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第92話:カッツェの謎

 


 最近、思う事がある。


 カッツェさんって、タメ口を使うようになってからあたしに対して扱いが酷くなっているんだと思うんだよね。


 初めて会った時なんて、タメ口を使うなんて畏れ多いとかなんとか言って、スパルタだけどそれなりに気を使ってくれていたと思うのよ。

 それなのに、国を出てからというもの船の中では容赦なく電撃を食らわすし、今なんて作戦とはいえ、ベルトを使って鞭打ちの刑を執行中。いくら耐性が出来てきたからってあんまりだとは思いませんか?


 あれ?そう言えば、電撃系って龍神かあたししか使えないんじゃなかったっけ?

 だからこそあたしは赤龍の民に神鳴を落として、『異国の神』という立場を作ったハズなんだけど……


 いや、待てよ?


 そう言えば、電撃系はあたしに対して以外使ってなくない?

 それ以前に、カッツェさんの正確なステータスって知らない。



 ……なんだか不公平だ。



 あたしのステータスは恐らくカッツェさんは把握しているのに、あたしは知らないって不公平だと思いませんか?


 そんなわけで、イレイザさん達が寝静まってからあたしはこっそりカッツェさんに聞いてみた。


「ねぇ、カッツェさん。前から気になっていたんだけど、カッツェさんのステータスってどんな感じなの?」


 一応誰にも聞こえないくらい声量を落としてカッツェさんの耳にそう囁くと、カッツェさんは凄く嫌そうな顔であたしを見た。


「交渉方法を考えろと言った筈だが、何を考えているんだ。お前は」


「いや、ふと思い出したのよ。船の中では電撃を使っていたのを。で、思ったのよ。視覚的に効果があるとはいえ、電撃だってそれなりに周囲に伝わると思うんだよね。なのに、なんで今回は使わないのかなって。

 そうしたら、そう言えばあたし、カッツェさんのステータス知らないなと思い浮かんだわけで……」


 すると、カッツェさんは更に嫌そうに溜息を吐くと、仕方がないといったふうにあたしの頭に手を置いた。


「これから見せるのが私の今のステータスだ。誰にも言うな。勿論、父上やトールさんにもだ」


 あたしはテレパシーをまだ使えない。だから、カッツェさんはあたしに触れる事で直接思念を送ってくれるらしい。

 あたしは、頷きながらカッツェさんがテレパシーを送ってくれるのを大人しく待った。

 そして、それを見た瞬間、あたしは身体を強張らせた。


 魔力を大量に使うハズの詠唱省略を普通に使っていたし、その気になれば無詠唱も出来るとは言っていたけれど、龍人族の中ではもうジェイドさんを抜いているのかもしれない。

 そう思わずにいられないステータスだった。


 名前:カッツェ・ブラウドラッヘ

 年齢:19歳

 種族:龍人

 加護:青龍

 職業:冒険者

 Level:95

 HP :950,000

 MP :600,000

 称号:『守護する者』『文武極めし者』『賢者』『ΛΦБΩΘ』

 スキル:『全種族語Lv.10』『思念会話Lv.7』『千里眼Lv.5』『剣術Lv.10』『風魔法Lv.10』『土魔法Lv.10』『火魔法Lv.3』『水魔法Lv.7』『毒耐性Lv.5』『腐蝕耐性Lv.3』『風耐性Lv.10』『土耐性Lv.10』『火耐性Lv.5』『水耐性Lv.1』『闇耐性Lv.5』『痛覚軽減Lv.7』『精神攻撃耐性Lv.9』

 魔法:『フライ』『ウインドカッター』『ブラスト』『トルネード』『テンペスト』『サフォケイト』『サンダー』『サンダーボール』『ショックウェーブ』『アースウォール』『アースランス』『サンドストーム』『ロックレイン』『アースクエイク』『ファイアー』『ファイアーボール』『アイス』『アイスストーム』『ブリザード』『グロスフォーグ』


 ……いやさ、もうカッツェさんだけで良くない?


