旅立ちの朝
グリンダを城の中へ運ぶとそこには街の人々が大勢居た。
どうやらグリンダは民を避難させ独りで城を守っていたらしい。
『俺が力を求めたりしたからこんな事に……』
政宗は自分の為に時間を割き、一芝居をして山まで来てもらったりしたせいで、街の被害を最小限に抑えることも出来ず、グリンダまでも傷付けてしまった事を悔やんでいた。
『命に別状は無いみたいだから安心して下さい』
トトはいつの間にか元の人の姿に戻っていた。
『とりあえず今は休みましょう』
ドロシーは政宗を連れて部屋へ戻った。
政宗は死んだ魚の様な瞳をして自分の弱さに責任を感じていた。
でも、一番遣る瀬無い気持ちなのは政宗を巻き込んでしまったドロシーだったのかもしれない。しかし、今の政宗にそんな事を考える余裕は無かった。
『本当にゴメンね、巻き込んじゃって……』
ドロシーは政宗の手を握り泣きそうな声で話していた。政宗は返事をしなかったがちゃんと聞いていたようだ。
遅かれ早かれ、政宗はこの世界に呼ばれていただろう。しかし、運命はドロシーが政宗を呼び出す事を選択したのだ。
それぞれ色々思う所は有るだろうが、この日はこれ以上の会話は無く次の朝を迎えた。
『皆様おはようございます』
そこには昨日の事が嘘の様に元気なグリンダの姿があった。
『身体の方はもう良いのか?』
『意識を取り戻した後、自分自身に治癒魔法をかけましたので傷も有りませんわ』
あっけらかんとしたその態度にみんな安心した。
『一体何が有ったんですか?』
トトの問いにみんなが真剣な表情でグリンダを見つめた。
『昨日現れたのは西の魔女【セオドラ】、彼女に予言の書を奪われてしまいました』
『セオドラはとても恐ろしい魔女ですわ。女子会の時も仲良さそうにしてお手洗いでは悪口ばかり言ってますし』
(セオドラってゆーより女が恐ろしい)そう思ったが、政宗とトトはいつも通り黙っておくことにした。
そんな事より予言の書を何とかしなければならない。あれは万能で100%当たるのだ。
悪用すれば万物をもひっくり返す程の力を持つ神器なのである。ごめん、ちょっと盛った。
『俺の責任だ、必ず取り返してくる』
政宗が城を出ようと立ち上がった。
ドロシーとトトも立ち上がり二人は顔を見合わせ頷いた。
『独りで行こうとしてないよね? 勿論私達も付いていくから』
ドロシーは政宗の腕に笑顔で抱きついた。
『あら、わざわざお願いする手間が省けましたわ。私も行けたら良いのですが、生憎忙しくて……』
説明しよう。イラッとする事を平然と言うが彼女に悪気は無い。
『解ってる。アンタはこの国の復旧作業にあたってくれ』
そう言って政宗達は城を出ようとする。
『待ってくださる? 西の魔女はとてもお強いですわ。東の国マンチキン、北の国ギリキンへ行き協力者を探し勢力を増やすと宜しいですわ。正直貴方達だけでは勝てませんし』
もう一度説明しよう。彼女に悪気は無い。
『因みにマンチキンにはセオドラの妹【エヴァノラ】がおりますわ。マンチキンではガーディアンの一人が囚われているとも聞きますわ』
『ありがとな。じゃ、行ってくるよ』
政宗達はとりあえず最初の目的地マンチキンを目指し旅立ったのだ。




