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第25話:会議の本当の目的【2】



「私の集落も作物が採れるのには限度がある。それでもやれるだけはやって来たのだ!咎められる謂れはない!」


あたしの視線に怯みはしたものの訴えるべき事は訴えるアイスさんにあたしは更に睨みつけた。


「やってませんよ。作物を作る技術を緑龍の民に教えれば緑龍の地でも作物を作れるようになる。緑龍の地の質は良かった。技術さえあれば、沢山の実りを得ることが出来る」


「農耕は一族伝来の物だ。おいそれと他部族に教えるわけがない!」


「同胞と言っておきながら都合が悪いと他人扱いですか?龍人族とは都合の良い生き物なんですね?」


「貴様!誇り高き龍人族を愚弄するのか!?」


アイスさんが怒りを露にして手にしていた槍を構えたけれど、あたしは動じずに続けた。


「では、あたしが何故都合がいいと判断したか説明させて頂きます。今、貴方は龍人族と言われました。それはこの島に住む全ての龍人族を指している。そうですよね?」


「何を分かりきった事を……っ!」

「あ、話を続けられないのでその先は結構です。

アイスさんは、龍人族を同胞、つまり肉親も同然だと考えている。それなのにその肉親に自分が持っている知識を教えず、それによって苦しんでも自分は安泰だから憐れとしか思わず、寧ろ『恵んであげている』と、上から目線で他の龍人族を見ている。

完全に同胞と言いながら他人扱いです。

それなのに、自分が攻撃されれば同胞を強調させて訴える。これを都合いがいいと言わずしてなんだと言うのでしょう?」

「こっちは民が殺されているんだ!次元が違う!」


憤るアイスさんに、あたしは意地の悪そうな笑みを浮かべた答えた。


「下に見ているは否定しないわけですね?」

「っ!話を摩り替えるな!今はそんな話をしているのではない!人殺しの部族を救おうというのが間違っていると言っているのだ!」


アイスさんの憤りがピークに達した所で、トールさんが惚けたような口調で口を開いた。


「なるほど……確かに同じ事かぁ」


「お前まで何を言っている!?」


「いや、小さく考えれば同じ事だなぁって思ったわけだよ。

例えば、兄弟がおもちゃを奪い合うのを見ていた親は子供に仲良く使いなさいと怒るけれど、他の家の子供が自分の子供のおもちゃを奪うと相手の親にちゃんと教育しろと怒るだろ?

でも、その時怒った方は自分の子供の物を奪った事に憤りを感じて相手の家庭がおもちゃを買える余裕のない家だという事はすっかり頭から抜けているんだよね。

自分の家の子供が見せびらかすように貧しい家の子の前でそのおもちゃで遊んでいた事は全く気にしない。奪われたくないなら家の中で遊べば良かったんだよ。そうすれば、そんな事にはならなかったんだからさ。

それと同じような事をアイスはしているんだよ。

空腹に苦しむ者の気持ちを無視してこれ見よがしに食料貯蔵庫を作ったりして余裕がある事を見せびらかしているんだからね。

奪うようになるまで、相手を見捨てておいて奪われたから排除するっていうのはおかしいなぁって思っただけ」


これを聞いて、あたしはトールさんが何を考えているのか理解する事が出来た。

目的はあたしと同じだ。

だけど、何故トールさんがそれをしようとしているのかについては全く解らない。

だから、様子を見る事にした。

目的が同じなら、同じ場所に話が纏まるはずだから。


「そして先程神子様が仰っていた農耕技術もだよ。私は以前からアイスに教えて欲しいと頼んだけれど、君の言葉はいつも『水さえ提供してくれれば良い』としか言わず教えてはくれなかったよね?

私が、緑龍の地でも農耕が出来るようになれば今後の食料不足をなんとか出来るかもしれないと言っても取り合ってはくれなかった。

ジェイドに頼んで仲介して貰ってもそれは叶わなかった。

私はね、それが悔しかった。もし、農耕が龍神の集落でも出来ればあそこまで赤龍の民を追い込む事にはならなかったかもしれないってさ」


「確かに……」


ジェイドさんは、その時の事を思い出しているのかやるせない表情で頷いた。

旗色が悪いと感じたのか、アイスさんはセレナさんを指差した。


「セレナを見ろ!多少痩せているが、元気じゃないか。食べ物は充分ではないにしろ多少はあった証拠だろう?奪って行った奴等は我慢できない自分勝手な奴等だ。そんな奴等を助けるなんてどうかしている!

本当に食べ物がないのなら赤龍の集落の中で共食いでも何でもしていれば良かったのだ」


この台詞に、ジェイドさんがアイスさんを怒りを込めて拳で殴り付けた。

殴られたアイスさんはその勢いで地面に転がされた。

アイスさんの槍が激しい音を立てて床を鳴らしたほどの威力だ。

普通の人間だったらその一撃で命を落としているかもしれない。

そんな威力で殴ったのにも関わらず、ジェイドさんは怒りは収まらない。


「アイス!貴様、それは本気で言っているのか!?」


「おい、お前まで熱くなるな、ジェイドよ。アイスは仲間喰われて頭に来て売り言葉に買い言葉というのをやっているだけだ」


黒龍の長であるハイドさんが、ジェイドさんにそう言って落ち着くように促した。


だが、それに答えたのはジェイドさんではなくトールさんだった。







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