『文武極めし者』とか『賢者』とかチートの薫りを無茶苦茶感じる称号に沢山の魔法。

『全種族語』なんて交渉しまくれるスキルだし……そりゃあ、あたしの言語だって全てカッツェさんが教えてくれたワケだから話せて当たり前なんだけどさぁ、こうしてステータスとして見てしまうと……ドン引きだわ。

 なんか一つだけ文字化けしている変な称号あるけど、きっとそれもチート的な称号に違いない。

 あたしがいなくてもカッツェさん一人で何とでも出来るよ、絶対。


「……凄いね」


 素直に称賛しようと思って呟いた言葉だったけれど、劣等感を刺激されて少々棘のある口調になってしまった。

 だけど、カッツェさんはそんなあたしの言葉を自分を責めていると感じたのか何故か謝ってきた。


「今まで黙っていて悪かった。だが、これらの半分は確かに使用出来るが、絶対に使用出来ない」


 『使用出来るのに使用出来ない』?

 はて、一体どういう意味だろう?


「私の魔力値は見ての通りミレイの半分にも満たない。つまり、上級魔法は詠唱しないと魔力切れを起こして動けなくなるし、『テンペスト』に至っては詠唱しても倒れるぐらいに魔力を消費する。

 電撃系は『四大元素』の微調整を要するから集中力が重要になる。よって自由自在に扱う事は出来ない為、使えない事にしている。恐らくミレイのように『四大元素マスター』になれば使えるようになるだろうが、それは目下修行中だ。

 もし、これらの魔法を使用し、魔力切れを起こしたら私はお前を守り切る事が出来ない。それだけはどんな最悪な状況になっても避けたい。だから、誰にも知られたくなかったんだ。

 ミレイを神子ではなく友人として受け入れたあの日に得た称号『守護する者』。それが、私が最も重要視する事だからな」


 あたしを守るのが最も重要って……あたしを一番にしてどうするのよ?

 いや、他にも色々突っ込むべきところがあるけど、それらが霞むくらいあたしにはショッキングな台詞だった。

 あっちの世界ではあたしは存在価値のない存在だった。寧ろあたしがいる事で周囲に恐怖心を与える有害な存在で、璃人兄さんがあたしを溺愛していたのはそんなあたしを憐れんでという気持ちもあったからだと思う。

 そんなあたしを最悪な状況でも守ろうとしてくれるのは有難いし嬉しいけれど、そこまでしてもらう存在じゃない。

 だけど、そう言ってもカッツェさんは否定して10以上の言葉を並べて来るだろう。


 ならば、せめて少しは守り甲斐のある存在になるよう努力するしかないのかもしれない。

 あたしと一緒にいて良かった。

 そう心から思えるような存在になれるよう頑張ろう。


 先ずは、リザードマンの長。


 リザードマンは情の深い種族だというのを利用しようと昼間は久々の拷問教育を披露したにも関わらず、長が姿を見せる事はなかった。

 だけど、牢屋番のあたしを見る視線が、仇を見る目から憐れみの目に変化していた。

 だからこの作戦は間違ってはいない。

 このままやり続ければ、見るに見かねた牢屋番が報告に行くハズだ。

 そして、長が牢屋の現状を見さえすればきっとあたしを憐れんで、少しは聞く耳を持ってくれるような気持ちになってくれるかもしれない。

 その一点に賭けて明日もカッツェさんによるスパルタ的拷問教育を受け続けよう。


 だけど、拷問道具。ベルトは止めて欲しいなぁ。

 もし、この作戦が失敗に終わった場合の新たなアプローチ方法を考えなきゃならないのに集中出来ないし。

 まぁ、魔力制御も巧く出来るようにならなきゃならないのは解ってはいるから一石二鳥だって事で受け入れたけどさ、龍鱗って武器レベルに切れ味があってマジで痛いのよ。

 いくら『オート・リジェネ』のスキルがあっても、痛みは軽減されないから苦痛なんだよね。

 あ、なんかちょっと憂鬱になってきた。


 こんな時は寝てしまおう。何も考えられなくなるくらいぐっすりと寝てしまおう。


 あたしはそう心に決めて、堅く瞼を閉じた。



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