第47話:酒場で待っていた人物
ギルド登録が終わり、あたしは早速カッツェさんにお願いをした。
「折角だから冒険者達が集まる食堂に行きたいのだけどいいかな?」
「構わない。兄上を捜す手懸かりが欲しいのだろう?」
何で判ったの!?
あたしがビックリしていると、カッツェさんが理由を正直に打ち明けてくれた。
「実は青龍様に言われて既にそこの酒場で待ち合わせしているんだ」
待ち合わせ?なんの事だろう?
全く意味が解っていないあたしに、カッツェさんが苦笑しながら答えた。
「赤龍の民を救う事を条件に元勇者の冒険者に会わせると約束しただろう?」
「い、いや、ちょっと待って。確かに約束したけど、あたしまだ赤龍の民救っていないよ?」
まだまだ開拓は終わっていない。だから、その約束が実行されるのはまだまだ先だと思っていたあたしは動揺しながら何故今なのかを聞いた。
「いや、もう充分救っていると傍にいる私は思ってる。何故なら、赤龍の地はまだまだこれからだが、赤龍の民達は目的意識を持って働くようになった。以前の彼等からはとても考えられない事だ。
ミレイは民達の心を既に救っているのだ。ならば、今約束を果たすべきだというのが私を含め、青龍様のお考えだ」
「で、でも、今その約束を果たしちゃったらあたしを龍神の国に留め置く理由がなくなっちゃうよ?」
そう言うと、カッツェさんが照れる事なく凄い台詞を吐いてきた。
「そんなもので縛らなくても貴女は途中で投げ出す事はない筈だ。
そんな事をすれば、あの地の人々は再び苦しむ事になる。情が芽生えている貴女なら人々が苦しむと判っていて投げ出す事はない。
それに、私は貴女にとって、とても大切な存在になっていると自惚れていますから」
善意に漬け込む台詞だけど、あたしにはその言葉があたしを本当に信頼してくれているから出てきているのだと理解出来た。
最後は、照れ臭いのか敬語入っているのもまた、本心を言ってくれているのが伝わってあたしは嬉しいやら気恥ずかしいやらなんとも言えない感覚に襲われた。
「じ、じゃあ、早速行こっか?」
「そ、そうです、ね。待たせても悪いし、な」
お互いぎこちなくなりながら待ち合わせの酒場へ向かった。
☆
店の中はいろんな人種でごった返していた。獣耳の付いた人や蜥蜴のような人(リザードマンというらしい)までいて如何にもRPGの世界っぽい。
だけど、あたし達が店内に入ると、今までの喧騒が嘘のように静まり却って、その視線はあたし達を値踏みしている。
「彼女だよ。子供の見た目のクセに膨大な魔力を持ってるルーキー」
「人族なのに龍人族の一員なんだろ?」
「ああ、隣の眼鏡がそう言っていたぜ?」
「マジか!?あの龍人族に認められてるって事は武力もあるってこったろ?」
「剣術Lv.3に円月輪操術Lv.5って判定石は解析してたよ」
「円月って……あの腰に着いてるやたら高そうなヤツか?あれ、武器なのかよ?」
もしもし皆さん聞こえていますよ。
ステータスもかなり誤魔化したのになんでそんなに注目するのよ。
これ、真実知ったらどうなるんだろう?
更にこのゴーグル外したらとんでもない事になっちゃいそう。
あ、なんかちょっと想像すると楽しいかも。
「ミレイ。彼が勇者だった男だ」
妄想膨らませようとしたらカッツェさんに現実に戻されちゃった。
「あんたか?俺に用ってヤツは」
「は、はい。ミレイ・サトーと言います。貴方が勇者さんですか?」
「元な」
正直予想外だった。
何故なら彼は勇者にはとても見えなかったからだ。
疲れきったというか草臥れたっというか憔悴したような雰囲気、闇を深く抱いた精力のない瞳、顔は不摂生の証拠とばかりに目の下の隈に痩けて頬骨が浮き出ていてまるで、赤龍の人々みたいだ。
いや、未来に期待を抱けない嘗ての赤龍の民そのものだった。
何がどうしてそうなったのか?あたしは言葉を失ったまま呆然と彼を只見ていた。




