第41話:いざ大陸へ!
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引き継ぎも漸く終え、遂に大陸へ渡って魔族の地へ向かう日がやって来た。
「神子様どうじゃ?ワシの作った防具は」
「ありがとうございます。とても動きやすくて良い感じです」
「……じゃが、心許ないのう」
「い、いえ、充分です」
初め、ハインツさんは「ここに攻撃されたら怪我をする」「ここを攻撃されたら洒落にならん」と言い、まるで重騎兵のような防具をあたしに与えた。
だけど、重くて動きにくいし悪目立ちし過ぎる。
そこで、あたしは鎖帷子状のシャツを頼んだ。
すると、流石はカインツさん。細かい鎖状の本当にシャツと言ってもいいくらい身体にフィットする物を作ってきた。
だけど、せめて心臓くらいは頑丈なものにしたいと訴えられ、鎧を却下した結果ショルダータイプの胸当てを作ってきたので、渋々それも着用した。
そして、肘から手の甲を守る腕当てに膝当ても全体を覆うものは避けてもらい、簡易的なものにして貰った。
だけど……
「冠は自信作じゃ。神子様が益々神々しく見えるじゃろう?」
そう胸を張るハインツさんにあたしは苦笑した。
だってね、このサークレット。眉間からこめかみを守るようにガッチリ覆っている。しかも、龍人族のようなエラ耳のような飾りが後頭部にかけて延びている。
女性らしさを追求したとワケのわからない事を言って見せられたそれは、蔦のような透かし彫りが入っているから女性らしくはあるんだけど、眉間には500円玉より少し大きい黒い石が入っていた。
それが、光の加減で所々虹色に光る。
例えるならブラックオパールだろうか。そんな不思議な輝きだ。
「その石は神子様が腰に着けておるアダマンティン製の円月輪よりも硬いヘキサアダマントじゃ。神子様の黒髪にもよう映えるし、万が一眉間を武器で斬りつけられるような自体となっても武器の方が壊れる。
きっと神子様を護って下さるじゃろう」
「なんと、アダマンティンより丈夫なのか!?」
傍で聞いていたハイドさんが叫ぶようにそう言うと、額に輝くそれを食い入るように見入る。
「故に加工が困難でのう、強度の高い鎚で削ったがこれが精一杯じゃった」
自分が思い通りに加工出来ない鉱石の存在が気に食わないのか、悔しそうにそう言うのを聞きながらあたしは一つの疑問に首を傾げていた。
アダマンティンとか、ヘキサアダマントって何?
聞いた事のない名詞。だけど、身に付けている以上は必ずメニューの装備一覧にあるハズだ。
そう思って一覧を開いてみたところ、とんでもない事実を発見してしまった。
『アダマンティンの円月輪
アーティファクトの一つ。神からの祝福を受けたアダマント鉱石からなる武器。アダマンタイトとして最強の硬度と広く知られ、現代の技術では生成不可』
『ヘキサアダマントのサークレット
アダマント鉱石よりも上の硬度を持つこの世界で最強の硬度を持つ石を填めた冠』
な、な、な、何ですと!?アダマンタイトですって!?
それってあのRPG定番の貴重な鉱石だよね?
しかも、アーティファクトって……トールさんが龍神が譲り受けたものだと言っていたけど、龍神は誰から貰ったのよ!?
いや、それにヘキサアダマント‼
世界最強の硬度ってどう言う事よ!!
アダマントの進化系って事!?
とんでもない物がこんな序盤から出てきた(恐らくRPGの世界で言う旅立ちの村だよね?今いるのは)事に軽いパニックに陥っていると、隣でカッツェさんがあたしにだけ聞こえる声で説明してくれた。
「安心して欲しい。その円月輪は一般的なアダマンティンより硬い。何しろ創生の神が長年使用していたそうなので。つまり、創生の神の魔力をかなり含んでいる筈。よって、ヘキサアダマントの硬さはその次となる」
うん。更に突っ込みどころ満載の言葉をありがとう。
まず、『安心して欲しい』がどこにかかっているか不明。だって、安心するような不安をあたしは別に抱いていなかったもん。
そして、チャクラム(円月輪が正式な名前だったんだね、とか思った事は置いておいて)が創生の神の武器だったという事も知らないし、魔力とか言っていたけどアダマンティンって祝福を受けたアダマント鉱石だと説明にあったのに魔力で強度が変わるの?祝福によってじゃなくて?とか思ったわけで、だけど、突っ込みを入れたらキリがない。
もう、「そういうものだ」と割り切るしかない。
「グリックさん、すみませんが開拓の方はよろしくお願いします」
「こちらの方はお任せください」
頼もしい笑みと浮かべながらそう請け負うグリックさんに頷くと、彼は徐に蝋で封をしてある手紙中央に玉虫色の百合の絵が入った木の札をあたしに渡した。
「この手紙が先日お約束した推薦状になります。それからこの札は神子様がグリック家の身内だと証明するものになります。これをグリック商会の者に見せれば、全力で協力致します。
少なくても寝る場所には困らなくなりますので、持って行って損はないでしょう」
つまり、ただで泊めてくれるらしい。
お金を持っていなかっただけに、あたしはそれをありがたく受け取った。
そして、あたしとカッツェさんはグリックさんが用意してくれた船に乗り込んでまだ見ぬ大陸へと出港した。




