第46話:やっぱり変ですよね
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「あの、冒険者登録をしたいのですが」
そう声を掛けると、カウンターのお姉さんは訝しげにあたし達を見た。
「申し訳御座いません。ギルドに登録する為には13歳以上でなければならない決まりでして」
ですよね?やっぱりそうきますよね?
人間に扮したカッツェさんは片眼鏡がよく似合う育ちの良さそうな学者風だし、パーティの相方であるあたしは10歳にもなっていないんじゃないかと思われる容姿。
しかも、やたら豪華そうな装備を身に付けているあたし。
これはどう見ても何処かの金持ち娘が我儘を言って、召使いか家庭教師を連れて来たようにしか見えない。
「こう見えても14歳です。ちゃんと紹介状も持って来たので受付をお願いしたいのですが」
ゴーグル越しとはいえ、多少はあたしの目が見えているハズだから凶悪さが滲み出ないように口調を注意しながら紹介状を提出すると、お姉さんは疑いながらそれを受け取り面倒臭そうに紹介状の裏側を見た。
「え?こ、この封蝋印はグリック商会代表の!?」
「はい。ユーリ・グリックさんから頂いたのですが」
あたしがそう答えると、お姉さんは驚愕した表情で席から立ちあがった。
「しょ、少々お待ち下さい!」
動揺を隠しもせずにそう叫ぶように言うと、お姉さんはそのまま奥の部屋へと飛んで行った。
そして、暫くして如何にも上司といった風情の男の人がやってきた。
「初めまして。ギルド長のゲオルグ・アッシェと申します」
「初めまして。私はカッツェ・ブラウドラッヘ、そして彼女はミレイ・サトーと申します」
カッツェさんブラウドラッヘっていうフファミリーネームだったのか初めて知ったよ。
「紹介状を読ませて頂きました。なんでもブラウドラッヘさんは剣術に秀でていらっしゃり、サトー様はまだお若いのに上級魔法がお使いになられるとか」
「秀でるという程では御座いませんが、それなりに扱えます。彼女はまだ幼いものの四大元素のスキルを得ておりますので、後は魔法を覚えれば様々な上級魔法を使えるようになる事でしょう」
既に使えるけどねとは言わない。
これは、カッツェさんから使える魔法を意識調節しろというサインだ。
窓口で会話をしている為、周囲に話が筒抜けになっている。よって、あまり悪目立ちするステータスになるわけにはいかない。
「成程。では、早速ですがランク分けをしなくてはなりませんので、判定石に触れて頂いても宜しいでしょうか?」
どうやらギルド長の丁寧な話し方が本来の話し方とは違うらしくて、益々ギャラリーが増えて来た。
しかも、彼らの口から上る会話を盗み聞きしていると、あたし達はいつの間にか何処かの金持ち扱いになっている。
まいったなぁと思っていると、カッツェさんが早速判定石に触れた。
名前:カッツェ・ブラウドラッヘ
年齢:19歳
種族:龍人
職業:なし
Level:60
H P:10,000
M P:2,500
スキル:『剣術Lv.9』『風魔法Lv.9』『土魔法Lv.8』『火魔法Lv.3』『水魔法Lv.4』
魔法:『ファイアーボール』『ウォーターボール』『アースウォール』『ウィンドカッター』『トルネード』『フライ』
判定石から浮き出る文字列。それはカッツェさんのステータスだった。
それを見た周囲からどよめきが起きた。
「スゲェ!トルネードだと!?」
「上級魔法じゃねぇか!」
「その若さで剣術レベルありえねぇだろ!?」
「魔力値高っ!体力も半端ねぇ。流石龍人族」
なんて声が聞こえてくるけど、一部だよ。ステータスの一部。
て、2,500で魔力値高いの!?体力だって高くないでしょ?
どうしよう。自信なくなってきた。
「流石判定石は騙せないですね。龍人だという事は隠しておきたかったのですが」
「成程。それで龍人の特徴を隠しておいでだったのですね。ですが、判定石の前では偽れませんよ」
誇らしげにギルド長語っていますけど、騙されてますよ。判定石さん。
カッツェさんの事だから判定石の実力を試したくてエラ耳消して人間っぽくしたんだろうなぁ。
龍人族の文系男子としては試さずにいられなかったんだと思うけど……
「さて、次はサトー様になりますね。こちらにどうぞ」
設定大丈夫だろうか。やり過ぎではないとは思うけど緊張する。
あたしはそっと石に触れてみた。
名前:ミレイ・サトー
年齢:14歳
種族:人間
職業:なし
Level:41
H P:4,500
M P:5,000
スキル:『龍人語Lv.10』『円月輪操術Lv.5』『剣術Lv.3』『風魔法Lv.5』『土魔法Lv.5』『水魔法Lv.7』『火魔法Lv.7』
魔法:『ファイアーボール』『ファイアーストーム』『ウォーターボール』『アイス』『アースランス』『ウィンドカッター』『ヒール』『フライ』
「おいおい、判定石壊れてんじゃねぇのか!?」
そんな声と共に、周囲からカッツェさんの時以上のどよめきが起こった。
ギルド長も目を見開いてあたしを見ている。
「なんという魔力量!伝え聞く賢者様の幼少の頃と変わらぬ値とは……!それだけでなく武芸まで身につけているとは尋常ではない!」
「彼女は人間ではありますが、龍人の里で育った龍人族の一員。武芸が出来なくては龍人族とは認められませんので」
どうやら周囲の反応をみていくつか設定を考えていたらしい。
澱みなくスラスラ出てくる設定にあたしは心の中で苦笑した。
「いや、しかし、まさかその幼さで『ファイアーストーム』まで身に付けているとは驚きました。グリックさんの推薦も納得です。では、ランクですが、上級魔法が使えるだけでAランクになれるのですが、何分実績がないのでBランクとします。早速依頼を受けますか?」
「いえ、一先ずは止めておきます」
「そうですか。では、Bランク以上の冒険者が少ない為、依頼は数多く残っておりますのでいつでもお越しください。
それから、依頼を受けていない状態でも魔物を討伐された時には魔物が落とすアイテムをギルドに届けて頂ければそれに見合った報酬を渡しますので是非ご利用ください」
カッツェさんの返答にがっかりしながらも引き下がる事無くギルド長はそう告げた。




