。仲間は正しい。仲間の敵は自分の敵。コレが、純粋故の結論だった。
『ゼブラはいつだって正しいモン。良い事も悪い事も教えてくれるモン。ゼブラは悪い人としか戦わないモン』
小さな身体は震えていた。
『お姉ちゃんはユーフォニアと遊んでくれたから好き。でも、ゼブラの事はもっと好き。だから、ゼブラの敵はユーフォニアの敵なのっ!!』
ユーフォニアの身体から炎が溢れ出した。ジャンヌに向けられたその顔からは、先程までの無邪気さは消え、憎しみの表情を浮かべていた。
『待て、出来ることなら私は戦いたくは無い』
だが、その言葉はユーフォニアには届かない。もはや、幼き少女は聞く耳を持っていなかった。
炎を纏ったユーフォニアはジャンヌに向け突進した。彼女の通った後は、草も残らず灰に成り風に消えた。
それを見たジャンヌは、まともに攻撃を受けたらマズイと判断し、動きに集中して避ける事を選んだ。
相手が幼いお陰で軽いフェイントで翻弄出来た。その為、避ける事には苦労しなかった。
だが、本来の姿を知ってしまったせいで、ジャンヌは攻撃をためらってしまう。だからといって、避け続けてしまえば子供の考える事だ、広範囲の攻撃を仕掛けてくるに違いない。それはリスクが高過ぎる為なんとか阻止したい。
次の攻撃は、避けずに真っ向から向き合おうと決心した。
しかし、ジャンヌの手には何も武器は無かった。
いつもの様にウッカリではない。これで、良かった。牙王の様に力が有る訳でも頑丈な訳でもない。それでも、コレが彼女なりのスタイルだった。
再びユーフォニアがジャンヌ目掛け突進してきた。それをジャンヌは防ぎきって見せたのだ。
ユーフォニアの突進を防いだジャンヌは、一体何処から出したのか、手に剣を持っていた。ユーフォニアの身体は、その剣により空へと弾かれた。
『ズッル〜イ!! そんな武器をずっと隠し持っていたなんて!!』
犯則だと言わんばかりに、ユーフォニアはピーピー怒っていた。
『隠し持ってなんかいなかったさ。たった今生成したばかりの新品だからな。コレこそ私の新たな力、【魔法剣】だ!!』
ジャンヌの魔法剣は、剣に魔法を掛けるタイプではなく、魔法で様々な剣を創り出すタイプだ。
そして、今回は土を元に剣を創り出したため、強度を誇るゴツゴツとした剣になったのだ。
子供相手だからといって、出し惜しみしていたら自分が灰に成る。ジャンヌはもう一つの得意な魔法、聖なる十字架を使った。
更に、聖なる十字架に魔力を加え、風の刃を纏わせた。コレは魔法剣の応用技だ。
『今度はコチラから行くぞっ!!』
聖なる十字架をユーフォニアに向け放った。ジャンヌは相手が子供という事もあり少しばかり手加減した。にも関わらず、ユーフォニアは反応出来ずに真正面から聖なる十字架を喰らってしまった。
『ウソーーーッ!!』
ジャンヌは慌てた。ジャンヌの放った聖なる十字架がユーフォニアの左胸に突き刺さっていたからだ。
ユーフォニアの炎は消え、その小さな身体を地に落とした。
急いでジャンヌが駆け寄ると、ユーフォニアの心臓は停止していた。
『衛生兵ーーーッ!!』
ジャンヌは敵地にも関わらず大声で叫んでしまった。その叫び声は響き渡り、牙王達の耳にも聞こえてきた。
『どうやら……アッチは決着が付いたみたいだな……』
牙王は息を切らせながら言った。それを聞いてなお、ゼブラは笑みを浮かべている。
『決着? 何を言っているのですか?』
すると、ユーフォニアは目をパチッと開け立ち上がった。
『いったぁ〜い、危うく死んじゃうとこだったよ〜』
(いやいや、死んでたし!! 心臓止まってたし!!)
何事も無かったかの様に振る舞うユーフォニアにジャンヌは驚いた。
『アレはどういう事だ?』
遠くから見詰めていた牙王も驚いていた。それを聞いたゼブラが言った。
『彼女は……、ユーフォニアは不死身なのです』
そんな馬鹿げた事が有るのだろうか? 仮にそれが本当だとしたら、まず勝ち目が無い。攻撃を受け付けない敵と、不死身の敵。この二人を相手に成す術の無い牙王とジャンヌ。
ー 制限時間まで 後5分 ー




