置いて行かないでよ
サラマンダーの試練を乗り越えた政宗はさっそく地上へ戻り、堕天使を倒し、雫を取り戻そうと考えた。
そんな政宗の心を読まれたのか、魔王は政宗を呼び止めた。
『何処へ行くんだい? まさか地上へ帰ろうとか思ってないかい?』
『いや、いくらなんでもそんな事を考えたりしないさ……ハハ』
政宗は目を泳がせながら言った。もはや、誰から見ても嘘を付いているとわかる素振りだった。政宗はすぐに戻りたくて仕方がなかった。
『この力さえ有れば、アイツにだって遅れを取らない。だから、行かせてくれ!』
政宗は必死に頼んだ。しかし、魔王は首を横に振るだけだった。
『いったい何の騒ぎ?』
そこにドロシーがやってきた。ドロシーは政宗を一目見てすぐに状況理解したようで、政宗の頭をペチンと軽く叩いた。
『堕天使が現れていないのに戻っても意味ないでしょ?』
それもそうだと思ったが、政宗はやるせない気持ちでいっぱいだった。このままただ待っているだけの自分が嫌だったのだ。
『でも……』
『でもじゃないっ! 焦りは禁物! すぐに無茶しようとするのは君の良くない所!』
そう言いながら、政宗の頭をペチペチと叩くドロシー。叩かれながらも、ドロシーの顔を見るとその顔は涙ぐんでいた。
『……ドロシー』
次第にゆっくりと、叩く力も弱くなり、そして叩く事を止めた。
『少しは頼ってよ……置いて行かないでよ……』
『……ごめん』
それ以上の言葉は何も浮かばなかった。ただ強くドロシーを抱きしめる事しか出来なかった……。
ー 堕天使の住処 ー
『クッソ! 何で俺様がこんな事しなきゃならねーんだ!!』
アックスは雑巾を片手にボヤいていた。勝手な行動をとった罰として、一週間の掃除当番を命じられていた。嫌々やっている割に、掃除した所はとても綺麗だった。意外と几帳面な性格である事が伺える。
『結局、遊び過ぎて誰一人ぶっ殺してねーんだよなぁ〜……』
床をゴシゴシ拭きながらため息をついた。バケツに汚れた雑巾を入れ、濯ぐと雑巾を握り締めながら叫んだ。
『ダァーーーーッ!! 暴れてぇーーーーッ!!』
『なら、今から暴れるか?』
何処からかアックスに向け、声が聞こえてきた。辺りを見回すと声の主が階段に座っていた。
『テメーは、たしか……』
その声の主の姿を見て、アックスは最初驚いたが、それよりも暴れる事が出来るのが嬉しかった。雑巾を後方へと放り投げるとニヤニヤ笑い始めた。
『わざわざココへ乗り込んで来るって事は、今度こそ楽しませてくれんだよなぁ? 天界のゴミクズさんよぉっ!!』
『…………楽しむ暇も、無いかもよ?』
声の主は政宗だった!!




