第51話:他人種で構成されたパーティ
翌日、あたし達は馬車乗り場に向かった。
そこにはギルド長と4人組の冒険者の姿があった。
「今回の依頼はAランクの仕事為、念の為に違うパーティーにも協力を仰ぎました。
彼等もBランクではありますが、Aランク昇級間近のメンツにて頼りになる事でしょう」
ギルド長が自信満々に紹介してくれたパーティの名前はシュヴァイゲンといい、獣人族の女剣闘士であるイレイザさんを筆頭に、人間で弓士のナーデルさん、リザードマンのタクトさん、そして、魔族のフリューゲルさんという異色パーティだ。
下手をしたら死ぬかもしれない依頼だけに、あたしは同行を断ろうと思っていたのだけど、カッツェさんが喜んで受け入れた為、同じ馬車で行動する事になった。
そして今、あたし達は大和国へ向かう馬車に揺られている。
馬車の中にはあたしとカッツェさん、フリューゲルさんとナーデルさんが座り、イレイザさんとタクトさんは馭者をしている。
なんでも獣人は嗅覚と聴覚に優れているしリザードマンも索敵能力に優れているそうで、見張りとして馬車の外にいた方がいいという事らしい。
「あんた達クエストは初めてなんだろ?」
犬の耳に犬の尻尾を持つイレイザが馬を操りながらそう聞いてきた。
「はい。実はそうなんです」
「最初のクエストがこれなんて、災難だな。でも、好機でもある。このクエストを達成すりゃあAランクに昇級できるし、報酬もいい。あたい等は実力なら既にAクラスというお墨付きを貰っているから大船に乗った気持ちでいてくれよ」
Aランクの実力があるのに何でBランクにいるんだろう?
パッと見じゃ判らないけど、問題がある人達なんだろうか?
そんな風に考えていると、タクトさんの声が響いてきた。
「俺のせいでスマン」
「この話になるとすぐ落ち込むよね。タクトってさ。私達は気にしていないと言っているのに馬鹿だなぁ」
ナーデルさんがそうタクトさんを励まして(?)いるその横で、フリューゲルさんが説明してくれた。
「実は僕達のようなパーティって実はかなり珍しいんだよ。何故なら誰一人として種族が被らないからね。
種族が違ってもお互いを尊敬し合える気を許す事が出来る仲間になれるんだというのを体現する為に僕達はパーティを組んだんだ。有名になれば僕達を見た人々が差別しなくなる。それを信じて行動している。
だけど、中々上手くいかなくてね……僕は人間の外見だけど魔族だから差別を受けるし、未だに奴隷として蔑まれているイレイザだって元々は奴隷として売られて剣闘士としてコロッセオで戦っていたし、タクトはリザードマンだからね……」
「リザードマンだと何か拙いんですか?」
「リザードマンはその外見から魔物と誤解を受ける事が多い」
カッツェさんがそう言うと、フリューゲルさんはその通りと頷いた。
「二足歩行のオオトカゲとしか認識されていないのが実情だ。
知識と魔力を有し、深い愛情を持ち合わせた種族だという事を理解されなくてね、結果いくらクエストをこなしても上から認めてもらえないんだよ」
「でも、このクエスト達成すりゃあ、周りはもうグダグダ言ってこねぇって。だから頑張ろうぜ。あたい等の夢が実現するんだからさ」
「だよね。ま、そんなわけだからさ、大船に乗ったつもりでいてよ。あ、ルーキーちゃん達の出番がなかったらごめんね」
軽い口調でそんな事を言うナーデルさんの頭をフリューゲルさんは小突いた。
「ダメだよ、ナーデル。今回はCランクとはいえ複数のパーティが一瞬で全滅させた奴が敵なんだから気を引き締めないと。
それに判定石通りならかなりこの二人は頼りになる。みんなで共闘しなくては」
「そうだな。この二人が戦力に加われば、戦いのバリエーションが増える」
タクトさんがそう頷くと、フリューゲルさんもその通りと頷く。
「龍人族であるカッツェさん、また龍人族の一員として教育を受けてきたミレイさんは『フライ』という貴重な魔法を使う事が出来る。つまり、上空からの攻撃が新たに作戦として加える事が出来る。いや、地上戦としても彼らがいるだけ方法を何通りにも変える事が出来る。カッツェさんを前衛にしてもいいし、後衛で魔法を駆使するのもいい。ミレイさんの円月輪は中距離攻撃という今まで我々になかった攻撃を展開出来る。更に『ヒール』は『キュア』に比べれば傷の治りは遅いけれど、大量出血で死にそうにならずにすむから後衛で治療に専念して貰う事も可能だ」
「そっかぁ。確かに今まで薬しかなかったもんね。
ミレイちゃん調子に乗ってごめんね。
本音言うとさ、その武器といい防具といい相当値が張りそうなもん身に着けているでしょ?正直不安なんだよね。裕福な家庭で我儘に育てられて興味本位で参加しているんじゃないかってさ」
ナーデルさんの言葉に一瞬周囲が静まり返った。
フリューゲルさんはすまなそうな表情をしていながらも視線はあたしがどんな言葉を言うのか待っているし、馭者の二人も耳を欹てている。
なるほど。武力が高いという事以外龍人族については耳に入ってこなかったらしい。龍人族の文化や生活水準が判らないなら当然かもしれないけれど、小さな子供を高価な武具で飾り立てるのだから裕福に違いない。そしてそこで育ったあたしは甘やかされて育てられたに違いないと判断するのは無理のない事なのかもしれない。
それなのに上級魔法を使うアンバランスさ……妖しさ満開だよね……
ここはやっぱりカッツェさんに答えて貰うのが一番でしょう!
そう思い、カッツェさんに視線でお願いすると、彼はまた新たな設定を作り出してくれた。
「そういう事ならこの子について説明させて貰おう。
この子は凶、いや、極悪と言ってもいいくらいの目付きをしている。そのせいだろうか海に捨てられて龍神国の岩場に流れ着いたのをうちの父が見付けて保護した。
この凶悪な目付きのせいで、最初は父以外は彼女を受け入れようとはしなかった。だが、彼女は龍人族に認めて貰おうと様々な修行に耐えてきて、それを見ていた者達が彼女を認めて可愛がるようになった。
国を出て冒険者になったのは、自分の本当の肉親を捜すためだ。だが、いくら強くなったとはいえ、人間である以上龍人族よりか弱い。だから一族のみんなが少しでも身を守れるようにと家宝を与えたり貴重な石で防具を作って与えた結果このような歩く金塊のような姿となった。
だから決して甘やかして育ててはいないし、我が一族が裕福というわけでもない」
カッツェさんはそう言い切り、周囲の反応を伺った。




