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第14話:生きた屍

 


 集落に到着したあたしは、その光景に身体が凍りついたように動かなくなった。


 何故なら生気というのが全く存在しないからだ。

 集落にある建物という建物が半壊以上の状態、人々は確かにいるけれど、痩せこけて動く気配がない。

 皆、虚ろな瞳であたしを見るというよりも眺めているようで、焦点は定まってはいなかった。

 昼間だというのに子供の声さえしてこない。


 暑いのに、寒気を感じる。

 すると、再び恐怖が身体を侵食してきた。

 水問題を解決出来ても、食料問題が残っている。

 あたしの知識をフル稼働させても、もしかしたら出来ないかもしれない。

 こんな時に兄さんがいてくれたらきっとなんの問題もなく解決出来るだろう。

 だけど、あたしは友達さえ作る事が出来ず机に向かっていただけの日常生活劣等生。

 そんなあたしが、いくらスキルを得たからといってもちゃんとやれる自信がない。


 どうしよう。

 逃げたくなってきた……


「神子」


 声を掛けられ顔を上げると、そこにはカッツェさんがいた。


 カッツェさんは「大丈夫だ」とあたしを励ますようにあたしの肩に手を置いて頷いた。


 そうだ。前の世界とは違う。

 あたしはもう一人じゃない。カッツェさんがいてくれる。

 大丈夫だ。カッツェさんがいてくれたら、きっとあたしは大丈夫だ。

 そう言い聞かせてカッツェさんに頷き返すと、恐怖が和らいでいって、漸く足が前へと動き始めてくれた。


 そして、集落の中央にやって来た。

 人々はあたしから距離を保ち、周囲を囲んでいる。

 魚が死んだような瞳に光る唯一の意識は食欲のみだ。


 強引にジェイドさんを置いてきて良かった。


 彼らはあたしを食料だとでもいうような表情で見ている。

 こんな雰囲気にジェイドさんなんかがいたら間違いなくキレるもんね。


「皆の者、赤龍様の命令は既に聞いた事でしょう。

 この御方は、我等のおかれた状況を不憫に思い、降臨して下さった異国の神です。

 我等の為に動いて下さるありがたい御方なのですから失礼があってはなりません。

 分かりましたね?」


 セレナさんの言葉は果たして通じているのか不安はあるけれど、一先ずあたしは挨拶を済ませて早々に、水道工事を始める事にした。

 頭に浮かんでいる方法はサイフォン式だ。

 小学校で習った原理なんだけど、解りやすく言えば、給油する時に使っている灯油のポンプ。

 ポリタンクから暖房器具のタンクへ灯油を入れる時に、ポリタンクの液面がタンクの液面より高くなるように置いて、ポンプを何回か押して管を灯油で満たされると灯油は流れ続ける。

 それがサイフォンの原理なわけなんだけど、集落に水を引くのだから一朝一夕にはいかない。


 だけど、紀元前三百年前の古代ローマ人だって、江戸時代の人だってやった事だ。

 あたしは、彼らのように手探り状態ではなく、彼らの知恵を参考に出来る立場だ。

 しかも、土魔法で導管を簡単に作れるのだから無理な仕事ではない!


 そう思っていたんだけど……

 簡単じゃないよね、うん。自分でさっき『一朝一夕にはいかない』って言ってたじゃん。


「あれ?身体に力が入らない。なんか、目の前も見えなくなって……」

「神子!」


 ”ドサリ”と、いう音と共にしっかりした腕の感触を背中に感じた。

 その腕の主がカッツェさんだと認識したと同時に、世界がマーブル状に変化していき、あたしはそのまま意識を失った。



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