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第57話:なんか変なのが付いてくるのだが

 


 無事に草原を抜けると、今度は親しみのある景色が続いた。

 そう、岩場だ。

 青龍の集落で慣れ親しんだ岩だらけの景色。

 違う点といったら整備された街道があるくらいで、街道から少しでも外れると歩きにくい岩がひしめき合っている。

 この街道は外交の為に大和国の人々が整備したそうだ。

 そんな街道をひたすら馬車に揺られている。

 幸い、あれ以降魔物の出現はなく、フリューゲルさんは魔力回復の為に眠り続けている。

 ナーデルさんはフリューゲルさんを膝枕しながら馭者席のイレイザさんと雑談し、カッツェ兄さんは剣の手入れをしていた。

 そして、あたしはというと、現在少し困った事になっている。

 あたしの頭の上にケセランパサランが乗っかっているからだ。

 ケセランパサランとは白くて丸いタンポポの綿毛のような生物で、この子は掌サイズの大きさをしている。

 草原を抜ける直前にフワフワとやって来て、あたしの頭に飛び乗ってきたのだ。

 それ以降、常にあたしの頭から離れようとはせず、かといって何か悪さをする気配もないので、そのままにしている。

 この子は魔力値が高くないと見れないみたいで、カッツェ兄さんには見えているようだけど、フリューゲルさんには微かに見えるのみで、ナーデルさん、イレイザさんとタクトさんには見えていないらしい。


 昔、誰かに『ケセランパサラン』は幸運を呼んでくれると教えて貰った気がするので、多分悪いものではないだろう。

 だけど、カッツェ兄さんもフリューゲルさん達もケセランパサランという生き物は知らないらしい。


 うーん。誰に教わったんだろ?


 充分気になる所なんだけど、幸運を運んでくれるなら無下には出来ない。

 結果、本人の好きにさせているわけだけど、こいつ喋るんです。

 正確にはあたしの心の中に入り込んで話しかけるんです。

 だから、あたし達の会話は誰にも聞こえていない。


『何であたしに付いてくるの?』


『それは君の魔力値があまりにも高いから興味があってね』


『だけど、あたしエサ持ってないよ』


 ケセランパサランって確か白粉をエサにしてるんだよね?


『君の魔力をほんの少し貰っているから大丈夫』


 え?そんな感じ全然しないけどな。てか、白粉じゃなくて魔力がエサなの?この世界のケセランパサランって。


 そんな事を考えた瞬間、違和感に首を傾げた。

 この世界って何?どの世界と比べてるの?


 すると、ケセランパサランは口はないけど切れ長の目を細めて笑った。


『見事だね。表層意識に本当の君は完全に存在しない。まぁ、今はまだいいや。そのうち色々分かってくるからさ』


 なんかスッゴク意味あり気なんだけど……


『それより、そろそろ始めよっか』


なんか、唐突にそんな事を言ってきた。


『始めるって何を?』


『聖耐性を身に付けるんだよ』


『身に付けるってどうやって?』


 そう聞くと、ケセランパサランは何かを企むかのように目を細めた。


『勿論こうやってさ』


 その瞬間雷のような衝撃派が全身を襲った。


「うっ!あっ!」


 全身を叩きつけられるような痛みに声を漏らすと、カッツェ兄さんが心配そうにあたしの顔を覗き込んだ。


「ミレイ、どうしたんだ?」


 そのただならない様子に、話に花を咲かせていたイレイザさんとナーデルさんもあたしに注目した。


「どっか痛むのかい?」


「凄い脂汗だよ」


「だ、大丈夫。こうしている時間が勿体ないから魔法の鍛練をしているだけ」


 て、こら!ケセランパサラン!

 あたしの口を勝手に使うな!

 あたしに話す余裕がないのをいい事に、ケセランパサランがあたしの口を操ってそんな台詞を吐いてきた。


「ほら、あたしって魔法耐性あんまりないから」


「もしかして、自分の体内を攻撃しているとかしてる?」


 ナーデルさんの問いに、ケセランパサランは頷いた。


「時間、ないから」


 荒療治過ぎるとイレイザさんが慌て鍛練を辞めるように言ってきたけれど、カッツェ兄さんが嬉しそう口を開いた。


「自分から率先的に修行をするなんて偉いぞ、ミレイ。龍人族たる者そうでなくてはな。

 だが、魔力値には気を付けろ。それさえ注意するならその修行は実りになる。荒療治でも効果は絶大だからな」


「って、止めないのかよ⁉」


 信じられないと目を見開くイレイザさんにカッツェ兄さんは不思議そうに首を傾げた。


「何故だ?弱点は少しでも克服するべきだろう?」


 ……そうだ。カッツェ兄さんはそういう人だった。

 スパルタ教育を何より愛するドSだった。


「マジか……?龍人族怖ぇ……」


「私、龍人族じゃなくて良かったよ」


「だよな……」


「ミレイちゃん。何か色々と色眼鏡で見てごめんね」


 イレイザさん達は憐れむような視線でそう詫びたけど、あたしはそれどころじゃない。

 こんな雑談の最中にもケセランパサランは容赦なくあたしに衝撃波を喰らわせ続けているのだ。


 誰だ?ケセランパサランは幸運を運んでくるとかほざいた奴。

 てか、最初に言っていた『魔力が高いから興味を持った』ってヤツ嘘でしょう⁉初めからそれが目的だったんでしょ?


『へぇ。余裕だね。ならば、考えられないようにしてあげるよ』


 痛い!痛い、痛い痛い痛い‼

 なんでそこで出力上げるのよ!

 あたしは残った理性で馬車の中を七転八倒しないでいたけれど、このまま放っておいたら身体がバラバラになりそうで、必死に自分の身体を抱え込んでいた。


 すると、天の声が響き渡った。


『聖耐性Lv.1を獲得しました。そんなわけでそのまま攻撃をホーリーレインに切り替えます』


 いや、待て!ちょっと待て!天の声さん、あなたはまさかケセランパサランなのか⁉

 あたしの質問に答える事なく、ケセランパサランは雨のような光の矢をあたしに放った。


「グ、アアッッッッッ‼」


 自分が出したとも思えないような声が出る。

 光の矢はあたしの身体中を貫いていく。


『聖耐性がLv.2に上がりました。出力を上げます』


 止めてくれ!!!!死ぬ!本当に死んじゃう‼


 あたしが懇願してもケセランパサランは止める気配がなく、あたしが解放されたのは聖耐性が5にレベルアップした時だった。




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