二人の追跡者
アックスとの戦いにより騒がしくなったため、二人の堕天使達が駆け付けた。しかし、その時には既に、政宗達の姿は無く、倒れたアックスと荒れ果てた部屋だけが残っていた。
『騒がしいと思えば、またアックスですか……』
メガネの男、名は【ゼブラ】。アックスとは真逆で何処か大人しそうな雰囲気を醸し出している。高身長で瞳は蒼く、セミショートの金髪だ。
『もう〜、一人で遊ぶなんてズルい事するから天罰が下るんだよ〜』
もう一人の堕天使、名は【ユーフォニア】。見た目は、まだあどけない少女と言った所だろうか。肌は白く水色のロングヘアーだ。
『堕天使が天罰ですか……』
ゼブラは笑った。
『でも、誰がやったんだろうね〜?』
『本当に天罰かもしれませんよ』
メガネをクイッと上げ、部屋の隅に有る壁の穴を見詰めて言った。
その頃、政宗は身を隠しドロシーと共に身体を休めていた。
『思ったより手強かったな……』
壁に寄り掛かり座り込みながら政宗は言った。体力を消費しすぎ、汗がダラダラと流れていた。
『ドロシー……ありがとうな』
アックスとの戦いに手出ししなかった事への感謝の気持ちだった。どうしても一人で戦いたかった政宗は、ドロシーに陰から見守ってくれる様頼んでいたのだ。
『途中ハラハラしたけど、政宗君なら勝てるって信じてた。ホント強くなったね……』
ドロシーは、誇らしい反面、少し心配していた。普通の人間が強い力を手にしたのだから当然だろう。
『これからどうするの?』
ドロシーが政宗に問うが返事が無かった。ふと、政宗の方を見るとウトウトと眠そうにしていた。
『少し寝てて良いよ。何かあったらすぐに起こしてあげるから』
それを聞いて政宗は安心して眠りについた。敵地の中だというにも関わらず、スヤスヤと安らかな寝顔だった。
しばらくすると、少し離れた所から声が聞こえてきた。
『お〜い、誰か居る〜?』
少女の声だ。
『誰か居る? と聞かれて居ると答える敵は居ませんよ』
もう一人居るようだ。
声は次第に近付いてくる。本来なら政宗を起こすべきなのだろうが、少しでも休ませたかったドロシーは、政宗をおぶさりその場を離れた。
『あれ〜? 誰も居ないよ?』
二人は先程までドロシー達がいた場所まで辿り着いたが、そこには誰も居なかった。
『どうやら、そんな遠くには行ってないみたいですよ?』
『何でそんな事が分かるの?』
ユーフォニアはゼブラに問う。
『床を触ってごらん?』
ゼブラに言われた通りにユーフォニアは床を触ってみた。
『あっ!! あったか〜い』
無邪気に喜ぶユーフォニア。
『そうです。温かいという事は、さっきまで人がそこに座っていたという事ですよ?』
それを聞いたユーフォニアは、尊敬の眼差しでゼブラを見つめていた。
『流石メガネだね。何でも知ってるね』
『メガネは関係ありませんよ。それでは、再び探すとしましょうか』
そっとユーフォニアに手を差し伸べるゼブラ。
『見付けたら褒めてくれる?』
『勿論、褒めてあげますよ』
ユーフォニアは鼻息を荒くして張り切りだした。
『じゃあ、ユーフォニア頑張る!!』
二人の追手から逃げたドロシーが辿り着いた先は行き止まりだった。声はすぐそこまで来ていた。ドロシーは焦った。政宗をそっと床に置き、身構えた。
『ほら、近くに居ましたよ』
『本当だ。流石メガネ!』
『ですからメガネは関係ありませんよ』
微笑ましい二人だが、敵である以上油断出来ない。
『侵入者め〜、覚悟しろ〜』
飛び掛かろうとするユーフォニアの腕を、掴むゼブラ。その瞬間、ドロシーと二人の間の壁が破壊された。
『どうだ!! こうすりゃ中に入れるだろ!!』
『ここが、敵地である事を忘れていないませんか?』
『待って下さい。生体反応が4つ有りマス』
ドロシーは驚いた。聞き覚えの有る声がしたからだ。
穴の空いた壁の先には牙王達が立っていた。
『ドロシー様!! 大丈夫ですか? 怪我などは有りませんか?』
レイはすぐにドロシーへと駆け寄った。
『おやおや、皆様揃って侵入とは……。些か穏やかじゃ有りませんね』
ゼブラからは禍々しい闘志が溢れ出していた。




