再戦
ー 遡ること魔界の時間にして約5時間 ー
日の出前、コソコソと魔王の城で動く二つの影。政宗とドロシーだ。仲間達に気付かれないよう、脱出を試みる。
正面の入口から出ては、見張り達に見つかってしまう。そこで、城のテラスへと向かった。水に囲まれたこの城では、入口も出口も一つしかない。それでも、空なら関係ない。
政宗はドロシーを抱きかかえると、黒い炎の翼を羽ばたかせ、魔王の城を後にした。
月の光に照らされて、夜にも関わらず辺りをハッキリと見渡す事が出来た。少し城から離れた所に草原が広がっていた。そこへ、政宗達は降り立った。
『みんなには悪い事しちゃったね』
今回の敵は並大抵の相手ではない。それは、先日の戦いでよく知っていた。だから、仲間達を危険な目に合わせぬ様に、二人だけで堕天使の元へと向かう事にした。
『なぁ、本当に付いてくるのか?』
政宗は心配そうにドロシーを見つめた。
『付いて行くよ。これは、私の問題でも有るんだから』
政宗の顔を覗き込むドロシーのその言葉に、少し困った顔を見せる政宗。
『心配しなくっても、本気の私は強いんだから大丈夫』
自信に満ちたドロシーとは裏腹に、政宗は不安が有った。
『正直言って、相手は強い。ドロシーを守りきれる自信がないんだ……』
ドロシーから目を逸らす政宗の拳は震えていた。例えサラマンダーの力を得たとしても、勝てる保証など何処にもない。出来ることなら危険な目に合わせたくは無かった。しかし、それはドロシーも同じ事。政宗を行かせたくは無かった。それでも、どうにかして必ず政宗は雫を取り戻すために、堕天使達の元へと向かうだろう。だったら二人で行こうと決めたのだ。
『最初の冒険も政宗君と二人だけだった……。今回もきっと、二人でも何とかなるよ』
不思議とその言葉で不安は消え去った。これぞ、愛の力! 政宗は今なら何でも出来る気がした。
『必ず二人で、いや、三人で帰ってこよう』
『うん』
二人はしばらく見つめ合った。そして、政宗がキスしようとしたその時、ドロシーは人差し指を政宗の唇にそっと添えた。
『それは、帰ってきた時のご褒美だよ』
無邪気に笑うその顔は、まるで子供の様だった。
ドロシーが両手を前に出すと、ゲートが開いた。先代の堕天の王と何年もの間戦っていたため、堕天使達の住処はわかっていた。ま、元々は天使達をそこに追放し、堕天に追いやったのはドロシー本人なんだけどね……。
二人はゲートへ足を踏み入れ、敵本拠地に乗りこんだ。
ー 現在 ー
アックスのテンションはハイに成り、目をギラギラと輝かせていた。
『あぁ〜、待ってたぜ〜存分に暴れられるこの時を〜……。侵入者なら遠慮はしないで排除しても……構わねーよ……なっ!!』
いきなりアックスは政宗に向かって飛んで行った。コレは牙王を一撃で吹っ飛ばしたヤツだ。政宗のシールドなどもはや、シールドではない。しかし、今の政宗にはサラマンダーの力が有る。
政宗の左手を掲げると紋章は黒い炎へと姿を変えた。その炎が政宗を包み込むと、身体能力が急上昇していった。
『それがテメーの切り札か!? 少しは楽しめそうだ!!』
アックスは更に加速した。牙王を吹っ飛ばした攻撃が政宗を襲った。
しかし、政宗はそれを片手で受け止めてしまった。
『言ったろ? 楽しむ暇も無いって』
前回、誰一人として敵わなかった相手に、余裕を見せる政宗。それ程までにサラマンダーの力は強力だった。
『舐めた事ぬかすじゃねーかゴミクズ野郎!!』
アックスのボルテージは上がっていった。プライドの高いアックスは、今の一撃を止められたのと、政宗の挑発により本気を出し始めた。
アックスが力を貯めると、バチバチと身体の周りから火花が散り始めた。その威圧は今までに感じた事の無いものだった
アックスは、時を止めるスタンド使いの様に、凄いスピードで政宗にパンチの連打を繰り出した。
『うおぉぉぉっっ!!』
連打の最後の一撃で政宗は吹っ飛び、壁に叩きつけられた。壁は崩壊し、砂煙のせいで政宗の様子は伺えない。
『見たか! 俺様の実力を! 俺様が最強だぁぁーーっっ!!』
アックスが高笑いをしていると、瓦礫の中から政宗は姿を表した。
『誰が最強だって?』
政宗はあれ程の攻撃を受けても無傷だった。それを見たアックスは驚いている様子。コツコツとアックスへ歩み寄る政宗。
『で? 誰が最強だって? …………最強ならお前が堕天の王に成ればいいじゃん!!』
『…………あっ!?』
少し沈黙が続き辺りは静まり返った。
『…………俺様が2番目だーーっっ!!』
(言い直した!!)
政宗の一言に少し動揺している様だった。その証拠に、アックスの顔からは冷や汗が流れていた。




