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第95話:説得を試みる

更新遅くなり本当にすみません。


 


 大人しく話せる機会を待とうと思っていたあたしだったけれど、こっちの方が早いし、一石二鳥を狙えるからとスパルタ教育を施され、何度も手がボロ雑巾になった。

 だけど、その甲斐あって人間であるあたしに情け深い視線を投げてくれるようになってくれたのは良かった。

 この分なら、少しは話を聞いてくれそうだ。


 あたしはそうホッとしながら長に言われるままに椅子に腰を掛けた。


「早速だが、何故人間への攻撃を行わない事が我々種族を守る事になるのか聞きたい」


 やはり、長というだけはある。自分の種族を本当に大事に思っているのだろう。

 場合によっては本当に攻撃を止めてくれそうな雰囲気だ。


「長様は人間をどのような存在と捉えていらっしゃいますか?」


 目を閉じたままあたしはそう最初に質問した。

 すると、目を開けていないのに目の前にいる長が汚いものを見るかのような表情になったのを感じた。


「己の欲の為に、平気で残虐な行いの出来る非道な者以外の何者でもない」


「確かにそうです」


 あたしがあっさり認めた事が予想外だったのか、長は驚いたように目を見開いている。


「誤解しないで下さい。あたしが言いたいのは確かにそんなところがあるという意味で、それは人間という個体の一部分に過ぎません。

 多くの人間は、本来他者を思いやり愛情を注ぐ事の出来る種族です。

 それこそリザードマンの皆さんのように。

 ですが、その愛情は相互の信頼が伴って初めて生まれます。信頼を得るまでは懐疑的になりがちです。

 何故かと申しますと、人間というのは臆病な種族であるからです。

 人間の肉体は非常に脆い。例えば、腕力一つにしても他の種族を下回っているのにリザードマンのような強固な皮膚もなければ獣人のような鋭い爪も牙もない。かといって魔力の量も魔族よりも遥かに劣る。

 だから、自分と異なる存在には警戒して相手を見極めようとします。

 その対象は他種族は勿論の事、同じ種族だとしても警戒します」


 あたしの言葉の意味が理解出来ないのか、長は訝しそうに口を開いた。


「そなたは、今自分の発した言葉の意味が判っているのか?それはつまり同じ種族同士でも戦う事があると言っているのと同じ意味なのだぞ?」


「その通りです。人間は他種族から見れば同族と判断される存在と戦争を行います」


 長はあり得ないと即否定した。


「何故だ!?仲間同士で戦うなんて異常ではないか!!」


「リザードマンの皆さんからすればそう思われても仕方がありません。

 ですが、人間の目からすると他国の人間は肌の色が違う。言葉が違う。習慣も何もかも違って見えるのです。それが恐怖となり殺し合いに発展するのです」


 長の口から唸るような声が漏れる。

 その表情も芳しくない。

 このままでは最悪な方向に行くと懸念しているのか、イレイザさんが間に入ろうとしている気配を後ろから感じる。

 カッツェさん、頼むからそのままイレイザさんを食い止めておいてね。


「仲間意識が欠如しているとしか思えん」


 長の呟きにあたしは首を傾げて見せた。


「そうですか?私から見れば、長様も似たようなものです」


 その言葉が癇に障ったらしく、怒りのオーラを放つ長にあたしは悠然と話続けた。


「だって、そうではないですか。自分の家族とも言える存在が傷つけられた。よって、人間は敵だと判断されている。

 人間もそうです。自分の大切な者が危険に晒されるかもしれない。相手は自分と毛色の違う存在なのだからと判断して戦いを産み出します。

 例えば、例えばですよ?もし、同族が攻撃を仕掛けてきた場合、直ぐに戦おうと思いますか?まず、何があったか話し合いの場を持ち出来るだけ平和に解決しようとは思いませんか?ですが、他種族の場合そうはならない。

 何故か?

 他種族間では仲間意識が芽生えないからです。

 人間も同じです。

 異国人相手では仲間意識が芽生えません。

 未知の存在相手には脅威としかなりません。だから戦うのです」


 極論だと異議を唱えようとする長を抑えるようにあたしは言葉を続けた。


「私を見て下さい。今はこうして目を閉じているから長様は私に脅威をそれほど抱いていらっしゃらない。ですが、目を開けば、極悪非道な人間としか思えず、自由にすればどんな残虐な行いをするか恐ろしく思われる事でしょう。

 実際、龍神国でも人間の街でも、そして今回も私は牢屋に囚われました。私自身はそのような事を露ほどにも思っていないというのに周りが敵だと認識します。

 私にとっては、龍人族も人間も魔族も、そしてリザードマンであるあなた方も同じ世界に生きる同じ生命なのだと仲間となれる存在なのだと思っているのにです。

 言葉だけではどうにでも言える。種族の違いなんてなんの隔たりにもならないのだと証明するためにこの二人に同行をお願いしました。

 人間である私の言葉は伝わらなくてもリザードマンを仲間として受け入れ、信頼していた二人ならばと思っての事です」


 あたしは、イレイザさんとフリューゲルさんに『出番だ』と告げるように視線を投げた。

 それを受け、フリューゲルさんが一歩前に進み出た。

 そして、深呼吸をして気持ちを切り替えると、フリューゲルさんは口を開いた。


「リザードマンの長様、ぼ、私はフリューゲルと申します。ここにいるイレイザがリーダーとした冒険者チームであるシュヴァイゲンの一員です」


 一人称が『僕』になりそうだったけれど、それ以外は満足の行く物腰でフリューゲルさんは自己紹介をした。








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