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オズと召喚士  作者: 森ハム
第1章 〜 異世界召喚編 〜
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漢の背中

『さて、どうしたものか……』

 北の魔女カトレアに力を借りる為には、牙王を国王にしなくてはならないのだった。

 そして、何よりも問題なのは……

『俺は一度逃げ出したんだ。そんな臆病者に、王になる資格など毛頭ない』

 当の本人が王になる気など無かった。

 そこで、選択肢は三つ

 一つ目:牙王を説得する

 二つ目:カトレアの事は諦める

 三つ目:この国の王に俺は成る

 面白いが、当然三つ目は論外だ。カトレアとの約束を果たせていない上に、王になってしてしまったら本末転倒だ。

 そして、残りの二つに絞られる訳だが、この国の現状を知りながら見捨てる事など出来はしなかった。

 よって、【一つ目の牙王を説得する】しか残されていなかった。

 そこまで見透かしていたのか、カトレアは難題を押し付けたのだった。

『なぁ、本当に王になる気は無いのか?』

『何度も言っているが、王になる資格など俺には無い』

 やはり頑なに拒む牙王だった。

 牙王は逃げ出した事より、友を裏切った事を何よりも悔やんでいたのだ。

『この国がこのままで良いの? 貴方は今まで王の為に戦っていたの? それとも国のために戦ったの?』

 ドロシーの問いに、牙王は目を大きく見開き考えた。

 (俺は国の為に戦ってきた……。王の為、国民の為……。そして何より友のために……)

『だが、国の為に戦ったとしても身を滅ぼす事もある』

『ジャンヌ、お前は黙っていてくれ』

 政宗がそう言うと、トトは空気を読み黙ってジャンヌを外へ連れ出した。

『このままでは、本当の臆病者になるんじゃないのかい?』

 牙王はしばらく黙っていた。長い沈黙の末、ようやく牙王は口を開いた。

『……少しだけ、考えさせてくれんか……。』

 牙王を一人残して政宗達は部屋を出ていった。


ーその夜ー


 牙王は政宗を外に呼び出し話をした。

『お前に頼みが有る』

 政宗を背に漢は言った。

『俺に勇気をくれないか?』

 政宗はフッと鼻で笑うと、一人の漢に向かって言った。

『アンタにやる勇気なんて無いね。アンタは既に勇気を持っている。そうだろ?』

 政宗は続けて言った。

『アンタは逃げ出したって言ったよな? その時辛くなかったか? 本当は逃げたくなかったんじゃないのか? アンタは逃げる勇気を持っていたんだ!』

 この時、牙王は背を向けていたので表情はわからなかった。

 でも、その漢の背中は小刻みに震えていた。

 泣いているのか、武者震いなのか、それはわからない。だけどそれは、まさしく漢の背中だった……。

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