第39話:それぞれの種族の寿命
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「さて、君は龍人族の寿命がどのくらいか知っているかい?」
そう話を切り出されてあたしは首を振った。
「人間の寿命は80年位だけど、龍人族は大体200年位生きる。それは何故か判るかい?」
「龍神の血が混じっているからですか?」
そう答えると、トールさんは頷いた。
「半分正解だ。例えば、魔族は500年位生きる者がいるというのに、魔族と魔物の中間であるゴブリンは、10年も生きられない。まぁ、知恵があればもう少し生きるけどホブゴブリンに進化しなければ30年位だ。
妖精族であるエルフは700年も生きる事が出来る。
何故か判るかい?」
そう問われて、あたしは首を再び振った。
「魔力の高さに比例するんだよ。魔力が低ければ寿命は短く、魔力が高ければ寿命が延びる。
最初の龍人族は龍神様の血を濃く受け継いでいる。だから魔力が高くてね、あの当時の平均寿命は400年位あったんだよ。だけど、時の経過と共に龍神様の血が薄くなり、そうなると魔力も減っていったから寿命が短くなったというわけさ。
そして、先程話に上がったエルフは平均が700年なだけで、中には寿命が存在しない者もいる。だから、エルフは子供が出来にくいとも言われているんだけどね」
寿命が存在しないって事は永遠に生きられるって事!?
「さて、ここで問題だ。
寿命は魔力の高さに比例するワケだから当然神子の資格を剥奪されて龍人族の寿命となった私だが、その間本来の寿命を消費していないから恐らく400年は生きると思う。カッツェ君も龍人族の中では抜きに出た魔力を所持しているから私と同じくらいは生きるだろう。
だけど、ミレイさんはそんな私達より魔力が高い。意味は判るかい?」
その口調にあたしは漸くトールさんの言いたい事が理解出来た。
魔力の酷使によって、あたしの魔力量が尋常じゃないくらい上がっている。
つまり、あたしは下手をしたらエルフ並みの寿命を得ている可能性があるという事だ。
それはつまり、トールさんが嘗て味わった苦しみをあたしも味わう事になると言われているわけだ。
ボッチ人生を歩んでいたあたしは一人は別に怖くはない。
だけどそれは、死別の孤独とは違う。
母さんや父さんに会えなくてもこの世界には兄さんがいる。
だから、あたしは立っていられる。
もし、この世に兄さんがいないとしたら本当の意味で一人になってしまう。
そして、カッツェさん、ジェイドさんを含めて仲良くしてくれた人々との永遠の別れ。
それを想像してあたしは急に怖くなった。
みんなに置いていかれて、本当の意味のボッチになる。
それは未知の恐怖だった。
「解ったみたいだね。まあ、私も4千年生きたからその恐怖の体験者だ。子供や孫の死を看取ってからは別れが辛くてね、一人で暮らす事になったからその気持ちは解る。
だから、せめて私くらいは君の近くにあろうと思ってね」
トールさんは親しい者との死別が辛いと言っていた。
それなのにあたしと親しくなろうなんておかしい。
だって、それって遠い将来同じ苦しみを味わう事になる。
「あ、今、私を残酷な奴だと思ったね?」
何故判る!?
「大丈夫。君を一人にはしないよ。
ミレイさん、いや、神子様。私を貴女の眷属にしてくれないか?」
「眷属?」
「家族的な扱いでも友人的な扱いでもいいし、勿論下僕でも構わないよ。
この龍神国を君の帰る家としていつでも君を迎える。
悠久の時を過ごす君がいつでも気楽に帰れるように私を眷属にして君と同じ時間を過ごさせて欲しい」
「い、いや、だけど、折角……」
龍神の神子としての鎖から解かれて、普通の龍人族になったのになんでまた鎖に捕らわれるような事を言うの?
「私は取り残される意味を知っている。だから、この役目を他の者にやらせるわけにはいかない。
そして、君を私と同じ苦しみを与える事なんてもっと出来ない。
幸い私は悠久の時の過ごし方を知っているから適任だと思わないかい?」
そんなこと言われて、「そうですね」なんて答えられるわけがない。
どうやって説得しようかと考えていると、いきなりドアが開いて、カッツェさんが機嫌悪そうに入ってきた。
「神子がいつまで経っても戻ってこないから心配して来てみれば、ずいぶん楽しそうな会話をされていますね?」
って、カッツェさん!?
楽しそうって何処がですか!?




