第5話:龍神様と御対面【2】
龍神窟は岩に覆われた巨大な空間だった。
かつては火山口だったのだろうか?
マグマがゆっくり冷える事で出来る深成岩で出来ている。
そして、その中央には屋敷の主である龍神様が……
「いない」
思わず漏れた言葉に長が説明してくれた。
「すぐに戻られる。恐らく散……巡回に出ておいでなのだろう」
今、散歩と言おうとしませんでしたか?
どうにも調子が狂う。
食べられてしまうのではないだろうか?等と不安に思っていた気持ちを返して欲しいとか思ってしまう。
でも、安心する事は出来た。
もしかしたらあたしを落ち着かせようと長なりの気遣いかもしれない。
彼のにこやかな表情を見ているとそうとしか思えなかった。
「あの……」
「寒いのか?ここは日が射さないからな。俺の傍においで。暖かいぞ」
そう言って両手を拡げる長に対して、
「違います」
と、即否定すると、長はがっかりした表情で両手を下ろした。
何なのだろうか?
先程から妙にスキンシップをしたがる。
しかも一人称までフレンドリーになっていらっしゃる。
ここまで来ると逆に怖いが、その気持ちを表面には出さない。
見た目は少女でも中身は大学4年生。22歳の大人なのだ。
寧ろ気に入られているのなら利用しよう。
「あのですね、龍神様がいらっしゃる迄、この洞窟の壁を見たいのですが可能でしょうか?」
「好きにするといい」
やった!成功!
壁の何が面白いのだろうかといった口調だったが、その表情はデレている。
兄さんにしか通じなかった作戦だったけれど、思った通り長は兄さんと同カテゴリーだ。
あたしはほくそ笑みながらお宝の山を眺めた。
そう、知らない人から見れば単なる岩壁だが、『マグマ』という名のお宝なのだ。
マグマの性質や固まり方によって様々な種類の石が出来る。
そしてこの壁は花崗岩が多くみられた。
花崗岩は御影石とも言われている。そう墓石に使われているアレだ。
別に墓石に拘っているわけではない。
花崗岩があるという事は石英もあるかもしれない。
石英があれば色んなものが作れる!
これを興奮しないで何で興奮すればいいんだ‼
あたしは夢中で壁中を見て回った。
「お、流紋岩もある」
もしかしたら黒曜石も採れるかも!
黒曜石があれば武器が作れる!
縄文時代は黒曜石で矢尻やナイフを作っていたのだから金属定規やシャーペンなんかより頼もしい武器となる。
ああ、夢が膨らむわぁ♪
火山最高!岩山最高!
そうしていると、長に後ろから肩を叩かれたが「もう少し待って欲しい」と訴えながら壁の虜になっていた。
それなのに相変わらず肩を叩いてくる。
流石にムカついたので文句の1つでも言ってやろうと振り向いた瞬間、
「キャーッッッ‼」
あたしは悲鳴を上げた。
恐らく生まれて初めてだろう。
喉が切れるくらいの大音量の悲鳴を上げた。
驚きすぎて倒れそうになったあたしを長が支えてくれた。
「龍神様。子供を驚かしてどうなさるつもりですか?」
「我のせいなのか?」
「あのように近付いたら驚くに決まっているではないですか」
「ウヌ。スマヌ」
ん?なんだろう?この和やかムードは?
見上げると、目の前には30mはありそうな龍がそこにいた。
日○昔話のオープニングに出てくるようなものではなく、ティラノサウルスに青い魚の鱗を付けて大きな羽を生やしたといった方がいいかもしれない。
肉食獣の証明であるギザギザの鋭い歯が恐ろしいけれど、己の頭を器用に前足でポリポリ掻いている姿は愛嬌に溢れていた。
「ところでジェイドよ。いい加減に彼女を解放してはどうだ?」
「このままでもいいではないですか」
龍の言いたい事はすぐに理解できた。
何故ならあたしを離してたまるかとばかりに胡座をかいて座り、あたしの両腰を抱えるように抱き締めているのだ。
「……言っておくが、その娘は小さくても既に14歳。後4年で成人するのだぞ。失礼ではないか」
「え!?何ですと!?」
長は驚いたようにあたしを見ていたけれど、すぐに問題ないと頷いた。
「大丈夫です。喩え14歳でもまだ成人していないですし、こんなに小さいんですよ。子供です!」
ああ、そうか。自分の身長を気にしてはいなかったけど、あたしは高校に入ってから身長が伸びた。
つまり、今は130cm位しかないはずだ。
だから、長はあたしを子供だと認識したわけだ。
「そなたの子供好きは最早異常じゃ。
娘よ。その者は飾りと思うて話を進めるとしよう。このままでは埒があかぬ故」
「はい。宜しくお願いします」
なんとも緊張感の存在しない会合が始まった。
トラブルがあったため更新できず、すみませんでした。




