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第93話:牢屋番に訴え出る

 


 それから数日後、特に名案も浮かばないままあたしはスパルタ的拷問教育を受け続けた結果、魔力制御が出来るようになったけれど、休む間もなく今度は気をコントロールする訓練が始まった。

 気をカッツェさんの指示した場所に集中させるというものなんだけれど、こいつが難しい。

 何故なら、数日経っても長の姿が見えないから(カッツェさんが言うには、様子を見に一度隣の牢屋に来たらしい)違う方法を考えなきゃならないのだけど、そうすると集中が出来なくて溜めた気が霧散してしまうのだ。

 そうなると、すっかりお馴染みのベルト様が生き生きとあたしの皮膚を切り刻み始める。

 その果てのない拷問に、イレイザさんが遂に堪えかねて鞭を振るうカッツェさんの右腕を掴んだ。


「おい!いい加減にしろよ!ミレイに何の恨みがあるんだよ!?」


「恨み?そんなもの全くありませんよ。私はただ教育をしているだけですが?」


「限度があるだろうが!ミレイはまだ幼いんだぞ!?いくら自動回復のスキルがあっても苦痛は軽減される事はない!

 肉体的ダメージだってな、限度を超えれば精神的ダメージに繋がるんだ。幼い子供にやっていい事じゃない!」


「イレイザの言う通りだよ。龍人族の教育方針かもしれないけど、何日も終わりのない苦痛は単なる拷問でしかない。流石に僕ももう見ていられないよ」


 イレイザさんとフリューゲルさんはそう言ってカッツェさんを諌めてくれたけれど、カッツェさんはブレる事はなかった。


「ならば、目を閉じていて下さい」


「そういう問題じゃないだろ!?」


 叫ぶようにそう言うと、イレイザさんは何とかしようと牢屋番を呼んだ。


「……何の用だ?」


 リザードマンは表情が判りにくいけれど、口調は強張っている。そんな彼にイレイザさんはあたしを見るように促しながら口を開いた。


「あんたからも止めるように言ってくれよ。牢屋の中の惨状を止める権利あるだろ?あたしが言ってもこいつは聞いてくれねぇからさ、あんたの方から何とか言ってくれよ」


 イレイザさんがそう頼み込むと、牢屋番はチラリとあたしの方を見た。

 すると、それが合図かのようにカッツェさんの鞭があたしの右足に襲いかかってきた。


「ウガッ!!」


「右足に集中していない。やり直しだ」

「ま、待たれよ!い、今、長を呼んでくる。だから大人しく待っていろ!いいな!?」


 牢屋番は早口でそう言うと、走り去っていった。

 その様子を確認すると、カッツェさんは手を止めてその場に座り込んだ。

 あっさりと拷問終了する雰囲気にイレイザさんとフリューゲルさんはホッとしたようだ。

 そんな二人を一瞥すると、カッツェさんは徐に変な事を言ってきた。


「ミレイ。長が来たらお前は目を閉じていろ」


「目を?なんで?閉じていたら相手の顔見れないし、コミュニケーションが難しくなるじゃない」


「その為の魔力制御だ。相手の魔力、いや、地面や空気にも魔力は僅かに存在する。それをアンテナを張り巡らして感じれば視力に頼らなくても万物の形を理解出来る様になる。よって、目を閉じていても全く問題にはならない」


「だけど、なんで目を閉じる必要性があるの?」


 全く意味が分からない。

 だけど、フリューゲルさんもイレイザさんも納得がいったように成程と頷いた。


「ミレイさんの目を閉じている姿はまるで女神のように神々しいからか」


「確かに眠っている時のミレイは見惚れるくらい美人だからな。何の穢れも知らない純真無垢な天使みたいなでさ」


「その通りだ。だから、先ずは目を閉じている状態のミレイを会わせれば、相手の庇護欲を刺激するだろう。それが、例え人間であろうともな」


 カッツェさんがそう言った瞬間、フリューゲルさんは信じられないといった表情になった。


「ま、まさか、初めからそれが目的で、なのかい?」


「他に理由、無いですよね?」


 あっさりと認めるカッツェさんにそれでも酷過ぎると訴えるフリューゲルさんの言葉が耳に入っていないのか、カッツェさんは徐に黙るように人差し指を自分の口先に立てた。


「長がやってきます。この後どうするべきか解りますよね?」


「え?え?どういう事さ?」


 状況がイマイチ伝わっていないイレイザさんに、フリューゲルさんが答えた。


「いいから、取り敢えずは長にミレイさんがこれ以上カッツェさんに痛めつけられないように訴えよう」


「あ、あぁ。そうだったな。そうしよう」


 取り敢えず現状の目的を果たそうと言われ、イレイザさんは納得はしてはいないようだったけれど、頷いて長がやってくるのを少しでも早く見ようと鉄格子に掴まって顔をそこに付けた。



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