黒炎龍(サラマンダー)
カワキラ山へと修行にやってきた政宗は、能力を封じる腕輪を付けながら登山を始めた。
カワキラ山は急斜面の岩肌で、山というより崖だった。登るには、ロッククライミングをしなくてはならない。命綱も無く、能力も使えず、まさに命懸けだった。
『こんな所、本当に登れるのか?』
心配になりながら山に手を掛けた。触ってみると岩が脆く、少し力を入れると崩れてしまった。
『ヤバイぞこの山!絶対死ぬぞコレ!!』
政宗は中々登る心の準備が出来なかった。せめて、シールドさえ使えればこんな山はなんともないのに……。だが、使わないからこその修行なのだ。
再び政宗は山に手を掛けた。やはり、脆い。なんとかして登れないものだろうか。
つべこべ考えていも仕方がない。意を決して政宗は、登り始めた。
一つ一つ、慎重に手探りでなるべく頑丈そうな所を選んでいった。
少し登ると、地面まで滑り落ちてしまった。そんなに高い所まで行ってなかったから良かったものの、また降り出しに戻ってしまった。
(もう少し頑丈なら……)
政宗は、ふと思い付いた。脆さを利用出来ないかと。
そこで、岩壁に向かって拳を付き出してみると、腕が突き刺さったのだった。
(コレならイケるかもしれない!!)
手と足を突き刺し、慎重に一歩ずつ登っていった。半分くらい登った頃だろうか、突如強風が政宗を襲った。
風はゴーゴー音を立て政宗を岩壁から引きずり落としてしまった。
運良く軽症で済み、再び山頂を目指した。
今度は風に負けないようにさっきより深く突き刺した。
(この試練を乗り越え必ず雫を救ってみせる)
自分にそう言い聞かせながら登っていった。再び強風が襲い掛かるがなんとか凌ぎきった。
そして、ようやく山頂へと辿り着いたのだった。山頂には大きな穴が空いており、覗き込むと、穴の底には黒いマグマのみたいな物が見えた。落ちたらひとたまりもないであろう。
覗いていると、マグマはブクブクと音を立て膨れ上がった。中から黒い炎の龍が飛び出してきたのだった。
【サラマンダー】だ!!
政宗が慌てて下山しようとした時の事、足を踏み外し穴の中へと落ちてしまった。
『冗談じゃねーぞ、こんな所で終われるかよ!!』
必死に足掻こうとするが、能力は使えない。万事休す!! そう思った時、サラマンダーは政宗に突っ込んできた。
すると、サラマンダーは政宗の身体を通り抜け、何処かへと消え去ってしまった。
この時、政宗に異常はなく、そのままマグマの中へと落ちてしまった。
しかし、政宗はマグマに落ちても平気だった。
政宗の身体は黒い炎に包まれ守られていたのだ。
サラマンダーによる物だろうか……。理由は解らないが、助かった。
でも、この穴から脱出しない限り本当に助かったとは言えない。しかし、かなり深く落ちたので、容易く登る事は出来なさそうだ。
『俺に翼が有ったなら、こんな所すぐに出れるのに……』
その時、政宗の背中から黒い炎の翼が現れた。
自分の意思にリンクして翼は自由に動かす事が出来た。翼を羽ばたかせると、政宗の身体は浮き上がり、見事生還を果たした。
そのまま、魔王の元へと空を飛び帰っていったのだった。
地上へ降り立つと、政宗の身体からは黒い炎は消え去り、腕に黒い龍の紋章のような物が刻まれていた。
魔王はその紋章を見てこう言った。
『サラマンダーの試練を乗り越えた様ですね。貴方なら出来ると信じていました』
どうやら、政宗に課せられたメニューは、その試練という物だったらしい。試練とは、己の肉体だけでカワキラ山を登りきり、サラマンダーに認められる様な強い意思を持つことだと、魔王は語った。
そして、その試練を乗り越え、政宗は新たな力を手にしたのだった。




