生きたいです
牢屋の前まで来るとジャンヌは政宗達を睨み付けてきた。
『またお前達か、何度も言うがここから出る気は無い』
頑なに拒むジャンヌに対し政宗は質問した。
『何故そこに居たがるんだ? 理由でも有るのか?』
ジャンヌはその質問に答えた。
『誰かに騙され殺されるくらいならここで朽ち果てた方が良い!! もう裏切られるのは真っ平だ!!』
ずっと身を呈して祖国の為に戦い続けた挙句、魔女だ! 異端者だ! と罵られ火炙りの刑で幕を閉じる人生。それが彼女の末路だった。
縛られ火を放たれたその時、彼女はこの時代に呼ばれたのだ。
しかし、彼女の心は酷く傷付き心を閉ざし闇に染まりつつあった。
『力有る者は力無き者には脅威でしかない。そんな事解っていたのに! こうなる事を私は予測出来なかった! 何てバカなんだ!』
彼女の闇はどんどん深くなっていく。だが、そんな彼女に一筋の光が射し込む。
『ジャンヌ、お久しぶりです』
その声の主はドロシーだった。
『私はお前の様な小娘など知らぬ』
(誰が小娘だ! お前なんかよりずっと年上だ愚か者めが!)とキレるのを我慢してドロシーは微笑んだ。
『この声を忘れてしまいましたか? そう、貴方にフランス領を奪還せよと命じたこの声を……』
ジャンヌはその声に聞き覚えが有った。ジャンヌの目に光が戻りつつあった。
『か……みさ……ま……』
その目から次第に涙が溢れだした。
泣いているジャンヌにドロシーは問い掛ける。
『貴方は本当に死にたいのですか?』
泣きじゃくるジャンヌは鼻をすすりながら答えた。
『神様……生きたいです』
まるで怪我を理由に部活を辞め、グレてしまったバスケットマンの様なやり取りだった。
牢屋の扉を開くと背後から声がした。
『やはりここに居ましたか。エヴァノラ様』
ドロシーをこの世界に召喚したセオドラの部下だった。
『何でアンタがここにいるのよ!!』
『そういえば牢屋をまだ確かめていなかったと思いましてね』
コツコツと足音を立てエヴァノラの前まで歩いた。
『セオドラ様の妹といえど、嘘はいけませんなぁ』
セオドラの部下がエヴァノラの顔に触れようとした瞬間、エヴァノラは後ろに飛び跳ね本を取り出した。
『走れ雷よ』
【ライトニングシュート】
雷はセオドラの部下へ一直線に向かっていった。エヴァノラの持つ本は魔導書だったのだ。
セオドラの部下は雷を片手で止めてしまった。
『これはこれは少々おいたが過ぎる様ですな。この【マーリン】が教育して差し上げましょう』
『きゃっ!』
マーリンが手を前に突き出すとエヴァノラは壁へと叩きつけられ、壁はみるみると軋んでいった。
助けに入ろうとする政宗達だが不思議な力で見動きをとれなかった。
マーリンが手を下ろすとエヴァノラは床に倒れ込んで気を失ってしまった。
『次は貴様等の番だ』
マーリンが政宗達に手を出そうとした瞬間、牢の中から凄まじい殺気をジャンヌが放った。
縛っていた縄はジャンヌから湧き出る青白い光によりスルスルと解けていった。
ジャンヌが牢から出て政宗達に近付くと動かなかったはずの身体の自由を取り戻した。
『何人たりとも神に仇なす者は私が許さない!』
先程までのジャンヌとは違い、彼女の闘志は激しく燃え盛っていた。




